オリコンビズオンライン より(以下一部抜粋)

公開以来、全世界の劇場を席巻している『アバター』が遂に『タイタニック』を抜き去り、全世界興収の歴代トップに躍り出た。日本でも興行ランキング の首位を独走し、公開1ヶ月で興収70億円を突破。同作品を配給する20世紀フォックス映画の担当者によれば、客層は10代後半~40代前半を中心に幅広 く、当初は懸念していた女性客の動員も好調で、男女比はほぼ半々だという。

■米国本社を説得し最大限の「露出」にこだわる

 若年層を中心とした“洋画離れ”が喧伝され、「ハリウッド超大作!」という売り文句だけではかつてのような集客が見込めない昨今の洋画興行にあっ て、なぜ『アバター』はこれほどまでに日本の観客を熱狂させたのか。作品の質の高さはもちろんだが、その理由のひとつとして前出の担当者は、「日本独自仕 様」にこだわった宣伝施策が功を奏した点を挙げる。


 ジェームズ・キャメロン監督の最新作にして実写3D大作ということで映画ファンの期待値がもともと高いことから、監督と米国本社は公開までなるべく情報を出さない、「非露出」のプロモーション戦略を展開する意向だったという。

 しかし、その手法では『アバター』を日本で大ヒットさせるのは困難と考えた日本サイドは、日本人の嗜好や映画鑑賞動向の実状を根気強く伝えて本社 を説得。日本向けにアレンジした素材を用いた、日本人の鑑賞意向に刺さるプロモーション展開の重要性を訴えた。その最たるものが、昨年11月中旬にオンエ アされた「90秒の長尺テレビCM3部作」。さらにこのCMを含め、海外の映画ファンなら“見せすぎ”と思うような日本オリジナルの予告編を制作するな ど、作品の内容や壮大な世界観、ストーリーが可能な限り伝わるようなプロモーションには徹底的にこだわったという。

 またストーリーの理解と同時に、ユーザーが繰り返し接することで、映画に登場する異形のキャラクターのビジュアルに“慣れる”ことにも力を注い だ。その点で大きな効力を発揮したのが、パナソニックの薄型テレビ「VIERA」をはじめとする各種の大型タイアップであり、こうしたパートナー企業のサ ポートの力も非常に大きかったと担当者は振り返る。


■業界全体の支援も加わり「3D」の訴求に成功

 『アバター』の3Dと2Dの客層比は8:2。この作品で3D映画を初体験したと語る観客も多く、想定した以上に3Dの魅力が浸透したことも大ヒッ トにつながった。3Dの訴求に関しては「3Dが映画を変える」というテーマのもと、『アバター』だけをアピールするのではなく、3D興行全体を盛り上げる 方向性でアプローチ。そのうえで革新的な映像世界を誇る『アバター』が「大人が楽しめる実写3D」であることを強調した。さらに興行サイドも対応スクリー ンを増やし、鑑賞料金の値下げに踏み切るなど、『アバター』公開を機に業界全体で3Dを支援したことも大きいと担当者は語る。

 今後は好調な動員を続ける3D興行のロングランを劇場側に働きかけながら、賞レースの行方や興行記録の更新などの情報発信を継続的に行うことで興収100億円突破を目指していくという。

 とかくキャメロン監督の手腕ばかりが称賛されがちだが、『アバター』宣伝の成功事例は、改めて大ヒットの陰にはそうなるだけの理由があることを示す格好の例と言えよう。