>映画『ハート・ロッカー』が作品賞を含む3冠を果たし、キャスリン・ビグロー監督が女性として初の監督賞受賞というおまけまでついた第82回アカデミー賞だが、大幅な視聴率アップにはアカデミー賞関係者も大喜びだ。
テレキャストが報じたところによると、今年のアカデミー賞の視聴者数は前年から600万人以上も増え、約4,200万人を記録した。今年は開催時 期がオリンピックと重なっていたことから開催を遅らせたり、司会を務めたアレック・ボールドウィンの体調が不安視されるという要素もあったが、懸念されて いた視聴率は2005年以降では最高を記録するなど、結果的には大成功だった。
成功の理由はいくつか考えられるが、やはりジェームズ・キャメロン監督の映画『アバター』の影響は大きい。賞レースでは残念ながら映画『ハート・ ロッカー』に水をあけられてしまったが、全世界で歴代1位の興行収入を獲得している『アバター』とキャメロン監督の元妻であるビグロー監督の『ハート・ ロッカー』が争う展開を男と女の意地のぶつかり合いとして世界中が行方を見守っており、この話題性が視聴率アップにつながったと考える向きは多い。
もう一つ、ザック・エフロン、マイリー・サイラスなど若者に人気のある若手の俳優陣をプレゼンターに起用したことも視聴者の年齢の幅を広げ、大幅 な視聴率アップに貢献したと考えられる。ジャーナリストのマイク・フレミングは「これは司会者のスティーブ・マーティン、アレック・ボールドウィンが若者 受けしないことを見据えての対応だろうね。視聴率アップという意味では成功だったと思うよ」と主催者の判断の正しさを認めながらも、「視聴層の低下はスポ ンサー離れにも繋がりかねない」と警告することも忘れなかった。だが今回は、司会者の二人が40代以上の年齢層に受けるキャラクターなので、バランスはと れていたのではないだろうか。
しかしこれら視聴率の話題について、今年から10作品に増えた作品賞の候補を理由に挙げた媒体はほとんどない。今回の作品賞が『ハート・ロッ カー』と『アバター』の一騎打ち状態であったことも関係しているだろうが、授賞式においても作品賞よりは主演男優賞、主演女優賞のほうが、発表前に候補者 たちへエールが送られるなど、「ショー」としての華があったように思う。だがアカデミー賞の話題の中心は作品賞であるはず。来年は、今年のように授賞式で 候補作品の紹介が省略されて即受賞作が発表という味気のないことにはならないように、ドラマチックな演出をお願いしたいところだ。
第82回アカデミー賞授賞式ダイジェストは3月14日、18:00よりWOWOWにて放送