WOWOWで放映したのを見た。上映時に見たいと思いながら、なかなか映画館まで足を運ぶ気になれない内にいつの間にか終了していたのだが……あまりいい評判を聞かなかったので、まあいいかと思っていた。
しかしテレビで見る分には心配していた程つまらない映画ではなかった。
それどころか笑えるシーンの連続だったので、アイバン・ライトマンの演出は相変わらずツボを心得ていて職人芸だわと唸ったぐらい。
ただ……やっぱり、ちょっぴり古いのか、「見慣れた」感じがつきまとうのが否めないというか。
アイバン・ライトマンといえば有名なのは「ゴースト・バスターズ」、主役の男3人はビル・マーレイにダン・エイクロイド、それとハロルド・ライミス。
「Gガール」を見ていると、どうしても出てくる男達に彼らを重ねて見てしまう。主役がビル・マーレイでその悪友がダン・エイクロイド(或いはその逆)だったらもっとおもしろかったのに、と。
この映画での男の主役はルーク・ウィルソンなのだが、どうも彼が何につけても中途半端な感じで、それがこの映画から爆笑する機会を奪っているような気がする。そういうイメージで性格づけられたキャラクターではあるのだが、彼の生ぬるい性格が笑いをそぐのだ。
ルークの演じる主人公は、そこそこハンサムでそこそこ仕事ができて、そこそこ憎めない感じなのだが、でもはっきりいって最低の男なのだ。その最低の男ぶりをビル・マーレイが淡々と演じれば、観客は主人公を徹底的に彼を突き放して見ることができるから、彼がヒドイ目にあわされるたびに自業自得だと笑い転げたことだろう。
だがルークだと、その情けなく哀れな様子がどこか同情を誘ってしまう。
「うわ、可哀想。何もそこまですることないのに」
と思った瞬間、Gガールの破壊的な行動は爆笑を誘うものから眉をひそめるものに観客の中で変化してしまうのだ。
そうなってしまうと、もうルークの悲惨な状況を笑い飛ばすことはできなくなってしまう。
ところがクライマックスでGガールの相手がルークからアンナ・ファリスに変わった途端、息もつかせぬ爆笑の連続へ作品は変貌を遂げる。「最終絶叫計画」シリーズを成功に導いた希代の女優、アンナ・ファリス、この映画で一番おもしろいのは彼女なのである。
彼女の的確なボケあってこそ、ユマ・サーマン演じるGガールのツッコミが生き生きと輝きを帯びるのだ。アンナの存在を得て初めてGガールはいじめっ子ではなく、可愛い女へと生まれ変わる。ユマの激しさをアンナの天然ボケぶりが軽く受け流してくれるからだ(どっちも演技ですよ)。
このクライマックスのノリが全編をおおっていれば、この映画はもっとヒットしただろうに、惜しいことだ。
個人的にはルーク・ウィルソンの変わりにスティーブ・カレルだったらもう少しマシだったんじゃないかと思うのだが、しかしこういう大がかりなコメディ自体が受けない世の中になってきているのかもしれない。