子供の頃、食べられなかったけど、今食べられるものは? ブログネタ:子供の頃、食べられなかったけど、今食べられるものは? 参加中
本文はここから

何しろ子どもの頃は好き嫌いが激しくて、食べられる食品の方が少なかったので……。

大人になるにつれて少しずつ慣れ、また味覚も変化し、今ではかつて絶対に食べなかったピーマンを美味しく感じるようにさえなりましたが……でもまだ丸ごとのピーマンを売り場などで目にした瞬間に感じる「イヤダ」という反応は払拭しきれてないですね。一体どれだけピーマン嫌いだったんだ、自分。

ピーマンはどうして食べられるようになったのか忘れましたが、ある時を境にそれまで大嫌いだったものが劇的に大好きになったものもあります。

それは椎茸。

私が子どもの頃母が料理に使っていたのはもっぱら干し椎茸でした。
椎茸は干すことによって香りが増すといわれてますが、その香りが子どもにとっては臭いだけで大っ嫌いだったんですよ。で、干し椎茸は水につけて戻すわけですが、その水が椎茸色に染まるのも嫌いだったし、それを味付けに使われるのも嫌いだったし、もちろん干し椎茸の味そのものも嫌いだったし、何よりへにゃっとしてるくせに噛み切れないでいつまでも口の中に残るのが耐えられませんでした。噛んでる間中、その干し椎茸からは干し椎茸をつけた水(?)のまずい味がしみ出てくるのがイヤでイヤで……。

子どもの頃は干し椎茸を見るたびに憂鬱になったものですよ。

そんな私も高校生になりまして、入部したのが山岳部。理由は……たまたま友達に誘われた時、その気になってしまったので。何でもいいから新しいことをやってみたいと思ってた時期だったんですよね。

それでもう一人今度は私の友達も誘って、総勢4人の女の子で山登りを始めました。もちろん男の子達も山岳部にはいましたが、テントは別ですもんね。

で、最初の登山でキャンプした時に、私の友達、椎名さんって言うんですが、彼女が生の椎茸を持って来てたんです。
「椎名さんだから椎茸持って来たの?」
なんてからかったりして。
彼女が言うには、おじいちゃんがちゃんと木の菌床から育てているもので、その日の朝に採ってきたものだなんだそうで。

その椎茸を、キャンプの火でただ焼いて塩胡椒したのを恐る恐る頂いたんですが、これが一口食べてみると美味しいのなんの! 驚きましたよ。まさに絶品。

あ、椎茸って、干さなかったらこんなに美味しいんだって、初めて知りました。
私の苦手だった噛んだ時に滲み出る水分とか、噛みきれない状況とか、干し椎茸でイヤだった部分が生椎茸では全てクリアされているわけですから、あとは椎茸本来の味しか残ってなくて、それがほんとに香ばしくて美味しかったんですよね!

その朝の採りたて、という条件も大きかったのでしょう。
それ以来「椎名さんちの椎茸」は私にとって最高に美味しかった物の代名詞になりました。

生椎茸でなれると、干し椎茸の味わいも分かるようになりましたしね。
でもそれ以来キノコ全般が好きになっちゃって、今では何かしらキノコが毎日食卓にのぼりますわ。


椎名さんはね、その頃丁度御父様を亡くしたばかりで、でもその悲しみを人前では見せることのない人でした。
そんな彼女がわざわざ持って来てくれた椎茸、単に自分が嫌いだからって食べなかったら申し訳ないでしょ。
だから嫌いとは言わず、ただ黙って我慢して口に運んだんです。

ところがその椎茸がこの世の物とも思えぬほど美味しくて……そういえばその時他に何を食べたのかまるで覚えてないわ。その日の私の頭には「椎茸」しか残らなかったみたい。

結構その日を境に自分の好き嫌いを克服しようという気持ちが働くようになったので(だって、あんなに嫌いだった椎茸が最高に美味しかったんですから、他のも試してみなくちゃね)、今でも私にとって「椎名さんの椎茸」は大事な思い出です。

椎名さんとは高校を卒業して以来会ってないけれど、美人で気丈な彼女のこと、きっと幸せになっていると信じています。