映画見る前はね、ちょっとだけ心配してたんですよ。
だってほら、巨大ロボット同士の迫力ある戦闘シーンが売り物の「トランスフォーマー2」とか、人間そっくりのターミネーターと人類が戦う「ターミネーター4」とか、宇宙での艦隊戦とクルーの人間模様がおもしろい「スター・トレック」とか見たあとの公開じゃないですか、「G.I.ジョー」。
見劣りしちゃったら、というよりも、どこかで見たよな感じだったらちょっと残念かな、って。
ところが!
冒頭のシーンがこっちがぼんやり思い描いていたものとは完全に別物なもんで、
「は? これがG.I.ジョー?!」
と、いきなり映画に鷲掴みにされてしまいました。
いやあれは、「つかみ」というより完全に「ねじ伏せ」られた感じですわ。ソマーズ監督にしてやられたというか。
このソマーズ監督って、今まで「ハムナプトラ」とか「ヴァン・ヘルシング」とか過去の世界でのアクションを撮ってたので、近未来はどうかな、とも思ってたんですよね。「ハムナプトラ」では飛行機や気球までは出てきてましたけど、スピードが全然違うじゃないですか。
でも心配したアタシがあほ。
最初に戦闘機が飛んできた瞬間から、「トランスフォーマー」や「ターミネーター」や「スタートレック」なんて脳裏によぎりもかすめもしない、完全なソマーズオリジナルの映像美。
「G.I.ジョー」は「G.I.ジョー」として完全に一つの世界を築いてました。
「トランスフォーマー」同様おもちゃが元になった映画ではあるんだけど、そもそもが男の子向けお人形といってもいいアクションフィギュアの世界ですから、「G.I.ジョー」チームの皆さんは皆さんお人形のように可愛らしい顔と、頭が小さくて手足の長い抜群のプロポーションの持ち主なのですね。
デューク役のチャニング・テイタムなんて、あんまりお顔が可愛いものだからハクをつけるためにわざと傷を入れたメイクにしたんじゃないかって感じ。
とはいえアクションはお人形の比ではありませぬ。
飛ぶ! 走る!! そしてぶつかる!!!
――ぶつかってたのは主にリップコードですが、彼がぶつかるたびにリアルな衝撃を座席にいながら感じるようで、ほとんど遊園地のライドに乗ってる気分。まあよくぶつかってましたね、ほとんどギャグ。
子役の子ども達もソマーズ監督好みで可愛く、かつ強いこと! スネーク・アイズの子ども時代の子は去年「トロピック・サンダー」で見たような気がします。うん、あの頃から強かったし。
ソマーズ監督常連の「リック」「ベニー」「イムホテップ」も要所要所で顔出ししてくれて、同窓会気分も味わえます♪
それに思いがけずイ・ビョンホンの出番が多くて嬉しかったですね~♪
チャン・ツィーイーのハリウッド・デビューも悪役で、その時は英語のセリフが数えるほどしかなくて役としてもお飾りが精々だったので、ビョンホンもそうだったらヤだな~と心配してたんですよ。
もう、ぜんっぜん! ホント、心配したアタシがあほ。
イ・ビョンホンてば英語のセリフ上手! 流暢というのではないけれど、自分の言いたいことは何でも言える感じで、英語のセリフにもきちんと感情が入っていてよかったです。
出番も多くて~♪
しかも一人だけ真っ白だから目立つ目立つ!!
悪役としてこれだけ存在感を示してくれたら言うことなしですよ。
不思議なことに極悪非道の悪役のはずなのに、どこか清冽な雰囲気が漂ってるんですよね。悪人であっても卑しくはない。ストームシャドーから一種の潔さみたいなものを感じられるのは、イ・ビョンホン本人の裡から滲み出るものがそうだからなのでしょうか。
レイチェル・ニコルズとシエナ・ミラーの美女二人のアクションも華があってよかったです♪
特にシエナの演じたバロネスの最後の姿に心うたれましたね。ええ、子どもも見る映画はこうでなくてはいけません。
夏休みのファミリー映画はこれで決まり!
――といいたいところですが、私が行った日の観客にファミリーはいませんでしたねえ。
イ・ビョンホン目当てのオバサマ方と、子どもの頃「G.I.ジョー」で遊んだと覚しき心は男の子達の真っ二つに観客層が分かれてたような。
ま、とにかく一点非の打ち所のない娯楽大作に仕上がっていたので、この映画、見る価値ありますよ!
――あ。
一点だけ非があったのを思い出した。
子ども時代のストームとスネークが暮らしてた近未来から「20年前の東京」。
あれ、絶対に東京じゃないから!