*この記事は先に書いた

「デクスター ~警察官は殺人鬼」シーズン3

「デクスター ~警察官は殺人鬼」 女性キャスト達

の二つの内容を受けています。


デクスターはいわば羊の群れに紛れ込み、日中は羊として生活している羊の皮を着た狼です。

夜になるとその羊の皮を脱ぎ捨てて元の狼の本性に基づき狩りの獲物を求めて徘徊するわけですが、では彼のその自由自在に着脱できる「羊の皮」は一体誰が作ったのでしょう?

羊の皮、すなわちデクスターが表面にまとい他人(殺さない相手)に見せている人格、その形成には大きく彼の養父が関わっています。彼の表の人格にはいわばスーパーエゴとしての父親が居座っていて、彼の真の人格であるモノローグの主と常に心の中で葛藤を繰り広げているのです。


実際、ドラマの中では亡き父親が彼の前にだけ姿を現して意見したりするシーンが幾つもありました。彼の内的な葛藤を分かりやすく表現するためですが、実はこの葛藤こそが「デクスター」というドラマの主眼というかテーマなのですね。せんじつめれば父親と息子の葛藤であり、自分の上に君臨する偉大な父親を乗り越えようと足掻く息子のドラマなのです。それはアメリカの映画やドラマでは普遍性を得ているといっていい、まあ言ってみればありふれたテーマでもあるのですよ。


「デクスター」がショッキングな題材を扱いながら人気ドラマであり続ける秘密はここにあるんでしょう。


もちろんドラマで繰り広げられるスリルやサスペンスも上質なもので、文句なくおもしろい。飛び散る血の量や切断される肉の量も「CSI」にひけをとりません。


しかし「デクスター」を見ている時、B級のホラー映画にありがちな監督本人が殺人淫楽の傾向を秘めている様な形跡って、全然感じられないんですよ。普通、快楽殺人というのは性的嗜好と密接に結びついているものなんですが、「デクスター」にはそういう要素が見当たらない。


ドラマの中でデクスターは幼い頃から、つまり思春期を迎える以前から殺人をせずにはいられない人間だったと設定されているのもうなずけます。彼にとって「殺し」は肉食獣としての本能であり、性的衝動や快楽と結びついているものではないんですね。本能故に、止めることは不可能という設定です(そういう人間が実際に存在するかどうかはおいといて)。


人間は本能をコントロールするために文化を生み出し教育を手段として使いました。躾とも言いますね。


だからデクスターの父親もその規範にのっとり、デクスターの肉食獣の本能を「それは普通の人とは違うものだ」と教え、矯正不能なそれをせめて制御できるようにしつけたわけです。普通の子を持つ普通の父親と同様にね。違うのはデクスターの本能だけ。


もっとも自分の子どもが普通の子と違うと知った父親は、なんとかしてその「普通の子と違う」部分を矯正して普通の子と同じようにしようと必死になったりする場合もありますから(たとえば、自分の息子がゲイだと知った時のノンケで四角四面の父親のように)、デクスターの養父というのは非常に理解力のあるすぐれた父親でもあったのですよ。その証拠に実の娘は父親を崇拝していて、父亡き今は自分が父親とそっくりになろうと無意識に努力したりしているわけで。


養父がすぐれた人で理想的な父親であったため、デクスターはその父親を乗り越えるのに苦労しているわけで、その辺はもう普通の男性の抱える葛藤とそう大した変わりはない――これがこのドラマのおもしろい部分なんですね。



その父親を、どうやらシーズン2ではデクスター、乗り越えることに成功したらしいのです。シーズン2の短い総集編と、シーズン3での彼のモノローグを聞く限りではそうです。


ってことは、デクスター、シーズン2で自分の最大の葛藤を乗り越えちゃったわけですよ。

これって、物語としてはそこで大団円というか、見事な結末を迎えたはずなんですよね。


いわばデクスターの物語として当初予定されていた分って、シーズン2で終わっちゃってるんです。


そこからシーズン3をどう進めていくのか――恐らく、シーズン1とシーズン2を通して見ていた人にとってはこれが最大の興味になるのではないでしょうか?



映像的に言うなら、亡き父親が幽霊でもないのにデクスターの前に姿を現してあれこれ意見するという手法をこれ以上踏襲するのはかなり無理があるということになります。



デクスター自身、生きていく上でまだまだ葛藤しなければなりません。何しろ彼は普通の人間の「感情」というものを学習で身につけた人間ですから。丁度「スタートレック TNG」に出てきたアンドロイドのデータ少佐(WIKI )みたいなものですが、デクスターはデータと違って普通の人間に憧れたりしないのでもっと始末に負えないのですよ。


デクスターには恋人のリタや義妹のデボラとのからみもありますが、このドラマでは主眼が父と息子の葛藤ですから女性問題は所詮副次的なものにしかなりません。リタとの関係はデクスターに普通の成人男性はいかに振る舞うべきか=羊の皮はどうすればいいのかという問題を提起し、スーパーエゴとしての父親を呼び出して再び父と息子の葛藤を生じさせる役を担っているのかもしれません。



しかしシーズン3には新しいキャラクターも登場するのです。



キューバ系のラテンの血も熱いミゲル・プラード地方検察補。
Who killed Cock Robin?
役者はジミー・スミッツ氏。渋いです。



このミゲルがデクスターの人生に深く関わってくるようなのです。

今後、ミゲルを疑似的な父親として彼との葛藤がデクスターをまた別の方向に導いていくのかもしれません。


デクスターは最終的にミゲルをどのような形で乗り越えるのか……それとも乗り越えないのか。

それは今後のドラマの成り行きを見守る事でしか分かりません。



◆デクスター ~警察官は殺人鬼 シーズン3 全12話一挙放送
 5月2日(土)12:00 FOXCRIMEチャンネルでスタートです!


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