「ヒットマン」公式サイト


「ヒットマン」で主役のヒットマン47号(とは言わないけど)を演じているティモシー・オリファント、そこら中で紹介文に「ほとんど無名」か、よくて「ダイ・ハード4.0の悪役」ぐらいにしか書かれてませんが、キャリアはもう少し長くて「ドリーム・キャッチャー」の主役4人組の中の一人だったり(あとの3人はトーマス・ジェーン、ジェイソン・リー、ダミアン・ルイス、他にモーガン・フリーマン、トム・サイズモア、ドニー・ウォールバーグ)、キャメロン・ディアスとユアン・マクレガーの「普通じゃない」にチョイ役で出たりしております(参考 )。


でまあ、それら「若い頃」のティモシーってどこか軽いイメージだったですね。大人になりきれてないっていうか、一発屋の雰囲気っていうか、大成しないで終わりそうなたたずまいというか……飽くまで役柄上ですけど。なんか体の中にチャカチャカしたうるさい感じがまだ残ってる青二才ってイメージですか。でも芯の強さもどこかにありました。


だから「ダイ・ハード4.0」でスクリーンで再会した時は嬉しかったですね、いい男になってて♪ いろんな経験を全部上手く自分の養分にして取り込んだんだなって思いました。


大成しないで終わりそうなたたずまいはそのまま公務員(よね?)としての出世の道を自ら断ったトーマス・ガブリエルの経歴として通用するし、チャカチャカしたうるさい感じはオタクっぽいのハッカーのイメージとして中に秘めているし、大人になりきれてないあたりは計画の動機の子供っぽさに生きている。そういった部分をポテンシャルとして持ちつつ表に出さずにぐっと堪えて落ち着いた演技をすることでブルース・ウィリスに対抗できるだけの冷たい迫力を漂わせてました。その分対処できない事態に遭遇した時の茫然ぶりが妙に可愛いというか♪ (「パパ、敵は5人よ!」と言われた時の顔が忘れられません!) 

ティモシー・オリファントもすっかり立派になったもんだわと、「ダイ・ハード」見ながら喜んでいたものです。


で、「ヒットマン」ですよ。

堂々の主役ですよ。

出世したもんだなーと思いつつ、大丈夫なのかしらと予告編を見ては心配しておりました。


だって予告編で見る限りだと、ブルース・ウィリス頭の男ニキータ(レオンのイメージじゃないんだよね)なんだもん。「この映画大丈夫なのかしら」と思うのも無理ないっしょ。


坊主頭だとどうしてもブルース・ウィリスと比べてしまうのはやっぱり共演もしてるし仕方ないのだと思うのだけど(ここでテリー・サバラスを比較対象に出す人いたらエライ!)、悪いけど頭の形ではブルース・ウィリスの方が上だと思うのよね。


ランニングいっちょになってダクトを這う姿(この時はまだ髪あったけど)とか銃を構える姿、これは坊主頭ではブルース・ウィリスの右に出る者はいないと思います。坊主頭にランニングのブルース・ウィリスって、実は大変姿が美しいのですわ。だからダイ・ハードシリーズがヒットするのよ。


「ヒットマン」でも47号がランニング姿の時があって、この時冷静な私の目はティモシーの負けと判断していました。彼は頭の鉢の部分が少し広いので、ランニング姿のように下のラインが細い時は少々頭でっかちに見えてしまうのね。


そのあとワイシャツ一枚を羽織った姿での戦闘シーンになるのですが、これも別に色っぽくもなんともないというか……。ああ、ワイシャツを着たのねえ、というだけのものでした。


ところが!

その後スーツとコートを上等な黒で決め、アクセントに赤いタイを結んで完全なヒットマンスタイルになったティモシーは無類にかっこいいんですね!


実は最初の方のシーンで顔がアップになった時、髪の毛に邪魔をされない彼の顔立ちそのものがとても美しかったので驚いていたのですが、この監督はティモシーをいかに美しく見せるかに心を砕いていたようです。ランニングやワイシャツは、コート姿のヒットマンがいかに美しいかを世にしらしめるための前振りだったのでしょう。


このフル装備になった時のヒットマンスタイル、ティモシーの坊主頭と完璧にバランスがとれているんですよ。ブルース・ウィリスの場合は長い首から肩にかけてのラインが絶妙に美しいためランニングが似合うんですが、ティモシーの場合コートの立った襟が後頭部ギリギリまで首を隠した時が抜群にセクシー。これは首が長すぎたり細すぎたりしたらダメなんですね、きっと。しかしコートのデザイナーさん最高だわ。


で、このコートで両腕にマシンガン持ってのガンファイト。後ろ姿でコートの肩が持ち上がってるそのラインが信じられない程かっこいいんですよね! ティモシー・オリファントがキャスティングされた最大の理由はこの後ろ姿の格好良さにあるんじゃないかと思ったりして。


だってこれ、元がゲームなわけでしょ?

私はよく知らないけれど、ゲームをしてる人って、ヒットマンの後ろ姿ばかり見てたりするんじゃない?


とにかくこの映画の中では、戦闘シーンじゃなくてもホテルの廊下をただ歩いているだけのヒットマンの後ろ姿が異様に決まってるんですわ。後ろ姿美人というのはたまに聞くけれど、後ろ姿美男の称号はティモシー・オリファントのヒットマンで決まりだな、ってくらい。


設定はゲームだけど、その設定の中で生きている人間達にはちゃんとリアリティがあって、ティモシーもしっかりと感情表現を見せてくれています。今までの彼の役を見ていたら不思議に思える程、雑念というものを一切感じさせないヒットマンの顔が美しいです。


それはたとえば子どもが浮かべる無邪気な表情とは違うんですよ。雑念というか煩悩でたっぷり苦しんだ挙げ句、それを捨て去った者の顔なんですね。ヒットマン自身は別に坊主頭だからといって坊主(僧侶)なわけじゃないですが、髪の毛を落とすというのはいろんな欲望も一緒に削ぎ落とすということなのでしょうか(その割にブルース・ウィリスはまだまだ生臭坊主な感じだけど)。


ああ、いい役者になったんだなあって、心底思いました。

まだまだこれから、どんどんいい映画に出演して欲しいと思います。


次は「ヒットマン2」か?(あるのか?)