内容自体はそんなことはないのだが、「ライラの冒険」の冒頭とエンディングはどう見ても「ロード・オブ・ザ・リング」を意識したものとしか思えなかった。


ニューラインは本気で社運をかけていたのだなーと思う。その後、数日前にニューラインがワーナーに吸収合併だかされるというニュースを目にして、「ライラ」の賭けは裏目に出たのねと思ってしまった。全米でコケたのが痛かったらしい。


日本では「ロードの夢よ、もう一度」は観客サイドも望んでいることらしくって、初日は大入り。でもどうだろう、観客のその夢はかなったのだろうか。


映像はアカデミー賞を取っただけはあって本当に目を瞠るものだった。

動物の姿をとっているダイモン達は現実にそこにいるようにしか見えない。それはCG技術がすぐれているだけでなく、俳優達の演技力の賜である。


でも、でもでもでも、でも。


やっぱり原作がジュヴナイルだから内容もお子様向けなのよねー。


おもしろくないというワケではないんです。すぐれたジュヴナイルは大人の鑑賞にも充分耐えられるし、それは小説も映画も同様だと思ってます。「ナルニア」なんかその好例でしょう。


でーもー、「ライラ」には何か物足りないものがあるんですよね-。


タイトルが「ライラの冒険」ってくらいだから、ライラ、ちゃんと冒険します。それはもう「ホビットの冒険」でビルボが冒険するよりも旅そのものは波瀾万丈かもしれない。


ただ、その「旅」に、少女であるライラは「連れて行って貰う」だけなんですよね。


自分で一から計画たてて、荷物の準備をして、一歩を踏み出すわけではない。


これが「ホビット」のビルボや「ロード」のフロドとは決定的に違う点なんです。


ライラは「逃げる」ことはするんですよ。その時置かれている状況が自分の気に入らなければ後先考えずにその時の保護者の元からさっさと逃げる。


けれども逃げた先で必ずまた別の保護者というか庇護者に出会い、彼等の元で生活の面倒を見て貰いながら旅をするわけです。


まあ、その代償として、彼女は彼女にしか知り得ない知恵を授けるわけなので、決して一方的に世話になっているわけではないとは言えますが。


けれどもライラが自分では食べ物一つ見つけることなく、たぶん料理もすることなく、衣類も全て与えて貰って旅をしていることには変わりないわけで。


それって「冒険」なの、という気がしないでもない。


小さな女の子ならではの特権的な「冒険」のあり方なのかもしれません。


常に彼女を守ってくれる者が側にいて、ピンチになれば必ず助けに来てくれる……観客とすればこんなに安心して見ていられる冒険譚もないですから、小さなお子様がいるようなファミリーにはぴったりの映画と言えるでしょう。


しかしですね、「プリズンブレイク」みたいに主人公が容赦なく悲惨な目に合うような物語を見ちゃった後には「ライラ」はやっぱり物足りないです。「パンズ・ラビリンス」のように少女が主人公でも悲しく美しい映画もあるわけですし。


とはいえ「ライラの冒険」は三部作の内のまだまだ第一作目にすぎないわけで、今後の展開次第でこの作品の見方が変わる可能性だって充分あります。ニューラインが引き続き続編も製作できる環境にあることを切に祈ります。