「ハリー・ポッターと謎のプリンス」 公式サイト
この映画は「ダークナイト」が大ヒットしたという理由で公開が去年の11月からこの7月に延期になったのだったが、そのせいか微妙に季節感にズレがあるような気がしないでもないというか……。日本は猛暑なのに、「ハリー」の世界の季節感は何となくずっと冬なのである。もっともそれは外側だけのことであり、ホグワーツの生徒達の内面には完璧に春が訪れていたのだが。
まあ、「ホグワーツ・ミュージカル」とでも申しましょうか、おなじみのメンバー達の繰り広げる不器用な恋模様が作品のコミカルな半分を占めて、上映中はクスクス笑いっぱなしでございました。ワタクシ、特にハーマイオニーの嫉妬ぶりが好きでございます。
物語のもう半分にはダンブルドアとハリー、強い絆で結ばれた二人がヴォルデモートを倒すために自分が犠牲を払ってでも事を先に進めようというする姿が描かれています。それはかなり重苦しく、観客にとっても楽しいばかりのシーンとはいえません。物語の本筋であるこの半分が暗いために、あえてホグワーツの生徒達の恋愛話をたくさん盛り込んで映画としてのバランスをとったのでしょうね。
ポイントをこの2点に絞ったために、映画の中では描ききれなかった部分がたくさんできてしまい、そのために原作を読まないまま映画だけで「ハリー・ポッター」を見ている人には「いつのまにこうなったの?」的なエピソードがかなり多くなったかもしれません。もはやそれは「そういうこと」として黙って受け入れるしかないというか。
原作としてもこの「謎のプリンス」は最終巻の直前にあたり、クライマックスに向けて一種の「タメ」と申しましょうか、衝撃のラストに向けてのパワーを温存しておく部分にあたります。その分、映画として見た時に前作にはあった爽快感はなくなっているのは仕方のない事なのでしょう。
花の種は一回地面に落ちなければ新しく芽を出すことはできません。
この映画は丁度その時期、素晴らしい花を咲かせる種が、その前にまず芽を出すための準備を始める時にあたるのでしょう。
おなじみのキャラクター達の出番がほんのちょっとずつしかなかったのは残念ですが、それでも懐かしい顔に会えることはできます。
若き日のトム・リドルがキアヌ・リーブスのような美少年なのも眼福というか。いや~、あれは人を惑わす顔ですわ~。
でもこの映画の中で一番驚いたのはロンの二の腕のむくつけき太さかな~。顔は入学した時からほとんど変わってないように見えるのに、身体の方は立派な青年になっちゃっててびっくり。完全な大人になってしまう前に、全編の撮影が無事終了することを祈ります。