「NEXTーネクスト」――Yahoo!映画
これはフィリップ・K・ディック原作の映画で、どうやらフィリップ・K・ディック原作映画につきものの「芳しからぬ興行成績(ってか、めちゃコケ)」という宿命を背負っているようである。結構その後カルト的人気を誇ったり(「ブレードランナー」)、ビデオやDVDで人気となったり(「スクリーマーズ」)、テレビ放映で一部に人気を博したり(「クローン」)とかで、映画としての完成度が高いことは証明されているのだが。
この「ネクスト」もどうやらその仲間入りをしそうな雰囲気が漂っているのが悲しい。
だって、とってもおもしろかったんだもん!
これはただし、ある程度(SF)映画を見慣れている人限定かもしれない。
というのも、これは見ようによっては同じ時間軸を何度も繰り返しているわけで、ただそれがあくまでニコラス・ケイジ演じる主人公の主観の中だけで行われているというのが肝なのである。この肝の部分が映画を理解するための重要なポイントとなるので、これをすっと理解できるぐらい(SF)映画の見方になじんでいる人でなければ、何が何だかわからないという感想になっちゃうかもしれないのである。
「バンテージ・ポイント」も同じ時間軸のできごとを何度も繰り返して見せていた訳だが、これはそこに居合わせた人それぞれの視点からの場面という点、「ネクスト」よりとっつきやすかったと思う。視点が変わるごとに「巻き戻し」を見せることで観客に「また同じこの時間に戻りましたよ」というのを分かりやすく説明していたし。
それが「ネクスト」だと経験するのは主役のクリス(ニコラス・ケイジ)一人なわけだから、慣れてない人が見ると混乱しちゃう可能性が高いのよ。
その辺をクリアすると、とってもサスペンスフルでおもしろい映画なんだけど。惜しいな。
監督はリー・タマホリ。
「007 ダイ・アナザー・デイ」等のアクション映画で知られる彼にしては随分と地味に進むな~なんて思っていたら、大間違い。それは単に雌伏していただけで、いきなりの銃撃2発だけで観客の度肝を抜いてくれました。さすがの演出力に平伏したくなりました。
「007」でも見せてくれた大量の物量を思いがけない所でばんばん落としていくというのが彼の好みのスタイルらしく、これも健在。「これをそんな所で出すか!」みたいな思い切りのいい予算の使い方にちょっとびっくり。
あのシーン、どこからどこまでが実写なんだろうと思ってしまった。確実にCGでなければ撮れないシーン(俳優の身に危険が及ぶ可能性があるため)があるからそこはCGに違いないが、最初の方は実写のはずだ。あれもCGだとしたら、それはそれでスゴイんだけど。
いろんな楽しみ方のできる「ネクスト」、GWでゆるくなった頭を引き締めるにはもってこいの作品かもしれない。