下の記事でこの写真を載せて、下半身はCGIだろうと書きましたが、
別にアイアンマンが空を飛んだりするシーンでなくても、下半身部分はあのスーツ絶対装着できないはずなんです。
アイアンマンの全身像。正面からみるとどうってことありませんが……
斜めから見ると下肢のデザインが人体とは違っています。
塑像(風のCGかも)を横から見れば一目瞭然。
膝から下が背中側に向かって著しく彎曲しているのです。
一番上写真を見る限り、ロバートの脚はこれには絶対入りません。
他の人だって、まず無理。人体の形状と違ってます。
でもこれは間違ったのではなく、デザイン段階で決まってるんですね。
アイアンマンのデザインはどうしても胸に中心を置くことになります。
頭を幾ら小さくしても、胸の装甲がこれだけ厚いとどうしても上ばかり重くなります。絵ですから実際の重みはないんですが、それでも見てる方はバランスの悪さをつい感じてしまいます。そのためバランスをとるために下半身をイメージ的に重くしなくてはならないのですが、かといって現実的に見える「重さ」をつけると絵からスピード感を感じ取れなくなります。
じゃあどうすればいいかというと、厚みとして前に出した分を後ろに引っ込めれば良いわけですよ。塑像の真横のモデルを見れば分かるように、胸の厚みとして前に突出させた分をふくらはぎとして後ろ側に突出させ、それでバランスを保っているんです。
ただ、それを直線でやってしまうと美しくないし、人体のイメージから遠ざかってロボット(パルタとか)的に見えてしまうので曲線で表現しなくてはならない。胸の厚みの曲線は大体それに沿った形で背中をくびれさせても不自然ではありませんが、脚はふくらはぎに合わせて脛の前の部分を曲線でえぐると少々人体には合わなくなってしまう……そういうことでしょう。その辺は膝の下ということで、いろいろ工夫して目に映る部分からは極力不自然さを排除しているのですが、まあしかし、現実には、あのデザインのフォルムのままでは装着は不可能なんだと思います。
仮にロバートがあの脚を現実に装着していたとすれば、膝から下は真っ正面か、或いは膝を折って見えないようにしているか……撮影で、いつもの脚の形とは違う、ということをバレないようにやっていることでしょう。
でもアイアンマンのデザインが美しいのは、真横から見た時に胸とふくらはぎのラインがS字を形成しているからなんですね。Sというよりは∫(インテグラル)の方により近いし、上3下1ぐらいの割合ですが、でもこれは一般的に人間が見た時に美しいと感じる形なのですよ。
私は映画のアイアンマンのデザインは素晴らしいと思っています。着ぐるみでは絶対に実現できないデザインをCGIだからこそスクリーンにのせられたのだと。
デザインの美しさを優先した映像を見ることができる――私にとってはそれがCGIの醍醐味です。