シネマトゥデイ より(以下一部抜粋)


先月、撮影開始3日前に製作中止が決まったスティーヴン・ソダーバーグ監督、ブラッド・ピット主演の新作映画『マネー・ボール』(原題)。メガホンを取る予定だったスティーヴン監督が降板することが明らかになり、誰もが製作続行は不可能だろうと考えていたが、コロンビア・ピクチャーズは映画を生まれ変わらせることにしたようだ。


 ハリウッド・レポーター紙は、コロンビア・ピクチャーズが映画『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』の脚本家アーロン・ソーキンを、『マネー・ボール』(原題)の脚本のリライトを担当させるために雇ったと伝えた。『マネー・ボール』(原題)の脚本は、映画『シンドラーのリスト』のスティーヴン・ザイリアンがドラフトを執筆し、スティーヴン監督が脚本を手掛けたが、コロンビア・ピクチャーズの会長であるエイミー・パスカルが脚本の出来に満足できず撮影開始3日前に製作中止を決めている。『マネー・ボール』(原題)の原作は、マイケル・ルイスのベストセラー・ノンフィクション小説「マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男」で、貧乏メジャーリーグチームがどのようにして輝かしい戦績を残したのか、MLBの元外野手でオークランド・アスレチックスのGMに就任したビリー・ビーンの見事な手腕を描いていく物語だ。コロンビア・ピクチャーズは製作の仕切り直しを急いで進める予定で、リライトをするアーロンはスティーヴン監督の脚本ではなく、ザイリアンの脚本を基に新しい脚本を来月までに仕上げないといけないそうだ。


ここまで脚本でもめるのは、当初ザイリアンが執筆した脚本のドラフトはもっとドラマチックで映画らしいストーリー展開としびれさせるようなせりふがあり、その内容を気に入りコロンビア・ピクチャーズは本作の製作を決めていた。しかしながら、製作決定後にスティーヴン監督が脚本を大幅に書き換え、地味でもっと現実的な物語に変更してしまったのだ。スティーヴン監督は今月頭に正式に監督降板を表明し、本作から抜けることを明らかにしている。主演のブラッド・ピットはザイリアンの脚本にほれ込み企画当初からかかわってきたこともあり、引き続きビリー・ビーンとして出演する予定だ。


 アーロンは、デヴィッド・フィンチャー監督がメガホンを取る見込みの人気SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)Facebook(フェイスブック)の創始者について描く映画の脚本にもかかわっており、こちらはハーバード大学の学生だったマーク・ザッカーバーグの成功物語というお堅い物語をユーモアたっぷりに描き、現在ドラフト段階だがかなり好評のようだ。Facebookの映画もコロンビア・ピクチャーズが製作し、プロデューサーにケヴィン・スペイシーが参加し、撮影は今年末から開始される予定だ



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うん。

ソダーバーグ監督という人はわざとらしい「ドラマチック」さを嫌いますからね。

彼はむしろ現実におきたドラマチックすぎるできごとを、何気なく、あたかも日常レベルのできごとであるかのごとく、淡々ととる術に長けている監督なのだわ。

だから「ドラマチック」さを求めている人には物足りなく思える時は確かにあるのよね。


でもそれは決してソダーバーグ監督がドラマチックなものを撮れないという意味ではないのね。彼の好みとして撮りたくないだけなのでしょう。彼にとっての「ドラマチック」はドキュメンタリータッチの中にこそあるもので、それは現実的だからこそ、フィクションの嘘くさい「ドラマチック」をはるかに凌駕するものなのです。それは彼の映画を見ていればわかることです。


とはいえ、それがお金を出す側に気に入って貰えなければどうしようもないわけで。


映画というビジネスの厳しさを見せつけられるエピソードでした。