CinemaCafeNet より(以下一部抜粋)
悪の組織に属する忍者がなぜ全身真っ白? 日本の観客からはそんな声が聞こえてきそうだが、そんなことは問題ではない! この男には不思議と白が似合う。案の定と言うべきか、イ・ビョンホンはインタビュールームにも全身白で、甘い笑顔を携えて現れた。念願のハリウッド進出作となった『G.I.ジョー』では冷酷な暗殺者に扮し、激しいアクションを披露。気負いや緊張などまるで感じさせず、クールにパリの街を壊滅に追い込んでいる。来年で40歳を迎えるが、その人気はとどまるところを知らぬビョンホン。人々を魅了してやまない笑顔を封印して挑んだ本作、さらに今後について話を聞くために韓国へ飛んだ。
3作品に連続出演。「かなり疲れました」
作品との出会いは2005年のカンヌ。主演作『甘い人生』が映画祭で上映され、各国メディアから絶賛を浴びた翌日だった。
「それより前に、トラン・アン・ユン監督(『夏至』、『ノルウェイの森』)が直接、韓国にいらしてくださり『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』への出演の交渉をしていたんです。でも、出演を決断するまでに1年ほどの時間を要しました。その間にカンヌで『甘い人生』が上映され、エージェントから『こういう映画があるが、出てみないか?』とお話をもらったんです」。
奇しくも、『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』と本作『G.I.ジョー』は同じ年に立て続けに公開されることに。
「撮影の順番で言うと、まず『グッド・バッド・ウィアード』(※8月29日より公開)があって、次に『アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン』。『G.I.ジョー』は最後でした。『グッド・バッド・ウィアード』でかなり体を作っていたので、続く2作での準備が容易になった部分はあります。でも、立て続けの撮影だったこともあり、かなり疲れていたのも事実です」。
これまでになく、ハードなアクションが求められた本作。撮影中にひざの靭帯を損傷するという大ケガを負っている。
「空中でキックするというシーンがあったんです。テコンドーの技を応用したものなんですが、なかなかいい映像が撮れず、僕の方からもお願いして十数回やり直したんです。緊張のせいか、(靭帯が)切れた瞬間は分かりませんでした。でも、少しして足が言うことを聞かなくなってきまして…。いよいよおかしくなって病院に行ったら、お医者さんからは『俳優だか何だか知らないけど、2~3週間は安静にしてなさい』と言われました。幸いなことにその後しばらくはアクションシーンの撮影はなく、プラハで無事に撮影を終えることが出来ました」。
ビョンホン自身が求めたファイトシーンのインパクト
「実は、その病院でちょっとおもしろい話がありまして…」。いたずらっぽい笑顔を浮かべ、そのときのエピソードを語ってくれた。
「行った先の病院は、看護師さんも医師もみんな日本人だったんです。看護師さんは私に気づいて大喜びしてくれたんですが、その医師は私のことを全く知らず『本当に映画俳優なの?』という表情でしたね(笑)。たまたま、近くに置いてあった雑誌に僕の写真が載っていて『これ、僕です』と見せたら『本当だったんですね』とようやく納得してくれまして、なかなか楽しい時間を過ごすことができました」。
また劇中、忍者の衣裳を脱ぎ捨て、その美しき肉体を惜しみなく披露しているが、これは彼自身のアイディアだという。
「ラストのファイトシーンは、もう少しインパクトがあった方がいいのではないかと考え、僕からも様々なアイディアを出しました。例えば、彼の武器はいかにも“近未来”という感じですが、これについても監督とかなり話し合いました。その流れの中で『服を破って脱ぎ捨ててはどうか?』と提案したんです」。
激しいアクションに加え、最新のVFXを駆使した刺激的な映像が魅力の本作。中でも、ビョンホン演じるストームシャドーは、一撃でエッフェル塔を倒壊させてしまう。ちなみにビョンホン自身は2年前にパリの街で撮影された写真集、その名も「パリイ」をリリースしており、折に触れてパリへの並々ならぬ思いを語っていたのだが、その胸中やいかに…?
「もう、僕は二度とフランスに行けないんじゃないかと思ってます。この作品がフランスで公開されて、僕がパリの街を歩いていたら、危険な目に遭うかもしれないですね(苦笑)」。
中学生の頃の日記の1ページ目に書いたのは…
本格アクション大作で、ハリウッド進出を果たしたが、自らに訪れた“変化”についてこう語る。
「確かに『G.I.ジョー』
は、これまで出演してきた心理を細かく描くような作品とは大きく方向性が異なります。ではなぜこの作品への出演を決めたのか? と考えたとき、思い当たったのは、子供の頃から映画館という空間が大好きだったということ。アニメやアクション映画を観て、新しい世界、希望を感じ取っていました。自分もそうした作品に出ることで、希望を与えられるのではないかと思ったんです。少し美化し過ぎた言い方かもしれませんが。子供の頃のアクションヒーローですか? ブルース・リーはもちろんですし、ジャッキー・チェンとはいまでは義兄弟のような関係ですが、中学の頃から思い出があります。中学生のときに『酔拳』を観て、その帰りに買った日記帳の1ページ目に『ジャッキーのようになりたい』って書いたんです(笑)。彼にその話をしたら面白がってました」。
来年“不惑”と言われる40歳を迎えるビョンホンだが、今後思い描く俳優人生について聞いてみた。
「ありきたりな答えかもしれませんが、年齢を意識したことはありません。そのせいで、いまだに子供っぽいところが残っていたりして、突拍子もない行動をしてしまうのかもしれないですね(笑)。(ハリウッド進出を果たし)新たな段階に足を踏み入れたのかな、とも思いますが、自分は俳優として長く韓国を拠点としてきました。それは今後も変わらないでしょう。もちろん、この映画を気に入っていただけて、ハリウッドの方に再び声を掛けていただけるなら、断る理由はないですね」。
スクリーンの中での“狂気”をも漂わせる姿とは打って変わって、笑みを絶やさず気さくにこちらの質問に答えてくれるビョンホン。日本のエンターテイメントに話が及ぶと、こんな打ち明け話も!
「中学生の頃に初めて(映画雑誌の)『SCREEN』や『ROADSHOW』に出会いました。といいますか、映画の1シーンとしてセクシーな写真が載っていて、みんなで破れそうになるくらい奪い合ってました(笑)」。
にわかに想像しがたいが…この男、我々に見せていない秘密をまだまだ抱えているのかも――? 今後、日本での活躍にもぜひ期待したい。