> GACKTさん(36)主演の舞台「眠狂四郎無頼控」が、日生劇場(東京都千代田区)で28日まで上演されている。原作は柴田錬三郎が1956年 から「週刊新潮」で連載した時代小説。映画、舞台、テレビ化され、主人公の眠狂四郎は、37歳で死去した8代目市川雷蔵さんの当たり役として知られる。 GACKTさんは、剣豪・眠について「人に影響されず信念を持って生きる。誰かに道を示すとき、月のように導く姿が(自分と)同じ」と言う。「眠が持つ、 日本人だからこそ理解できるかっこよさを表現するため、できることに全て注ぎたい」と意気込む初舞台について聞いた。
原作の眠狂四郎は「操をいただく」と感情抜きに女性の貞操を奪い、必殺剣・円月殺法で容赦なく人を斬る。陰のある自らの出生から独歩を好み、「生 きている証をたてるには、女を抱くのが最も手っ取り早い」と言い放つ。冷徹だが「人は斬(き)るが、人をだますことはせぬ」という温度感のあるセリフから は、眠の心にやり場のない孤独感があることを想像させる。GACKTさんは「眠は女が自分にほれてしまうことを知っている。女を抱くことで、自分の生を感 じているのでは」と話し、自身も「女性が自分に喜びを向けてくれることで、自分がここにいていいんだ。存在が許されていると思う感覚がある」と口にした。
「あしたのために今日を生きてはならぬ」など眠の覚悟を決めた生き様は、「自分自身」を貫き続けるGACKTさんと重なる。「月のように導く」と いうGACKTさんの持論は、眠の「教えただけだ、後は知らぬ」という言葉を連想させる。太陽のように照らさないのは、「歩く意思があるのならば道を示そ うという思いから」と言い、「夜道に浮かぶ月は、自分のほんの少し前の道しか照らさない。人生に保証はない。夜道も人生も救われたと思って自らの意思で歩 くことが大切」と力を込めた。
“眠GACKT”には、現代に不在のヒーローを復活させたい、“漢(はん=男の意味)”を示したい--という思いもある。物語には日本ならではの 美学があると言い、「日本の男にこうあって欲しいという女性の思いもあるのでは」と語る。「男は愛する女性や子供の未来を守るもの。誰かを斬るためでな く、そのときのため、侍として緊張感を持ち、いつでも戦える準備をしておくことが必要」と自らの“漢像”を示した。
舞台は東京を皮切りに、全国7都市で102公演を展開。それだけでも想像を絶するが、東京公演を終えてから9月28日に始まる大阪公演(新歌舞伎 座のこけら落とし公演)までの間には、東京・福岡・札幌など24公演を行うライブハウスツアーが控える。
話し口、立ち居振る舞いなど、GACKTさんの周りを漂う空気は穏やかだが、内には猛スピードで物事を考え実行する激しさが宿る。シンガー、ギタ リスト、ドラマー、バイオリニスト、プロデューサー、俳優、声優……。何色もの色を持つが、何色にも染まらない。「自分の表現者としての残された時間には 限りがある」。2009年に「5年」と定めた計画は残り2年。「2013年までは全速力で走る」と口元を引き締める。
「僕のほんの少し前を“GACKT”が歩いてるんだ。いつも追いつこうとしてるんだけど、倒れそうになると、GACKTが振り返って笑うんだ。 『なんだそんなもんか』ってね。それで、“そうか大したことないな”と思って、また向かっていけるんだ」
新境地に立つGACKTさんの瞳には何が映っているのだろうか。
◆舞台「眠狂四郎無頼控」
▽東京公演 5月28日まで、日生劇場 ▽大阪公演 9月28~10月20日 新歌舞伎座 ▽名古屋公演 11月20~12月3日 中日劇場。その ほか福岡・札幌・広島・仙台の全国7都市で102公演を予定。問い合わせ「眠狂四郎舞台製作実行委員会」▽03-3355-3553
◆全国ライブハウスツアー「YELLOW FRIED CHICKENs」(24公演) ※券売中、7800円
▽6月10-11日、13日、16-17日 Zepp東京 ▽6月21-22日、24-25 Zepp名古屋 ▽6月28-29、7月1-2日 Zepp福岡 ▽7月4日、6-7、9日 Zepp大阪 ▽8月11-12、14-15日 Zepp仙台 ▽8月17、19-20日 Zepp札幌