Yahoo!ニュースより(以下一部抜粋)

 北海道夕張市の財政破綻(はたん)により一時、中断の危機に立たされた「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」が今年、20回目の節目を迎える。運営 体制を市中心から民間中心に変え、「奇跡の復活」を遂げて3年目。2月25日から始まる今年の映画祭では、ゲストに山田洋次監督や俳優の小栗旬さんらを迎 え、さまざまなイベントを行う予定だ。映画祭開催の中心となって地元で活動している映画祭ディレクターの澤田直矢さん(42)に話を聞いた。(加納洋人)

 --今年は20回目の記念すべき年です。

 「財政破綻の街ということで夕張のイメージは良くないかもしれない。そんな街で、華やかとはいえないかもしれないが、にぎやかに、楽しそうにやっていることを全国に発信していきたい」

 --今年のテーマは「行こうや。ゆうばり」。山田洋次監督の「幸福の黄色いハンカチ」(昭和52年)のセリフから取った。

 「今年公開の米ハリウッドの完全リメーク版『イエロー・ハンカチーフ』と、高画質処理した『幸福の黄色いハンカチ デジタルリマスター』を全国公開に先 駆けて、映画祭で上映します。世の中の経済情勢が相当厳しい中、この映画が持っている『しあわせって何だろう』というメッセージを夕張から発信していきた いという思いです」

 --山田監督のほか、多彩なゲストが参加する予定ですね。

 「山田監督のトークショーのほか、『シュアリー・サムデイ』を初監督した俳優の小栗旬さんや小出恵介さん、小西真奈美さんらによる舞台あいさつ付き上映 を計画しています。オフシアターコンペティション部門の審査員には、香港からジョニー・トー監督が加わる予定です。夕張らしいアットホームな雰囲気にした いと考えています」

 --映画祭は、市の財政破綻で平成19年に中断したが、翌20年に民間の力で復活した。復活の原動力は何ですか。

 「財政破綻で何でもカット、カットの流れが行政にできた。特に文化やスポーツは、最初にカットの対象となり、住民の間に『夕張市にこのまま住めるのか』 『自分たちの生活はどうなるのか』という不安が広がった。すぐ目の前の視界さえなくなるような状況の中で、映画祭は夕張の光だった。民間の力で、その希望 の光を復活させなければいけないと思いました」

 --復活に向け、多くの人々の協力があった。

 「一番大きかったのは、映画ファンやこれまで映画祭に参加してくれた映画人、市民ボランティアの後押しだった」

 --市が主体のときは憶単位の予算だったが、民間主体で予算規模は小さくなった。運営は厳しいのでは。

 「今年は約5000万円の予算で、最盛期の3分の1ほど。民間企業からの協賛金や北海道などからの補助金で賄っています」

 --毎年、多くの市民ボランティアが参加していますね。

 「ボランティアの参加がないと映画祭の運営は厳しい。民間主体になる前からずっと手伝ってくださっている方々がいますが、さすがに今年は20回目で、当 時、若かった方も今では60歳、70歳と高齢。そんな、お年寄りに触発されて、新たにボランティアに加わってくれる方がいます」

 --夕張市に明るい兆しはみえていますか。

 「観光客が増えている。主な理由は昨年の花畑牧場の工場の進出。新千歳空港から夕張を経由して、旭川の旭山動物園などに抜けるバスツアー客が増えた。JR夕張駅前にできた屋台村『バリー屋台』や一流シェフが総料理長を務める『夕張鹿鳴館』の開業も大きかった」

■澤田直矢(さわだ・なおや)

 昭和43年1月生まれ。夕張市出身。平成4年3月、小樽商科大学卒業。現在、イベント企画、観光業の「株式会社ネクスト夕張」社長。父親は夕張商工会議所会頭でゆうばり映画祭実行委員会の澤田宏一・実行委員長。

■ゆうばり映画祭(2月25日~3月1日)の詳細は、公式サイト(http://yubarifanta.com)。