遊牧民だから当然なのだが、10歳に満たない少年もまるで自分の脚のように自在に馬を乗りこなしているシーンから映画は始まる。
馬を操るよりも、その前にまず「乗る」ことが難しいようで、騎乗する際には少年は大人に持ち上げて貰っているのが微笑ましかった。よく考えたら、彼が乗っているのはポニーでもロバでも子馬でもなく、大人と同じ立派な馬ということである。大したものだ。
草原では、誰もが馬を走らせる。歩いていたのでは生きて目的地に辿り着けないかもしれないから。
大地はそれほどに広く、人間の数はごく僅か。羊の方が断然多い。
そんな所でも人間は生きる術を見つけて着実に増えていくんだなと、人類の強靱さを改めて実感してしまった。
男も強いが女も強い。特にテムジンの母と妻。
何と申しましょうか、独立してます。
日本のような地元に根付いた共同体での生活ではないので、まわりの援助というものはほとんど期待できない。夫や息子や家財道具のあらかたを失っても、残った物を拾い集めて自分と残りの子ども達が今日から生きていくことを考えなきゃいけない。嘆き悲しむ暇はない。前向きなんて言葉じゃあてはまらない程、生きることに貪欲。きっとそうじゃなければあの草原で生き延びることはできないのだろう。
日本って、とっても生活しやすい土地と気候なのだわと思い知ったりして。
馬が必要な程、広くもないし。
「MONGOL モンゴル」では馬の足音のとどろきが、観客の興奮を煽る一番の効果音だった。
馬も人と同じくらい重要なのである。