私のブログでは初めてとなる中国ドラマの感想です。

 

題名は『三体(THREE-BODY)です。

 

こちらは中国の劉慈欣のSF小説が原作で、世界中で大ヒットしました。

 

Netflixでドラマ化されそのシーズン1を見終えた後、U-NEXTで中国版のドラマが配信されているのを知り今回視聴してみました。

 

中国版は、1話が40分の全30話で配信されています。

 

 

実はこの私、Netflixのドラマを見終わった後、単行本の「三体」を購入して数年ぶりに小説を読んでみました。

 

Netflixのドラマの内容が難しくて、小説だったらもっと理解が深まるだろうと思ったからです。

 

しかしこの小説「三体」は全部で第3章まであり、私が読んだのはその第1章に当たる「地球往事」というものです。

 

この「地球往事」だけで600Pもあり、内容が宇宙や化学、物理学の複雑な用語が並ぶので、読んでいてもあまり頭に入って来ません。

 

それを見事にわかりやすく映像化してくれたのが、この中国版のドラマでした。

 

このドラマでは、私が読んだ小説「地球往事」のすべてが忠実にドラマ化されていました。

 

そもそもNetflix版は、8話しかないのにその先まで物語が進んでいたのです。

 

壮大なストーリーの大事な部分をカットして製作しているため、それで理解が追いつかない部分が多かったんですね。

 

この中国版ドラマの素晴らしさは、原作に忠実に描いいるのはもちろんのこと、その構成が見事なところです。

 

小説もNetflix版も、最初は物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人エリート女性科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)の物語から始まります。

 

しかしこのドラマでは、ナノテクノロジー素材の研究者である汪淼(ワン・ミャオ)のゴースト・カウント・ダウンからスタートするのです。

 

そして科学者が次々と自殺をしていく謎にも迫っていきます。

 

連続ドラマなので視聴率は取らないといけませんので、この展開は一気に見ている人を惹きつけるでしょうね。

 

そして汪淼がプレイすることになる三つの太陽を持つ異星を舞台にしたVRゲーム『三体』が、次々と忠実に再現されていきます。

 

この入り方をしてくれたおかげで、全体のストーリーがものすごくわかりやすくなっていました。

 

 

そしてこの小説には非常に多くの人物が登場し、そのほとんどは科学者や数学者です。

 

Netflix版はそこがすべて外国人だったので人物構成も主人公すらわかりずらかったのですが、中国ドラマでは全員の人物像を深く掘り下げてくれているので、理解がしやすくなっています。

 

その出演者の中国人俳優も、全員が魅力的でした。

 

小説では乱暴者にしか描かれていない警察官の史強(シー・チアン)を、とても人間味の深い描き方をしています。

 

史強は科学に疎いため、視聴者目線で色々と質問を投げかけてくれるので、こちらも理解がしやすいのです。

 

そして史強の部下となるシュー・ビンビンがまた良かったですね。

 

小説ではほとんど触れられなかった人物ですが、このドラマでは1人で10人分の仕事をこなすスーパーレディとして活躍していました。

 

また汪淼の7歳の一人娘、豆豆(ドゥードゥー)がとても可愛いです。

 

こちらも小説では存在くらいしか触れていませんが、ドラマでは度々登場し、汪淼の科学者でありながら1人の父親としての人物像を掘り下げてくれています。

 

そして何と言ってもこの物語の核となる葉文潔(イエ・ウェンジエ)の若き日の描き方です。

 

葉文潔が地球外生命体の調査をする「紅岸(こうがん)」が描かれるのは、10話を過ぎたくらいからです。

 

ここをドラマの中盤から非常に詳細に描いてくれるので、その背景がとてもよく理解できました。

 

「応答するな!」

 

これが宇宙からの第1メッセージだったのですが、葉文潔はこれに応答してしまいます。

 

この辺の葉文潔のこれまでの人生と、そこに至った心理描写とその演技が本当に素晴らしいです。

 

そして終盤の5話くらいで、このドラマのキーポイントとなるVRゲーム「三体」の謎がすべて明らかにされます。

 

そもそもなぜこのVRゲーム「三体」が存在しているのか?

 

Netflix版ではそこが全く伝わらなかったですが、VRゲームで表現される三体問題の意味、科学者が次々と自殺した理由、汪淼に起きたカウントダウンの謎などがすべて見事に回収されるのです。

 

「お前たちは虫けらだ!」

 

この三体文明からのメッセージでドラマは終わります。

 

「三体」小説の第2章に当たる「黒暗森林」から地球の反撃が開始されるわけですね。

 

しかし私はこのラストシーンを見て、SFドラマでありながら感動して泣いてしまいました。

 

この壮大な物語をこれほど見事に映像化していること、そしてこの物語の本質は地球の環境保護に対する提唱であるということがよく理解できたからです。

 

最後史強が、自分の故郷であるバッタが大量に飛び交う場所に科学者2人を連れてきてこう言い放ちます。

 

「虫けらはこれまで人間よりも長く生存し続けてきた。人間とバッタの差より、三体文明と地球の文明の差の方が小さいはずだ。俺たち虫けらが生き残れないはずはない。」

 

この続きは、ぜひとも中国版のドラマでまた見たいと思います。

 

とても完成度の高い、素晴らしいドラマだったと思います。

 

現在WOWOWオンデマンドやHULUでも配信されているようですので、一人でも多くの方に見ていただきたい作品です。

 

評価は満点、5.0です。