ユニバーサル・スタジオ×ドリームワークス・アニメーションが初タッグを組んだ映画『ボス・ベイビー』(トム・マクグラス監督)がいよいよ3月21日(水・祝)全国公開となる。見た目はかわいい赤ちゃんだが、中身は人使いが荒く口の悪いおっさん“ボス・ベイビー”が、パパとママ、7歳のティムの3人家族の元に弟としてやって来る。最初は反発しあっていたティムとボス・ベイビーだったが、やがて世界を揺るがす巨大な陰謀に挑むことになり…とワクワクする展開。全世界で興行収入540億円を超えるヒットを記録している。

主演の“ボス・ベイビー”の吹き替えをムロツヨシ、7歳の長男“ティム”の吹き替えを芳根京子が務めた。大作に抜擢された二人はともに吹き替え初挑戦!役作りやアフレコでのエピソード、お互いについてどう思ったのか語ってくれた。インタビューを行ったのは都内ホテル。ムロのペースに芳根ものって、息も
ぴったり!爆笑で話は進んだ。

 


 

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声のオファーに「え?」「どした、どした?」

 

――二人とも吹き替え初挑戦ですが、オファーが来たときの感想は?

 

芳根京子:聞き返しました。え?声?え?声のお仕事ですか?って。思ってもいなかったお話だったので最初はとにかくびっくりしました。いろんな初めてのことを経験させてもらえるのでうれしいなと思いました。

 

ムロツヨシ:一緒。聞き返した。『どうした?』(マネージャーから)声の仕事のオファーがありまして…『え?どうした?』。主役なんですけど…『え?どうした?』、アメリカの映画で…『何?どした、どした?』って(笑)。ぜったい何かの間違いだろうと思いました。どんな役かというと赤ちゃんの役って(笑)。『どうした?』しか出なかった(笑)。

 

――お互いが共演者とわかったときはどう思いましたか?


ムロ:何回か共演してるんで、兄ちゃんが芳根京子ちゃんと聞いて、「少年。どうなんだろう」と一瞬思ってすぐ、「あ、合うかも」って。声を覚えているので、すんなり入ったんですよね。ただ僕たちが想像している以上にアフレコという作業は難しいものでしたから、簡単なものではなかったので。それは後(のち)に知るんだけどね。その時は、合う合う合う!みたいな。あの頃は安易だったな~(笑)。

芳根:ムロさんと聞いて、すごくうれしかったです。吹き替えは初めてだったのでやり方もわからなかったし、その時は一緒にできると思ってたので、ムロさんと聞いて「やったーーー!」と…思ったらムロさんにはアフレコで会えないし、ずっと一人で(笑)。思っていたのと全然違いました!

 

 

 

■演技力に定評のある二人、初なのに感度抜群!


――役作りや準備はどのようにしたのですか?

ムロ:彼女はしっかり準備していました。台本を読み込んで、どうやってタイミングをあてるかと…


芳根:一緒にいました?(一同笑)


ムロ:取材とか完成報告会の時に言われていたので(笑)。だから作業のスピードが早く、しっかりできたんだなと。僕もやんなかったわけじゃないけど、ふぁっとやって、現場でふぁっとやる。余白がほしいんです。余白がね。余白を作るためにあまりやりこまない、という。遊びの部分をいれたかったので、ボス・ベイビーの。

 

 

――さすがポテンシャルが高い。参考にした知り合いなどはいたのですか?

 

ムロ:いやいやいや、引き出されたということですかね(笑)。中身がおっさんなんで、誰かを参考にするということはあまりなかったんですが、現場で「抑揚をもうちょっとつけてください」と言われることが多かったですね。僕がフラットにセリフを読んでお芝居をする方だったので、もっと声だけでも伝わるぐらいの方にいってもらいたいということで。アニメーションって表情も豊かだけど、声でももっと表現しないといけないのかなというのは現場で教わったところですね。

 

芳根:私は、実際には兄がいて妹の立場なんです。あんまり身近に男の子もいなくて。海外では公開されている作品なので観て“ティム”という男の子を想像していった、という方が強いかなと思います。モデルにしたというより、こういうティムだったらいいな、という自分の願望とかも入っていたりします。現場では「もうちょっとここを、いま女の子っぽかったからもう少し男の子らしさを」とかいう感じで。最初の1日は相談しながらやらせてもらい、掴んでからはすごい楽しくやらせていただきました。

 


■予想外の難関が待ち受けていた

 

――ふだんのお仕事とは違うポイントが要求されたということなのですね。吹き替えならではの苦労した点は、どういう部分でしたか?


ムロ:お芝居では自分のテンポ、自分の間で言うことが許され、個性だったりするんですけど、アフレコはしゃべる長さ、口の動きが決まっているので、その部分ですね。アニメーションの口の動きは英語に合わせていて、そこに、日本語で口の動きに合うように脚本の先生が作ってくれている。自分のテンポでやったら無理だなと。何度か怒られてますけど、ゆっくりしゃべりすぎちゃったりするんで(笑)。長さを合わせるのが今までの本業と違うのかなというところはありましたね。

芳根:唸り声がけっこう多かったんですけど、その(音の)数も決まっているので、「いま一個足りなかったです」とか言われて、そういう部分が「すごい難しい!!」と思いました。あと、自分は「ここだ!」と思ってもタイミングが違ったり。もっと早口で言わないといけないんだという部分があったり。なにより、体が動きたくなっちゃう!普段、立ち止まってお芝居をすることがなかったので、一本立ちで声だけのお芝居ってめちゃめちゃ難しいんだなと思いました。

 

ムロ:(体が動くと)合わなかったりするんですよね。お芝居だったら、動きと一緒に表現できるけど、アニメーションだと動くと声と合わなかったりニュアンスがちょっと違ったりする。(腕を動かし)ハァ~!の「ハァ~」のニュアンスをそうそう研究したことなかったな(笑)。(俳優業にも)活かせることはあるんじゃないかなと思います。

 

 

――大変だった、思い出深いシーンは?

ムロ:歌ですね。英語として聞こえるほうがいいので英語的な難しさもありますし、鼻歌まじりなのでそんなに上手くなくていいですって言われて、難しかったですね。英語の発音は自宅での練習はしなくていい、先生が付きますと言われ、そのときに教わって。

 

芳根:(そんなに上手くなくていい、に)逆に難しいですよね!私も歌です。感情が入っている歌だったので、発音を意識しすぎるとティムじゃなくなっちゃうんですよね。使える神経をフル活用したというか、全部の使えるところを使って、あそこは必死にもう。終わったときは壁超えた・・・とホッとしましたね。

 

――ありがとうございます。これから観る読者の楽しむポイントが増えました!

 

■芳根ちゃんに途中から抜かされた!?

 

――お互いの吹き替えについて、印象はどうでしたか?

ムロ:アフレコは僕から始まったので、最初はまだ芳根ちゃんの声が入ってなかったんですよ。外国人のティムとやっていたんです。

芳根:私はムロさんの声がもう入っていたのでムロさんの声と。

ムロ:(芳根が)優等生だったから、途中から僕を抜いたんです。同じ日数のはずなのに、ある日、いきなり芳根ちゃんの声が入ってて。
(スタッフに)「そうなんですよムロさん、芳根さん抜きました」って言われて(笑)。1日の仕事量が僕より彼女のほうが多かったもので(笑)。そこからは声を聴きながらできましたね。だから、ひとりの作業は半分半分で分けられたよね。芳根ちゃんの声は、思った通り少年の声がぴったりだなと思いましたね。僕はもうティムの声にしか聞こえなかったし、もっと早くいてほしかったと(笑)。

芳根:私は逆に、初めにムロさんの声が入っていたので、すごい心強くて。ムロさんがいなくなってからも、私はもうティムとして掴んでいたので、なんかこう不安なく、最後まで完走したっていうかんじがあります。

ムロ:(笑)え、ムロの声はもう必要なかったという?そういう意味じゃない?そういう意味じゃない?

芳根:(違う違うと手ぶりをしながらも)ムロさんいなくても私ひとりで頑張りますっていう…

ムロ:……。そしたら、字にしちゃうと、イコール、ムロは特に必要なかったって…

芳根:違うんです(笑)!常に心細かったんです、ムロさんが隣にいなくて。一番心細い時期に一緒にいれたというのがうれしくて。そのあとは、こんどは私の声を、ムロさんに届け!と思って。


ムロ:なるほど!兄としての責任感が芽生えたと!(うまいことまとめた!という笑顔、一同笑)

―― 一緒の録音はなかったのに、息がぴったりでしたね

ムロ:今まで共演していた仲で、信頼関係がもともと作れていたというのはありますね。

 

芳根:次は、一緒にアフレコがやりたいですね!

 

ムロ:二人で一緒にできるといいですね。

 

 

――今後挑戦したい役はありますか?

ムロ:せっかくアニメなので人間じゃない役や、非現実、非日常な役をやりたいですね。

 

芳根:私は植物とか犬とかやりたいです。アニメだからありえない設定の役もできる。今作の7歳の男の子とか、お芝居じゃできない役をやってみたいですね。

 

■大切な人をとられて嫉妬した経験


――作品中で、ティムは両親を赤ちゃんに取られたと思い嫉妬します。子供の頃や現在、嫉妬したことは?

芳根:子供の頃は、兄とは5歳離れていて、兄も平和主義だったので、私がギャンギャン泣いて兄が引っ張っていくという兄弟だったのでそんなになかったです。最近では、親が犬に向かって、「京子!あ、間違えた」と言っているのを聞いて切なくなりました。私の場所取られた・・・犬に!?って(笑)。大人になってどんどん嫉妬しなくなった気がします。中学生の時は、美術の作品や習字を見るだけでも「いいな~」と思ったりしていましたけど、それも個性だって思えるようになったのはこの仕事のおかげかな。

ムロ:僕は親戚の家で育ったんですけど、そこの年下の二人の子に、ヤキモチ焼いちゃいけないんだけど、僕はここに居ていいのかと考えるときはありましたね。・・・明るい話じゃなくてすみませんね。そういうのは、だからちょっとあったかもしれない。大人になってからは?ずっと一人だったから…。全然いいんです、全然いいんです笑ってくれたらそれで(一同爆笑)。最近では、仲の良い監督さんが、違う俳優をずっと褒めていると、あれ?おかしいな、一回僕の話を挟もう?と思うことはありますけどね(笑)。

 

 

――公開前から、ボス・ベイビーのビジュアルや、“中身がおっさんの赤ちゃん”というギャップがあるキャラクターもあって話題になっています。お二人がボス・ベイビーの魅力に感じる部分はどこですか?

 

ムロ:そうなんですよね。ポスターとか宣伝とかを見て、友達の子供たちが楽しみにしてくれているみたい。この前映画館に行ったら『ボス・ベイビー』の看板があって、子供が「『ボス・ベイビー』もうすぐだ」って言ってて。あ~目の前にいるよボス・ベイビーが~!違うか、俺じゃないか、俺じゃないよなと思いながら、いるよ!って(笑)楽しみにしている子供がいるんだってうれしくなりました。ボス・ベイビーは、仕事を全うするために一生懸命やってきたけれど、ティムと行動しているうち、次第に考え方が変わっていく姿に、やっぱり人の子だったというか魅力があります。

 

芳根:友達から、日本語の吹き替えを芳根がやるって聞いたときにすごくうれしかったっていう話を聞いたり、楽しみにしているという声をたくさんいただいています。ティムとしてボス・ベイビーをみているとやっぱり憎たらしいと思うことは多くあって。でもボス・ベイビーが赤ちゃんに戻るときに目がキラキラになるのがかわいくって!完全に赤ちゃんになりきる前のムロさんの赤ちゃんの声が、録っているときから好きでしたね。

 

 

――今作は、ユニバーサル・スタジオとドリームワークス・アニメーションがはじめて組んだ大作で、全世界で大ヒットしています。観られて、ここは違うな~、すごいな~!と思った部分はどこですか?

ムロ:そこまでほかのアニメと比較して観たわけではないのですが(小声でひそひそっと、うぶ毛?など良い回答を探して)そうね細かな部分とかやっぱり違うかなと思いますよね、そのへんは。あとは、僕は喧嘩のシーンが好きなのですが、アニメーションとしてすごいんじゃないかと思っています。パス!

芳根:むむ!ティムの妄想の世界の広がり方が果てしないというか、そういうところが見ていて楽しいなと思いましたね。

ムロ:ストーリーが、紐解けばもしかしたら全部ティムの妄想かもしれないですもんね。弟ができたという日の夜の夢としても捉えることができるかもしれない。

 

――最後に、公開を楽しみにしている読者へメッセージお願いします。

ムロ:大人が観たら子供の頃を思い出す、子供たちが観たら、もしかしたら「あるある!」なんて思える、どの世代が見ても面白い映画。ぜひ皆さん観に来てほしいです。あ、どの世代って芳根ちゃんの言葉使っちゃった。違う言葉ある?(一同を笑わせる)

芳根:春休みなので、学生の方もお友達や好きな人を誘ったり、家族を誘ったり。兄弟仲があんまり良くないというときも誘ったりしやすい映画だと思います。どの世代もっ!(笑)観る目線が違う分、感想が違うんだろうなと思いますが、みんなきっと笑って、ちょっとホロッとくるお話だと思うので、たくさんの方に観てもらいたいです。

 

 

Hair&Make=TOH(ROOSTER)<ムロツヨシさん>、Izumi Omagari<芳根さん>

Stylist=Masayo Morikawa(FACTORY1994)<ムロツヨシさん>、Daisuke Fujimoto<芳根さん>

Photography=Mayuko Yamaguchi

Interview=Ameba

 

 

映画『ボス・ベイビー』は3月21日(水・祝)より全国公開

 

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