ビデオカメラで撮影したことがないのでわからないのだが、この映画では唐突に撮影を頼まれ機材(ハンディカム?)を渡された男性がすぐさまその機能を使いこなしていることに驚いてしまった。真摯な疑問を感じる。
そんなに簡単なのか?
ブレないのは手振れ防止装置がついているからよしとしても、プロでもないのに持ち主が教えただけで暗視装置までお手の物で操作していたぞ! あたしなんざあ、デジカメで最高の動画を撮ったと思って喜んでいたら、保存を忘れて電源落としたばっかりに全部消え去ってしまい悔し涙を流してるというのに! なんでそんなに簡単に使いこなせるんだよ、え?(←映画には直接関係ない八つ当たり)
同様の手法の作品に「REC」があるが、これは劇中で撮影を担当していたのがプロのテレビクルーだから納得できた。しかし「クローバーフィールド」では完全に初心者という設定である。そのため画面の肝心な部分にピントが合わず、上下動が激しかったり驚くと取り落としたりするというのが映画の効果となっているのだが、そ~れにしても撮影そのものは問題なくできてるじゃん。
本当にそんなに簡単なのか?!
だったら、私もそれ買う。いや、そうじゃなくて。
「REC」でも利用していたのが、人間の目よりもすぐれたカメラの機能による映像。今までは暗闇から襲いかかる得体の知れない物が恐怖だったが、この映画では薄ぼんやりした背景に浮かび上がる漠然とした姿にイライラする。
そう、感動を妨げているのが実はこの分かるようで全然分からないために生じるイライラ。
この映画の主な目的は観客をイライラさせることなのかもしれない。
それでも、一応、テーマは「愛」。ハリウッドだから。
よくわからないが、この映画のカメラはどうやらテープを使用しているらしく、以前別人が撮って巻き戻しておいたテープの上から新たな映像が重ね取りされたという設定になっていて、その状況が上手く生かされた脚本に仕上がっていた。
ただ、あまりにもできすぎなので、私のようにスレた観客は感動するより興ざめしてしまうのだが。
ドキュメンタリータッチで淡々と人間関係が描かれていると、それがリアルであればあるだけ他人事になって見えてくる。登場人物Aさんの恋も苦悩もAさん自身のものであり、私には何の関わりもないことだ。Aさんの純愛は美しく思えても、そこに感情移入することはできない。あくまでAさんは他人なのである。
フィクションの方が自分がその登場人物になった気になれるので、ドラマの展開次第ではすっかり感情移入して涙をこぼしたりできるものなのだが、「クローバーフィールド」にそれはない。単に記録映像を見せられて「へー、そーだったの」という程度の感想しか抱けないのが残念だった。
ラストが綺麗に決まるだけに、尚更。
最後まで見ればわかるけれど、この映画は本当に純愛がテーマなのである。
それを真っ正面にテーマに据えるには、制作者がシャイすぎたのかも。