毎日jp より(以下一部抜粋)


NHK連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」で、マンガ家・水木しげるさんを妻として支える布美枝を演じている松下奈緒さん。インタビュー2回目は、松 下さんに、撮影の苦労や理想の女優像などを聞いた。(細田尚子/毎日新聞デジタル)


 「山口智子さんの大ファンなんです」と話す松下さんは、昭和30~40年代の東京都調布市で、極貧生活をおおらかに乗り切る主婦を演じている。 「“朝ドラのヒロイン”といったら若くてフレッシュなイメージがあったので、(発表当時)24歳の私で大丈夫かなと思った」といい、88~89年に放送し た「純ちゃんの応援歌」で同じ年ごろで同じ年代を舞台にした朝ドラのヒロインを演じた山口さんの姿に触発される部分があったようだ。


 「役の話を聞いたときは、不安の方が大きくて、でもこの喜びをどう表現したらいいか分からないという感じだった。自分の中でもいままで感じたこと がない不思議な感覚でしたね」と振り返る。不安と同時に「選んでもらった以上は、(その気持ちに)打ち返すことをしていきたいなと思いました。私にできる 最大限のことをしたい、そう思って撮影に臨んでいると(充実していて)楽しいし、得るものも多いし、この年になって、自分でやってきたことは何だったんだ ろうと(自分を振り返り)ビビッドに演じられるようになりました」という。


 撮影前、水木さんと武良布枝(むら・ぬのえ)さん夫妻から激励を受けた。

「武良さんから『気負いなくやってください』と優しく言われて、それが逆 にプレッシャーになりました(苦笑)。武良さんは実際にお会いしたら、本のイメージよりもっと安心感を感じたというか、すごく言葉使いがきれいで、凛(り ん)としたたたずまいで、お会いしないと分からない魅力にあふれた方でした。ご夫婦でいるときも、大変な時期もうれしい時期も2人で乗り越えて来たがゆえ に、信頼し合い、今でも支え合っている、可愛らしくいとおしいご夫婦でした」と絶賛する。


 夫婦と対面して「いつも横にいて、ちゃんと目を見て話したり、笑い合ったりするのはすてきだなと。70、80代になられてますけど、気持ちがすご く若いなあと思いました」という。その姿を見て松下さんは、夫・茂役の向井理さんやスタッフと「半年以上、長い時間を一緒に過ごすので、ためこむことはし ないようにしよう、言いたいことは言い合おうね、とみんなでそう決めたんです」といい、「ずっと2人のシーンだったり、この人が今、何をやろうとしている のかをすくっていかなくてはいけない役ので、よく向井さんのことは観察しています」とカメラが回ってないときも夫婦のようにそばにいるようにしている。向 井さんのことを「スラッとしてまっすぐな感じがするんですけど、結構不可思議なことをするんですよ。そこがだんだん水木さんっぽくなっているように私には 見えます。雰囲気を作ってもらえると私の方もお芝居しやすい」と息も合ってきたという。


 布美枝は明るく難局を乗り切るタイプだが、松下さんは? 

「私は誰かに打ち明けたい、相談したいと思ってしまうので、誰かを頼ってしまいますけ ど、布美枝は悩んでいるところを見せないし、自分で解決していくのがすごくうまいなと思います。バイタリティーがあって芯が強く、ブレないものを自分の中 にちゃんと持っている人ですね。そういうところは見習いたいなと思います」と生き方にも影響を受けているようだ。


 歴代の朝ドラは山口智子さんが主演した「純ちゃんの応援歌」などをよく見ていたという。

「今回の『ゲゲゲの女房』と同じぐらいの年代の話で、世界 観や色合いが非常に近いので参考にしつつ、懐かしい気分で見直してみました」と話し、理想とする女優像も「山口さんのように、普段お会いしたときも役のイ メージとズレがない人」という。「それは多分、自然体で役づくりをされている、根がナチュラルな方なのではないかなと思うので、そういう方にはすごくあこ がれますね」といい、「30、40年、ずっと女優をやれたらいいな、息の長い女優、そして自然体で飾らない人になりたい」と語る。