「ホルテンさんのはじめての冒険」 公式サイト  字幕入り予告編付き


公開は2月21日(土)より BUNKAMURA ル・シネマで。


これはノルゥェー映画。


日本では、あまり見る機会がない国の作品(だと思う)。


それで興味が湧いて試写会に応募したのだが、いざ当たったら当たったで、こんな所でなけなしの運をつかっちゃって果たして良かったんだろうか自分、と後悔にも似た煩悶さえ覚えてしまった。


さて、では(たぶん)初めて見るノルウェー映画とノルウェー語はどうだったかというと……ほのぼのしてました、全体的に。


こういう雰囲気、日本の映画でも覚えがあります。


その名は「かもめ食堂」ラブラブ (公式サイト)

小林聡美、片桐はいり、もたいまさこさんの名女優3人組が出ていて、すでにテレビ放映もされたつとに有名な作品ですね。


「ホルテンさん」を見ていて思い出したのは、この「かもめ食堂」にも流れていたゆったりとした時間なんです。


ストーリーは全然違うんですよ。

ただ、映画の中で生きている人達の醸し出すムード、それがよく似通っているんです。

「かもめ食道」は舞台がフィンランドで、ノルウェー同様の「北欧」ですが、別に映画に出てくる風景が似ているとかそういうわけでもないんですね。


似ているのは、そこにある独特の「生活に追われている感の無さ」です。

「生活感の無さ」ではありませんよ。

そうではなくて、充足した生活を送っているためあくせくする必要がない人達のイメージですね。

それはまた、お金がありあまっていて買える物はなんでも次々に買っちゃうという高レベルでの消費生活を満足させて幸せを得ようというハリウッド映画の描くような「絵に描いたような幸福」とも違うんです。


ホルテンさんや「かもめ食道」の小林聡美さんからは、自分の身の丈にあった生活を長年営んでいる人達の身から滲み出てくるゆとり、そういったものが感じられるのですね。


しかし、そういう傍目には何不自由なく生活しているような人にも、心の底には何かまだ自分に対して満足できない、どこか歯がゆく物足りなく思っている部分が潜んでいるわけです。


それは物質的なものではないし、精神的にも病院へ行ってセラピー受ける程の重要さとは(他人には)受けとめられるものではないので、それを不満として口にするのは憚られる……そういった類の「物足りなさ」です。たとえば「シャル・ウィ・ダンス」でダンスに一種の生き甲斐を見いだす前の主人公の気持ちをもうちょっと薄くしたような感じ。


でもそれに気づいてしまったら、常に心のその部分にすきま風を感じずに生きていくのは難しい。


だから、自分にできることは何かな、と模索する。

模索して、いろいろやってみる。

誰にも不満はうちあけず、自分が他の人の役に立てることがあるなら喜んでそうしながら。


そうやって、ちょっとずつ、隙間を埋めて、昨日よりちょっとだけ新しい自分になる。



ホルテンさんは小林聡美さん程器用ではありませんが、努力はとっても微笑ましいです。


ほのぼのしたい時にはもってこいの作品かもしれません。