映画インタビュー:「トランスポーター3」ネッパーに聞く
「最後の戦いは痛みの中で成功させた」
しぶいっす~~~♪
「レオン」のリュック・ベッソン監督が製作・脚本を務めた人気アクション・シリーズ第3弾「トランスポーター3 アンリミテッド」(オリビエ・メ ガトン監督)が公開された。車から20メートル離れたら爆死するというわなを手首に仕掛けられた運び屋フランク・マーティン(ジェイスン・ステイサムさ ん)が、愛する女性を守り、国家を揺るがす“赤い代物”を運び届けるという物語。ロバート・ネッパーさんが、元テロ対策部隊の隊員で、いやがるフランクに わなまで仕掛けて仕事を受けさせる謎の依頼人ジョンソンを演じた。
米ドラマ「プリズン・ブレイク」の悪役“ティーバッグ”で知られるネッパーさんに話を聞 いた。
--出演するきっかけは? オファーが来た時にどう思いました?
以前に「ヒットマン」という映画に出演したことがあって、その映画はブルガリアで撮影されて、その時すごく楽しかった。そのころはドラマ「プリズ ン・ブレイク」にレギュラー出演していて、1年の大半がその撮影に当てられていた。ドラマは日本でも大人気だよね(笑い)。テレビの撮影が3カ月だけ休み に入るんだけど、オフの間も仕事がしたかったから、ブルガリアに行って「ヒットマン」の撮影に参加したんだ。その後、「ヒットマン」のPRのために、07 年11月にパリに行った時に、(今作の制作総指揮の)リュック・ベッソン監督に会ったら「トランスポーター3」について話してくれた。元々ベッソン作品の ファンなんだ。
--リュック・ベッソンさんに会ったときの感想は?
リュックのすごいところは、普通はどの国の文化でも、それぞれの様式があったりする。会話の仕方でも、例えばアメリカだと、初対面からいきなりス トレートに面と向かった感じで入り込んでいく。パリでプロモーションしていた時に思ったのは、フランスは話す時に至近距離では話さないんだ。でもリュック と僕は、キスできるくらいの距離で鼻をこするように会話をする。「この作品についてどう思う?」「面白いと思うよ。悪役もやりがいがあるし、良い映画だ し、ジェイスンのことも好きだし……」と、すぐに意気投合できたよ。この役を演じるのは楽しいと直感した。ちょうどアメリカでは脚本家たちのストライキ中 で「プリズン・ブレイク」の撮影ができなくて、仕事しなきゃと思っていたら、パリで映画の撮影ができるなんて、すてきな経験になると感じたね。フランスで も“ティーバッグ”のことがみんな大好きで、どこにいっても「ムッシュー・ティーバッグ」と呼ばれていたよ。呼び捨てじゃないんだ。あんな野郎に敬意を表 してくれたよ。パリでロックスター気分を味わえて楽しかったね。パリ中で映画の撮影ができて本当にエキサイティングだったし、ジェイスン・ステイサムとい うすばらしい俳優と仕事ができて良かった。
--ステイサムさんと共演していかがでした?
とにかく最高なやつだよ。彼は既に2本の「トランスポーター」シリーズに出演して、3作目ということは、本当に全力を注いで今までをしのぐ作品に しなくてはならなかった。対抗する悪役だって満足のいく相手じゃないといけない。スポーツと同じ。どんな競技でも、対戦相手はレベルが見合ってないとね。 ジェイスンは出会って一瞬にして、僕が価値ある対戦相手だと分かってくれたよ。僕は彼が投げてきたボールをしっかりキャッチして、即座に反応して投げ返し てくる。本当にいいスポーツの試合しているようなもの。すぐに通じ合えたね。いい飲み友だちでもあったこともプラスだったと思うよ。
--ジョンソンは頭脳派であると同時に極悪人ですね。
極悪人のつもりはなかったんだよ。自分の思い通りに物ごとが進めば、悪人になることはないんだよ。まあ、世界中のお父さんみたいなものだよ。お父さんの言う通りにしていれば、お父さんは怒らないでしょ。
--役を演じる上で何か難しいことはありましたか? また特別な準備はしましたか。
難しいことはなかった。不可能ということもなかった。ただ、クライマックスの電車内でのアクションシーンは準備が必要だった。俳優同士は始める前 にお互いを見つめて「こいつはちゃんとボールが投げられるのか?」「うん、投げられる」と確かめ合う。それは役柄上でも、確かめ合ってボールを投げ合わな くてはならない。そして最後に2人のバトルにつながっていくわけだけど。映画の中でフランクは何度も戦いをしてきたわけで、どれも文句のつけようのない相 手だった。でも僕と戦うラストのバトルは、まさに映画のクライマックスであって、入念な準備が必要だった。フランクが3発殴れば倒れるような相手ではいけ ない。相当手ごわい相手でなくてはならない。僕は、あの最後の戦いが今までの中で最高なものにしたかった。2日かけてシーンを撮ったよ。あんなバトルは初 めてだった。まるでダンスの振り付けみたいに、全部の振りを覚えないと、本当に誰かが鼻血を出すか、骨折しちゃうからね。あのシーンを成功させ、リアルに 見せるのは、精神的にも肉体的にもチャレンジだったよ。
実は最後のバトルの前に足を痛めてしまってね。けがを抱えながら、最後のバトルシーンを撮らなくてはならなかった。キックしたり、殴られたり、殴 り合いのフリをしていない時は、ずっと椅子に座って、足をアイシングしていたよ。どうかこの撮影を切り抜けられるように常に祈っていたよ。僕は舞台出身 で、「The Show Must Go On(ショーは続けなければならない)」という精神の持ち主なので、撮影のスケジュールを変更することは不可能 だと分かっていたから、やるしかなかった。激しい痛みの中でこれを成功させるのは僕にとって非常に大きなチャレンジだった。それが役作りの上で最も大変な ことだったかな。
--「プリズン」以降、悪役を演じることが多いと思いますが、今後どんな役柄を演じたいですか?
「プリズン・ブレイク」が終了した時に、「よし、しばらく待ってみよう。自分にとって完ぺきに演じたい役柄が来るまでとにかく待とう」と思った。 その時、僕にとって理想的だったのはコメディーだった。みんなが共感できる奴でユーモアがあるような役。待って、待った。だけど僕が待てる限界は数カ月。 たくさんのオファーを断ったし、映画のオーディションを受けたり、新しいテレビシリーズのパイロット版も検討したけれど、どうもしっくりこなくて。突然、 テレビドラマ「HEROES/ヒーローズ」の話が舞い込んできて、そこで毎週出演のレギュラーではなくて、定期的に登場する準レギュラーとして出演してい たけど、4、5話目くらいで、レギュラーになった。そして、うれしいことに、最近「In the Belt」という作品でコメディーの役ももらえたから、 スケジュール的にその仕事を11月下旬か12月に受けられるように調整できればいいんだけど。とにかく仕事が大好きで、これからも俳優という仕事を続けた い。俳優とはさまざまな役柄を演じるということ。でも同時に働かなきゃいけなくて、今は悪役の仕事が多いから、それを受けるのは当然だし、全然かまわない と思っている。それにコメディーをやりたいという願いはかなったわけだしね。
--例えば「トランスポーター」のようにアクションヒーローなんてどう?
ノーサンキューだね。ジェイスンの体を見ただろ? すごく鍛えているよね。あそこまでの鋼のような体を作るには、相当鍛錬し、自分に厳しくなくて は成しえない。あれを目の当たりにすると、僕は演じることに徹しようと思ったよ(笑い)。例えば、その辺を歩いている普通の人が、突然超人的なパワーを持 つ役なら演じてもいいけど、僕はそこまで肉体を鍛錬する能力に長けてない。ジェイスンはあの(主人公のフランク・マーティンのような)マインドにフィット したすばらしい肉体を持ち合わせているから、彼がスーパーヒーローを演じ続けるべきだよ。
--この映画に出て良かったことを挙げてください。
ベスト1は、プロデューサーのリュック・ベッソン。次にすばらしいことは監督のオリヴィエ・メガトン、彼は今や僕の良き友人となった。そして3つ 目は、ジェイスン・ステイサム。4つ目に良かったのは、フランスで撮影できたこと。僕の第2の故郷だね。フランスもパリも大好きなんだ。パリで撮影できた し、郊外のヴィシーでも撮影できた。昔行ったことがあるような、住んだことがあるような気になるんだ。パリ、そしてフランスは“ティーバッグ”として僕を 知っていてくれたから、愛に満ちていたんだよね。仕事が好きだと職場に行くのが楽しくなる。フランスで仕事をするのは特別にいいね、フランスの人々に愛を 感じながら仕事していたから。演技をするには最高の環境だったんだ。
<ロバート・ネッパーさんのプロフィル>
1959年、米オハイオ州生まれ。幼いころから演劇に興味を持ち、ノースウエスタン大学で演劇を学び、ブレイク・エドワーズ監督「That’s Life」(86年)で映画デビュー。その後、「ホステージ」(05年)、「グッドナイト&グッドラック」(05年)、「ヒットマン」(07年)、「地球 が静止する日」(08年)などに出演。05年から出ているテレビドラマシリーズ「プリズン・ブレイク」の残忍なティーバック役でブレークした。