こちらの記事 によりますと、現在リメイクのための映画化権獲得のための交渉段階のようで。
「ゼイリヴ」といいますと、今から20年前、ジョン・カーペンターが最も脂ののってた時期の傑作の一本ですね。これは地味に始まり地味に終わる映画なんですが、それでも無類におもしろい! 「遊星からの物体X」に代表されるようなドロドロゲロゲロのクリーチャー類はほとんど出さず、「ゴースト・オブ・マーズ」や「要塞警察」のような激しく派手な銃撃戦もなく、スネークのヤバくて危険な冒険譚でもなく、「パラダイム」や「光る眼」のような凝ったSFの設定があるわけでもなく、「クリスティーン」や「マウス・オブ・マッドネス」のように原作とは違った味わいのホラーでもなく、じゃあ一体そんな「ゼイリヴ」のどこがおもしろいのかと言えば、ズバリ男ですよ。主役のロディ・パイパーの男臭い存在感。これに尽きますな。
元々カーペンター映画には男臭い、一匹狼の、男の中の男! が主人公としてよく登場するんですが、極めつけがこのロディ・パイパー演じたナーダ(というらしい)でしょう。
たとえば「ニューヨーク1997」でスネークを演じたカート・ラッセルは、あれで髪を整えて銀縁眼鏡かけてスーツを着せれば敏腕新聞記者にちゃんと見えるものだし、「ヴァンパイア 最後の聖戦」に出ていたジェームズ・ウッズだって言葉使いに気をつければ刑事ぐらいには見えますよ。
しかしロディ・パイパーは――たとえ銀縁眼鏡をかけてスーツに身を固めても新聞記者には見えないだろうし、たぶん刑事にも見えない。だって彼からは記事を書くとか、報告書を書くとかいった書類仕事が想像できないのですわ。彼にとっては肉体だけが自分の拠って立つ所、考えるよりも先に体が動くタイプとしか見えないの。
実際彼は本職の俳優ではなく、元はプロレスラー。
「ゼイリヴ」ではその彼の特技(というか本質?)を徹底的に生かして、ひたすら肉弾戦が繰り広げられます。もちろん「プロレス」ですから技をかけるのは同じ人類ね。アンタの敵は一体何だったのよ? と見てるこちらの目が点になるほど、同朋との死闘(どつきあい、とルビをふります)が延々と繰り広げられます。んで、このシーンがこの映画の一番の見どころだったりするのよね。
しかしですね、「ゼイリヴ」のおもしろさって、実は全部ここにあるんです。
「ゼイリヴ」でカーペンターが観客に問いかけているのは
「人間の、人間らしさとは、一体何だ?」
ということです。
だから主人公になる人間には、愚かしさも何もかもひっくるめての素朴な「人間らしさ」が要求される。
素朴であることがどうしても必要だから、カート・ラッセルやジェームズ・ウッズが持つような一種の悪賢さは遠ざけられねばならなかったのですよ。
だからリメイクするとしたら、その時にもキャスティングが非常に重要になってくるはずです。
さて、プロレスラーから映画俳優に転向した人はロディ以外にも何人もおりまして、中でも最近で一番有名なのは言わずとしれたロック様ですね。
ロック様主演による「ゼイリヴ」――派手なアクションになりそうです……。
あと、「ハロウィン」でマイケルやってたタイラー・メインも元プロレスラーだそうですが、どうなんでしょう、仮面をはずした顔で「ゼイリヴ」の主役、務まりそうでしょうか? セイバートゥースの顔を思い出す限り、素朴な点は問題なさそうですが……。
でもね、カーペンターはリメイクする必要なんかないですよ。
今、この時代に、あの「ゼイリヴ」をそのまま再公開すればいいんだわ。
名作は決して古びないんだから。