「ハロウィン」公式サイト



リメイクされた作品を見るといつも思う事なんだけどさ、



ジョン・カーペンター監督は偉大なる天才である!!



それに比べたらロブ・ゾンビはチンケな変態だわ。



カーペンター作品って、カーペンター以外が撮るとどれも駄作になるんだけど、この「ハロウィン」は極めつけ。映画が終わって席を立つ人達が口々に

「つまんなかったー」

と言っていたのが印象的でした。



最近のリメイク、「テキサスチェーンソー」なんかもそうなんだけど、「かくして彼は殺人鬼になった」みたいな話にもっていくのが流行なのかこの「ハロウィン」もマイケル・マイヤーズの子ども時代から始まるんですが、そんなのやったもんで人間の境界を越えた所にいるのが恐さの根源だったはずのブギーマンがただの育ちの悪い殺人狂に堕してしまってました。そんなの今更恐くも何ともないんだってば!



なんていうかこの映画、出てくる登場人物達、年齢に関わらず男はほとんどが小汚い長髪で汚い言葉を吐きちらすし女はほとんどが挑発的な服装で無意味にベタつき言葉使いは下品で、双方話す内容はスポーツ紙レベルで要するにセックスにしか関心がない。マイケルの育った家庭環境はいわゆるプア・ホワイト・トラッシュみたいなものなんだけど、他の登場人物も似たり寄ったりで多少金持ちでも会話に教養は感じられないのですね。



まあ、マイケル・マイヤーズが育った家庭など、いわゆるプア・ホワイト・トラッシュと呼ばれる人々の中でも最低最悪に近いような生活環境なんですが、そのせいか何なのか殺し方一つ見ても粗暴なだけでね、どこをとっても美しさのカケラもないんです。騒々しいだけ。



これはマイケル同様の生活環境で暮らしているようなアメリカの若者が見れば、自分達のやり場のない怒りや破壊衝動をマイケルの殺人に託して晴らすことができて胸がすっとするのかもしれませんが、日本とはやっぱり環境が全然違うんですよね。



一番違うのは、日本は映画料金が高くてしかも今や封切館がほとんどだから低所得な若者にとっては映画料金が高すぎて娯楽にならないって事なんですよ。つまり、マイケルの殺人衝動に重ねて自分の鬱憤晴らすようなタイプの若者はそもそも出かけて行ってまで映画なんか見ないわけ。だからハロウィーンにデートで「ハロウィン」見るようなある程度懐に余裕のある若者はこの映画を見てもどこにも共感を覚えない。



そりゃあ彼らにとっては

「つまらない」

という感想にしかならないはずですよ。スラッシャームービーとしても特に出来がいいものでもないですから。



あたしゃ思わず追いかけてって、本家カーペンターの「ハロウィン」はこんなもんじゃないんだ、もっと根源的な恐さを持つホラー映画の金字塔なんだ、と言い訳したくなりましたよ、思いとどまったけど。



このロブ・ゾンビという監督、興味があるのは「人が死ぬ瞬間その目に何が映るか」なんですよね。だから撮りたいのは人が死んでいく様だけであって、殺され方とかその前の恐がらせ方とかはどうでもいいんです。要するに、人が命を失う様子だけを繰り返し見たい人なんですよ。まー一種の変態ですね。死にざまフェチ。何を見て精通したんだか(彼のフェティシストとしての誕生秘話は恐らくマイケルの子ども時代で語られている)。



で、その時の顔を見られるのを異常に恐れている。だから仮面に執着する。これもマイケルの子ども時代として描写されているけれど、ほとんど監督自身のことなんじゃないかと思ってしまったわ。だってオリジナルにはないマイケルの子ども時代の描写を延々とやってるんだもんね。



もっとも男に美形が一人も出ていなかったから、単に自分の顔にコンプレックスがあるだけかもしれないけれど。女性も美人でも安っぽい感じのケバいねーちゃんばっかりで、監督のお里と好みが知れるというものです。



特にヒロイン! 可愛くもなければ恐怖に耐えて立ち向かう根性もないうるさいばっかりのただの小娘! あんたにローリーを名乗る資格はない!!(←おいおいおい)


ここでもう一度声を大にして叫びます。



ジェイミー・リー・カーチスは偉大なる女優である!



希代のスクリーミング・クイーンだわよ。その真に迫った悲鳴と怯えっぷりが観客をも恐怖に誘ったんだから。ああ、オリジナルの「ハロウィン」は恐かった!





そうそう、映画の内容とは関わりのない所でおもしろい事がありました。



子ども時代のマイケル、冒頭からマスクを被ったまま登場するので肩までかかる金髪以外に顔は分からないんだけど、その彼を母親の男(ろくでなし)がねちねちといやがらせを言うんですね。


「女々しいヤツだ。いっそタマをとってミッシェルとでも呼ぶか」とか何とか。



これでピンと来ましたね、私。あの金髪にも見覚えがあったんですが、「ミッシェル」という名前で。



「ハンコック」にいじめっ子が出てきてたんですが、その「フランス人で親が離婚劇の真っ最中」の男の子の名前が「ミッシェル」だったんですよ。


で、マイケルがマスクをとったらやっぱりその「ミッシェル」と「マイケル」、同じ子役でした♪



「ハンコック」を見た時に、ただのいじめっ子にしては随分と名前と顔をはっきり出すんだなあなんて思ってたんですが、ひょっとしたら一種のパロディ的なお遊びだったのかも♪ アメリカでは「ハロウィン」の公開の方が先でしたから。



「ハロウィン」ではバチが当たらないままだった子ども時代のマイケル、「ハンコック」でそのツケを払わされたのかもしれません。



この映画でおもしろかったのはそこだけ。

あとはひたすら退屈な2時間。


あ、マルコム・マクダウェルとブラッド・ドゥーリフのお二人だけはさすがにいい芝居してました。マルコムも登場した時はこきったない長髪で誰だか分かりませんでしたが、「15年後」になってからは真っ白な短髪ですっきりしていてよかったです(それでようやく名前を思い出した)。医者には見えなかったけど。



ブラッドとマルコムが二人きりで芝居をするシーンがあるんですが、そこだけが光っていましたね。いや実際演出で無意味に二人の(特にブラッドの)眼球を光らせてたんで何かと思ったんですけど。



――どこまでいっても誉める所のない映画だわ……。