5月12日(水)から5月23日(日)まで、第63回カンヌ国際映画祭が開催される。
今年の審査委員長はティム・バートン。毎年、コンペティションの審査の進め方は審査委員長に一任されているので、いったいどんな作品が受賞するか、 当てるのはなかなか難しい。
しかし、今年のカンヌが一体どんな気分で最終上映作品を選んだのかを知る方法が1つある。それは公式ポスターを読み解くことだ。
公式ポスターは第60回(07年)から総代表になったティエリー・フレモーが始めた映画ファンへの“謎かけ”である。第60回(07年)の「ジャン プ」は監督たちのジャンプする写真で構成された。「カンヌ映画祭は監督を重視する」という宣言だ。第61回(08年)は濃いサングラスをした女性のビジュ アル。オープニングは『ブラインドネス』。社会性の強い映画が集まった年で、そのテーマは「問題を見ようとしないこと」。昨年、第62回のビジュアルはド アから外へ出ていくブロンドの女性の後ろ姿。つまり「これまでの10年は20世紀の精算。これから本当の21世紀が始まる」と呼びかけ、3Dアニメ『カー ルじいさんの空飛ぶ家』(09)で幕を開けたわけだ。
そのつもりで今年の公式ポスターを読み解いてみた。女性カメラマン、ブリジット・ラコンブがフランスの女優ジュリエット・ビノシュを撮っている。ビ ノシュが手にするのは絵筆。灯りが仕込まれた絵筆で、ビノシュは空間に文字を描く。「Cannes」と。光の軌跡が文字を浮かび上がらせる。ビノシュは裸 足だ。
“映画の原点を思い出そう”ということか。映画は光でできている。映画は絵(映像)と文字(ストーリー、セリフ)でできている。そして絵に映り、ス トーリーを語るのは俳優である。