>1992年に放たれた問題作映画『バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト』をドイツの鬼才ヴェルナー・ヘルツォーク監督がリメイクした映画『バッド・ルーテナント』で、主演を務めるニコラス・ケイジに話を聞いた。
ニューヨーク・インディペンデント映画界で人気を集めるアベル・フェラーラ監督による問題作を、ヘルツォーク監督がニコラスを主演に招いてリメイ クした本作。ニコラスは警部補へ昇進する一方、ドラッグとギャンブルにおぼれる悪徳刑事を熱演。シリアスに演じているはずなのに、なぜか笑えてしまうとい うイメージがあった近年のニコラス。しかし本作ではその負のレッテルを払拭し、トロント映画批評家協会賞では見事主演男優賞に輝いた。本作のニコラスは、 オスカーを手にした映画『リービング・ラスベガス』以上の魅力がある。
『リービング・ラスベガス』では、アルコール依存症の脚本家を演じたニコラスだが、
「酔っていくつかのシーンを演じてみようとした『リービング・ ラスベガス』とは違って、今回はしらふでやりたかった」
と明かす。いくら役づくりとはいえ、ドラッグをキメるなどもってのほか。しかし劇中で、いるはずの ないイグアナの幻覚を見てしまうシーンのうつろな視線は妙にリアル。そのせいか
「しらふでやりたかった」
との発言には安堵さえ覚えてしまう。
舞台はハリケーン・カトリーナ後のニューオリンズ。ニューオリンズでの撮影は本作で5本目となるニコラスは
「ニューオリンズのような街は世界中ど こにもない」
とその土地特有の空気があると語る。そしてその空気はヘルツォーク監督の乱雑にも思える大胆な演出スタイルに見事はまっている。
「まったく新 しい映画なんだ。オリジナル版はもっとユダヤ・キリスト教的な物語が描かれていたし、僕はそれが好きだった。たがヘルツォーク監督となら、もっと深めるこ とができるだろうし、宗教観から脱して生身の人生観を描けると思った。ただの刑事映画にはしたくなかったからね」
とニコラス。
ヘルツォーク監督の演出とニコラスの狂気すれすれの熱演も相まって、オリジナル版を凌駕(りょうが)した本作。アメリカで最も影響力のある映画評 論家ロジャー・エバートが絶賛するなど、高い評価を得た。ニコラス自身も
「観客に『あれは一体何だったんだ!?』と言われたい。そしてもう一度観に行って ほしいね」
と確かな手応えを感じているようだった。
映画『バッド・ルーテナント』は2月27日より恵比寿ガーデンシネマほかにて全国公開