「T4Xi タクシー4」公式サイト
去年の公開時、近くの劇場では吹き替え版の上映しかなかったため見るのをやめ、DVDレンタルが一週間になるのを待っていたのである。
当然字幕で見始める。
意味はさっぱりわからないけれどダニエルとエミリアンのフランス語で喋るかけ合いのリズムが実に耳に心地よい。セリフ回しにはとても気を使って書かれた脚本なのだと思った。
その代わり、内容は何にも考えていなかったようだ。
確かに私は見ながらワインを飲んでいた。それは認める。
でも内容が全く頭に残っていないのは、酔いのせいで記憶が飛んだからでは断じてない。
あ~まりにもい~かげんなストーリー展開に頭がついて行かなかったせいである!
大体一体誰が主役なのよ、この映画!
恐らく「タクシー」シリーズのおかげでそれぞれ人気者になった俳優さん達それぞれ均等に出番と見せ場を割り振ったらこうなるのだろうが、元の内容が薄いのにさらにそれを割ってどうするよ? まるでテレビで見る日本映画黄金期の正月映画のようだ。ただ、おめでたいだけ。
ちなみにリリー役だったマリオン・コティヤールの出演はなし。おかげで彼女はオスカーを取れた。
ま、しかし、とりあえず、この映画は笑える。過去のシリーズ作品を熟知していれば。
ダニエルのタクシーは相変わらず快調に飛ばしているし、エミリアンの抜けっぷりも相変わらずだ。今回はそれに二人のそれぞれの息子も加わっておかしさが二重になっている。ただダニエルが子守にばかり回っているのは物足りなかった。
一応これは犯罪捜査(?)の物語なので、ストーリーを進めるのは警察勤めのエミリアンでそれに決着をつけるのは同僚であり奥様であるペトラである。しかしその中核となるべき犯罪そのものが適当なので、推理はおろかスリルもサスペンスも何にもない。伏線は上手く機能せず、意外な展開もとってつけただけに過ぎない。
実の所、「タクシー」シリーズにおける笑いの真打ちは署長のジベールなのである。
彼が繰り返す「失言」はフランス人達がこっそり心に秘めている他国民への侮蔑と差別意識の現れに他ならないのだ。
おバカのジベールがぽろっと言ってしまうその本心に、フランス人観客は快哉を送っているのかそれともそのように戯画化された自分達自身の姿に笑うのか、或いはその両方か。映画では差別主義の非道ぶりを発揮していたジベールが最後に悲惨な目にあい天罰を受ける事でそのバランスを保っているので、観客は安心して笑うことができるのだろう。
ひょっとしたら、フランス人の中でも特にマルセイユ人の代表としてキャラ付けされているのがジベールなのかもしれない。そうすることでマルセイユ以外のフランス人がマルセイユ人を笑っているのかもしれない。そうなってくるともうフランス人同士で勝手にやってくれって感じだが。
コメディ映画に目くじら立てる必要は全くないが、しかしこうやってフランス人の気質というものが浮き彫りにされてくるのはおもしろい。
でも「5」も作るんだったら、次はもう少しまともなストーリーにして欲しいわ、リュック・ベッソン(脚本)。