いよいよ来年度の第82回アカデミー賞に向けて報道陣向けの取材パスの申請などが開始され、それと同時に業界内のアカデミー賞レースも静かに白熱しつつあり、ハリウッドがにわかに活気づいてきた。
さて、偶然にも時を同じくしてハリウッドが熱くなっているのが6月に急逝してしまったマイケル・ジャクソンさんの最期のドキュメンタリー・フィル ム『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』である。限定公開で火曜日から、そして週末までには全米公開が予定されているこの作品は、ファンはもちろんのこと映画評論家たちもこぞって誉めそや しており、インターネット映画前売りサイトのファンダンゴではすでに1,000上映分が売り切れというマレな売れ行きを見せている。
この事実に加えてアカデミー賞シーズンとくれば、当然のことながら、『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』はアカデミー賞にノミネートされるのか……という疑問がわいてくる。実はこの作品のオスカー受賞への道のりは現在のところ茨の道だ。『マイケル・ ジャクソン THIS IS IT』は当然のことながらドキュメンタリー作品。よってオスカーでもドキュメンタリー部門としてノミネートされるのが妥当な線。ところが……迷路のように 入り組んだアカデミーのドキュメンタリー部門応募規定によると、候補になるためには『そのドキュメンタリー作品がアカデミー賞の行われる前の年の8月31 日前までにニューヨークかロサンゼルスで7日間劇場上映されていなければならない』という決まりがある。ご存知のように、マイケルの映画は今週封切られた ばかりでアカデミーのノミネーション規定に該当しないのである。
最悪、2011年に行われるオスカーを狙うという手もあるが、熱いうちに打たないと冷めてしまう鉄と同様、映画もある意味時期を逸すると冷めてしまう。よって、2009年にヒットした作品を2011年のオスカー戦線に参戦させるのではちょっと……という感じなのだ。
唯一残された道は、栄えあるアカデミー作品賞ねらいである。だがこの路線も茨の道で、過去にアカデミー作品賞に出品して成功したドキュメンタリー 作品は見当たらない。というよりも、『フープ・ドリーム』や『華氏911』の例を見てもわかるように、むしろ惨たんたる結果に終わっている。カンヌでパル ムドールを受賞した『華氏911』ではあるが、アカデミーには見向きもされていない。
今までの5作品から候補作品が10作品に増えることになっているアカデミー作品賞だが、『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』のアカデミー賞レースでの動向に注目が集まる。
映画『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』は10月28日より丸の内ピカデリーほかにて全世界同時公開