白土三平の傑作コミックを、崔洋一監督、宮藤官九郎の脚本で実写版映画化した『カムイ外伝』(9月19日公開)。主人公カムイを演じた松山ケンイチ は、演じる役柄が乗り移ったようにのめり込む“憑依型”アプローチをする役者として知られるが、今回もどっぷりとカムイになりきったようだ。
忍者の組織を裏切り“抜忍”となったカムイを演じるため、松ケンは今回1年という準備期間をかけてアクションと役作りに挑んだと言う。
「難しかった のはアクションよりもカムイの“佇まい”の演技です。侍ではないから決まった所作もないし、忍者といっても抜忍になってしばらく経ってからの物語だから、 型にハマってない自由な感じがしたので。崔監督からは、カムイの孤独さを出してくれと言われました」
撮影でいちばん辛かったのはどんな点だったのか。
「カムイがもってる寂しさや猜疑心の感じがすごく苦しかったです。やっぱり現場でやっていくうちに (他の俳優陣と)どんどん仲間意識が出てきて、絆も強くなっていくなかで、お芝居はそうではなくて。そういう(カムイの)デリケートな部分を表現しなくて はいけなかったから、かなりヘビーでした」
“憑依型”俳優の松ケンゆえに、現場にいる間はずっとカムイだったということか。
「もちろんオンとオフの切り替えはありますが……、カムイは重かったですね」
では、そんなヘビーな状況から逃げ出したいと思ったことはないのだろうか?
「いや、それはないです。やっぱり自分が楽しいからやってることなの で。もちろん辛いこともありますが、本当に辛かったらやめてますよ。僕はそういうふうに我慢できる人間ではないので。いまは充実しているからすごく幸せで す」
最近プライベートでは何か芸を身につけるべく努力しているという松ケン。
「ただ自分の身体ひとつで(役者を)やっていくだけだと、どこかで(役者と して)面白くなくなってくるんじゃないかと思ってるから、いろいろと“材料”がほしいなと。いまテニスをやっているんですが、これもアクションの動きなど で使えたりするかなと試してみたりして。日本の舞踏や、友達がやってるアイススケートもやってみたいし、楽器もやりたい。いろいろ興味はありますよ」
ノリにノッている松ケン。いまはいろんなものを吸収し、役者としてさらなる飛躍をする時期なのかもしれない。そんなまっしぐらな姿勢が、多くの監督 から愛されるゆえんだろう。『カムイ外伝』では、キレのある“動”のアクションだけではなく、カムイの“静”の佇まいの演技にも注目してもらいたい。