シネマトゥデイ より(以下一部抜粋)

>各方面でさまざまな論議を醸している行政刷新会議による事業仕分けだが、早くも映画関係に影響が出ている。その一つが、金沢コミュニティシネマ主催のこども映画教室だ。

 同ワークショップは年間約120万円の運営費のうちの8割を独立行政法人・国立青少年教育振興機構(文部科学省)による子どもゆめ基金の助成を受 けていたが、「国でやるべき意義が見られない」などの理由で廃止の審判を下された。子どもたちの映画離れが叫ばれる中、映画の未来のために粉骨砕身で活動 してきた人たちに間では、無念の声が広がっている。


 こども映画教室は、「子どもたちに映画を好きになって欲しい」という願いから2004年にスタート。映画上映のほか、毎年春には著名監督たちを講 師に招き、企画から上映までを子どもたちが主体になって映画製作も実施。これまで、『トントンギコギコ図工の時間』の野中真利子監督、『ナビィの恋』の中 江裕司監督、『空気人形』の是枝裕和監督、『コドモのコドモ』の萩生田宏治監督とそうそうたる面々が子どもたちと触れ合ってきた。来年3月には、『ユキと ニナ』の諏訪敦彦監督が講師を務めることが決定している。子どもたちは事前に映画を観賞し、監督に感想文を提出するという宿題に勤しむことになるが監督と 直接交流できる貴重な機会だけに、その矢先の非情なニュースだった。


 金沢コミュニティシネマの土肥悦子さんは「子どものためだけでなく、『映画が好きな男が子どもと出会う場』という意義もある。是枝監督は自身の講 師料から捻出して、スタッフを連れて参加してくれました。今年度(来年3月まで)の運営費は金沢工業大学の支援もあり何とかまかなえますが、来年度以降は どうなるか……。このままでは参加費(4,000円)を値上げせざるを得ないかも」と声を落とす。現在、新たなスポンサーを見つけるほか、立ち上げたサ ポーターズ・クラブ(1口3,000円)の会員を募って継続の道を探っている。


 同様に、子ども夢基金を活用して映画館での観賞会やワークショップを行っている団体は多い。ボランティア有志が集まって都内で活動している「ちい さなひとのえいががっこう」も、年間運営費約40万円と額は少ないが、うち30万円を子ども夢基金に頼ってきたため事態は深刻だ。ちいさなひとのえいが がっこうの岡崎匡さんは「財政面での打撃とは別に、私たちのような小さな民間の活動体やNPOにとっては切り捨てられたという事実の方が精神的な打撃とし てしこりが残ります。(廃止決定は)あまりにも性急な印象が強く、『それは学校やほかの機関で実施すればよい』と大雑把に仕分けられたことに無力感を感じ ます」とコメント。今後は手弁当でも、自分たちの目標に沿った活動を続けていくという。


 そのほか、行政刷新会議は「芸術は自己責任」や「政策効果が不透明」などの理由で映画産業にかける予算の縮減及び整理を求めた。それにより、 JAPAN国際コンテンツフェスティバル(コ・フェスタ)は、「コンテンツ、生活関連産業に対するイベント支援」(経済通産省)に含まれ、予算3分の1を 削減へ。また、東京国際映画祭などの各映画祭や一部の映画製作は芸術文化振興基金の助成を受けているが、事業を行っている日本芸術文化振興会(文部科学 省)も予算削減だ。


 また過去に、中田秀夫監督が英国、崔洋一監督が韓国、諏訪敦彦監督が仏へとそれぞれ留学し、その後の飛躍へとつながった新進芸術家海外派遣制度 も、予算要求の縮減の「芸術家の育成など」(文部科学省)に含まれている。仕分け人が指摘した通り、確かに、こうした国際交流事業は、国際交流基金(外務 省)や小泉純一郎政権の支援を受けて設立されたNPO法人映像産業振興機構(VIPO)(総務省・文部科学省・経済産業省など)と重複する部分が多く、扱 う省庁もバラバラで整理・連携が必要だ。しかし、お隣り国が韓国映画振興委員会(KOFIC)を設立し、国家ぐるみで製作支援や助成を積極的に行っている 状況と比較すると、日本の文化・芸術に対する理解度の低さには悲しいものがある。


 芸術文化振興基金から助成を受け、第10回大会が盛況のうちに終わったばかりの東京フィルメックス映画祭のディレクター・林加奈子さんは「アート フィルムの劇場公開が厳しい今、私たちのような映画祭で紹介出来ればと思うが、日本の配給会社が買い付けしていない分、フィルムの取り寄せや字幕制作の負 担がこちらにかかることになる。来年の準備はもう始まっており(助成削減の)覚悟はできているが、何とか現状維持をお願いしたい」と切実に訴えてい る。(取材・文:中山治美)


なお、金沢・こども映画教室サポーターズ・クラブの問い合わせは、
シネモンドTEL(076)220-5007。または、mail@cine-monde.com



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公的費用で子どもの情操教育の予算が出せなくなっていくと、いずれ芸術関係の素養を身につけられるのは親の資産にゆとりがある家の子ばかりになって、貧富の差による教育の格差がますます広がっていくことでしょうね。

貧乏人の子は絵も描けず歌も歌えず映画も見られないような世の中になったら、きっと人心はすさむわね。

まあたぶん、日本ならゲームメーカーが代わりになるようなものを開発するんだろうけど、子どもの情操教育がゲーム任せになったら、それこそ世も末だわ。