群像劇のこの作品、出演はビリー・ボブ・ソーントン、キム・ベイシンガー、ミッキー・ローク、ウィノナ・ライダー、ジョン・フォスター、ブラッド・レンフロー、アンバー・ハード、ブランドン・ラウス、リス・アイファンズと超豪華。
ゴールデン・グローブ賞に輝いたばかりのミッキー・ロークまでちゃっかり混じっていたりしますが、キャスティング当時はブランドン・ラウス君の方がネームバリューあったんじゃないかしら。何しろ「スーパーマン」のスーパーマンだったから。人気商売とはいえ、この業界の浮き沈みって激しいです。
上で名前のあがってるブラッド・レンフローなんて、すでに故人だし。
そう、丁度一年前の2008年1月15日、彼は亡くなり遺体が自宅で発見されたのでした。たった25歳で、薬物の過剰摂取による事故死。この「薬物」が麻薬であろう事は誰も疑いませんでしたね。
「依頼人」の子役でセンセーショナルなデビューを飾り、「ゴールデン・ボーイ」ではサー・イアン・マッケランと共演して確かな演技力を見せていたのに……。私が最後に見たのは「ジャケット」で、そこにいたのはかつての美貌を失い、人生をもダメにしかけているような、うらぶれて荒んだ感じの青年でしたよ。ショックでしたね、その顔にあらわれているものは演技やメイクだけで表現出来る類のものではありませんでしたから。
だから彼の訃報を聞いた時は、悲しくは思ったけれど心のどこかで「やっぱり……」と呟く自分もいたのです。
その一週間後にヒース・レジャーの死を知った時は飛び上がらんばかりに驚いたものですが。
2008年の1月は、だから美青年好きの映画ファンにとっては涙なくしては語れない月になったのです。
その年のアカデミー授賞式で、亡くなったスター特集の時に当然のようにヒースは大々的に取りあげられていたのに、ブラッドについては何の言及もなかった事も決して忘れられません。
そのブラッドの遺作ともいうべき作品がこの「インフォーマーズ」なのです。もはや一部ファンしかブラッドの事なんて話題にもしませんが、ひょっとしてこの作品で彼の見せる演技がすぐれたものならば、死後とはいえ彼の評価もあがるかもしれません。
ヒース・レジャーが「ダークナイト」で助演男優賞の総取りをしてますが、そこまではいかなくてもブラッドの名前も映画史のどこかに残って欲しい。「依頼人」で彼が演じた、痛々しくも強靱な少年の姿を覚えている私は切にそう願います。