>元俳優の押尾学容疑者(31)による麻薬取締法違反事件で、警視庁捜査1課は7日、同法違反(譲渡)などの疑いで押尾容疑者ら3人を逮捕した。押尾 容疑者は合成麻薬MDMAを一緒にマンションの部屋にいた飲食店従業員田中香織さん=当時(30)=に譲り渡した疑い。田中さんはMDMAの使用後に異変 を起こして死亡したとされており、捜査1課は押尾容疑者が保護責任者の立場にあったとみて、保護責任者遺棄罪などでの立件へ向け追及していく構えだ。
逮捕状が出てから3日。押尾容疑者は7日午後4時すぎ、横浜市内で身柄を確保され、同5時36分頃、シルバーのワゴン車で警視庁麻布署に移送され た。白いTシャツに茶色のコートを羽織り、後部座席の中央に座ってぶ然とした表情。無数のフラッシュを浴びても顔を隠すことなく、同署に入る際には眉間 (みけん)にしわを寄せていた。
逮捕容疑は8月2日、港区のマンションの部屋で、持ち込んだMDMAを田中さんに渡した疑い。押尾容疑者は容疑を否認している。
捜査1課はほかに、押尾容疑者にMDMAを渡したとして同法違反(譲渡)容疑で知人の衣料品販売業泉田勇介容疑者(31)を、田中さんの携帯電話 を捨てたとして証拠隠滅容疑で元マネジャーの無職遠藤亮平容疑者(28)をそれぞれ逮捕した。遠藤容疑者は調べに「スキャンダルを隠し、押尾さんをかばお うとした」と供述。2人は新宿区で身柄を確保された。
捜査1課によると、押尾容疑者と田中さんは8月2日、部屋でMDMAを飲み、田中さんは同6時半頃、容体が急変。押尾容疑者は119番せず、友人 らに連絡。駆けつけた遠藤容疑者らが午後9時19分に通報し、救急隊員が同27分に死亡を確認したが、押尾容疑者は既に別の部屋に立ち去っていた。
MDMAを使用したとして麻布署に逮捕され捜査をしていたが、殺人などの凶悪犯罪や特殊犯罪を扱う捜査1課は、押尾容疑者がすぐに通報するなど適 切な救命措置を取らなかった点を重視。押尾容疑者は使用罪の公判で「女性からもらった」と供述していたが、同課は押尾容疑者がMDMAを入手し、部屋に持 ち込んだと判断した。
法曹関係者らは押尾容疑者が譲渡したとすれば田中さんを保護する責任の度合いが強まると指摘。捜査1課は保護責任者遺棄罪、または同遺棄致死罪で の逮捕まで視野に入れて捜査していくとみられる。同遺棄致死罪で立件された場合、著名人が被告となる初めての裁判員裁判となる可能性もある。
押尾容疑者は11月2日、使用の罪で懲役1年6月、執行猶予5年の判決を受け、その後は知人がいる横浜市などを転々として生活。周囲に「オレはど うなるんだ。(捜査は)終わりじゃないの?」などと動揺していたという。譲渡罪では29日頃起訴される見通し。保護責任者遺棄容疑で再び逮捕される場合は 年明けになるとみられ、押尾容疑者は“塀の中”で年越しすることになる。