>ゴジラ』(54)や『キングコング』(76)といった名作も今は昔。CGの発達にともない、衰退の一方と思われた“着ぐるみ”分野に、なんと『マル コヴィッチの穴』(99)の奇才スパイク・ジョーンズ監督が新規参入! かつてない生命感あふれる着ぐるみを開発、まったく新しい“かいじゅう”映画を生 み出した。
それは、やんちゃな少年と7匹のかいじゅうたちとの冒険を描くファンタジー『かいじゅうたちのいるところ』(2010年1月15日公開)。これまで 独自のイマジネーションと圧倒的なオリジナリティーで観客の度肝を抜いてきたジョーンズ監督は今回、着ぐるみ映画の常識を捨て、新たな手法を編み出した。
その手法とは、映像を撮影してから声を当てるという従来の順序を逆にしたもの。まずフォレスト・ウィテカーら声優たちをスタジオに集めて実際にシーンを演じさせ、発せられた台詞をその場で収録。その臨場感に満ちた自然な声に着ぐるみの演技を当てた。
実はここにも秘密があって、着ぐるみは内側から操作できるパペット型になっており、270cm超の大きさにも関わらず滑らかな動きが可能になったのだ。その結果、顔の動きの微調整以外にCGは使われていない。
こうして完成したかいじゅうたちは、感情豊かで性格もさまざま。皮膚や毛の質感はもとより、生々しい息遣い、体温までが伝わってくるようだ。三頭身のキモかわいいビジュアルと相まって、一度見たら忘れられないインパクト。さすがジョーンズ監督、またしても驚かせてくれた!
耳まで裂けた大きな口で笑ったり、飛び出しそうな目玉からポロリと涙をこぼしたりといった、かいじゅうたちの生き生きとした表情に引き込まれ、子供 はもちろん、大人もいつのまにか童心に返ってかいじゅうたちと一緒に遊んでいるような気分に。親から子へと読み継がれているモーリス・センダックの世界的 ロングセラー絵本が原作だけに、幅広い観客の心をわしづかみにすることだろう。