「96時間」公式サイト

「娘のためならエッフェル塔でも倒してみせる!」
と言い切ったのはリーアム・ニーソン演じる主人公のブライアンですが、映画を見ていると本当にエッフェル塔ぐらい倒してよし! という気分になるから不思 議です。「96時間」を見たあとで「G.I.ジョー」を見たなら、イ・ビョンホン演じたストームシャドーに対して「よぉ~し、よくやったーー!!」とガッ ツポーズで声援送りたくなるかも。

映画の中でエッフェル塔こそ倒さなかったものの、リーアムとーちゃんの八面六臂の活躍ぶりは加速スーツつけたG.I..ジョーのチームメンバーよりよっぽどスピード感ありましたよ。

「96時間」というのは日本でつけたタイトルなので、こういうタイトルにありがちな「タイムリミットまであと○○時間」といった見せ方は全然ないです。そんな悠長な事やって無駄に焦る時間が惜しい、って感じですね。

一瞬の躊躇も遅滞もないという点では「ボーン」シリーズに似てますが、「96時間」のブライアンはその上に情けも容赦もない。お父さん、敵に対してはゴルゴ13よりまだ非情です。

ストーリーとしては「ダイ・ハード4.0」で娘を拉致されたあとのジョン・マクレーンの行動なんですよね、言ってみれば。マクレーンは犯人を知ってたのに対し、ブライアンは誰が娘を誘拐したのかが分からないという違いはあるにしろ、娘の居場所を探し出して救出に向かう、邪魔するヤツはぶっ殺す、というスタンスに変わりはないわけで。

だから言ってみれば、「96時間」には捜査はあっても謎解きはない。疑問は次々に出てくるけれど、それをどんどん解決しながら娘に一歩一歩近づくだけで、立ち止まって逡巡とか振り返って後悔とか一切ありませんから。それがこの映画のスピード感をさらに加速させているんですね。

このお父さん、しかも組織にも法にも縛られてないからやりたい放題。
それを観客に違和感なく受け入れさせるのがリーアム・ニーソンの存在感と演技力です。瞠目すべし。

映画の冒頭ではブライアンが現在何故こういう生活をしているのか、過去にどういう仕事をしていたのかを無理なく無駄なく多少しつこいぐらいに見せてくれます。どれだけ娘を深く愛してきたかも。言葉よりも雄弁にブライアンのまなざしがそれを語っているのですよ。そういう場面ではまた時間も少しゆったりと流れています。

それが最初、彼が娘を溺愛するあまり異常なまでに心配性になったお父さんに見せているのですね。観客の方は「あー、このお父さん、ちょっとイタイ」とか「やれやれ、何やってんだか」とか、微妙に主人公を正視するのが辛い状況で椅子の中で一歩引いてる感じで見てるんですよ。

ところが!

正しかったんですね~、お父さんの言うことは!

ブライアンの心配していた事がまさに的中したもので、観客、俄然居ずまいを正してスクリーンに身を乗り出します。その時にはもう映画にすっかり引き込まれて、あとはノンストップアクション一直線、集中力が途切れることなくエンディングまでブライアンと一緒に突っ走るだけ!


とにかくおもしろいです。
「96時間」というのは何時何分という決められたタイムリミットではなく、娘の救出に使える時間がそれしかないということ。余分な事に費やす暇などないという切迫感がブライアンの捜査ぶりからひしひしと伝わって来て、観客のスリルをあおります。謎解きがないので観ていて悩むということもないし。

是非劇場でご覧下さい。