シネマトゥデイ より(以下一部抜粋)

> 5日に公開された映画『告白』のインタビューで、映画『下妻物語』『嫌われ松子の一生』『パコと魔法の絵本』を手掛 けてきた中島哲也監督の映画作りが明かされた。


 今までの中島監督の映画というと、明るい色彩、ポップな音楽というイメージがあるが、新作映画『告白』は、それとは趣を異にする作品。しかし中島 監督は、「僕の中では何も変わっていない」と断言する。監督独特の作風に思える映像や音楽について、「映像をどういうふうに撮るか、色合いをどうするか、 音楽をどうするかということは、考えなければならないことが100あるとしたら、そのうちの10くらいにしか考えていないんです」と明かした。


 今回の映画『告白』の原作も、本屋の店頭で自分で見つけたという中島監督は、いつも「その原作をどう描くのが、一番効果的か」ということを念頭に 置いて映画作りをしているという。つまり、そうして考えられてきた演出が、映画『下妻物語』に、コミックのアニメーションを挿入し、映画『嫌われ松子の一 生』を、ミュージカル仕立てにし、映画『パコと魔法の絵本』を、お伽話の世界から飛び出したような色彩にするというものだったのだ。


 今回の映画『告白』で、原作の物語を観客に伝えるために中島監督が選んだ演出は、物語を語るために不必要なものは一切排除することだった。本作に は、「映像がリアルすぎる」といった声も上がっているが、中島監督は「教室にあんなに物がないなんてことはないし、街に登場人物しかいないなんてこともな い。今までの映画はもちろん、今回の映画もリアルではないんです」と本作の世界観も、今までの映画と同じように、映画としての効果を考えて作り上げたもの だと明かした。


 また中島監督は、「登場人物の感情をしっかりと描くことができれば、観客の心に届くはず」という考えを持って、映画作りをしているという。映画 『嫌われ松子の一生』には、松子が崇拝する(?)アイドルとして、光GENJIが使われていたが、『告白』にはAKB48のライブビデオを見るというシー ンがある。中島監督はそれについて、「入れてみるとどうなるんだろうというただの興味です」と言いつつ、少年Bという登場人物のキャラクターを表現する役 割も果たしていると語った。


 撮影中は俳優・スタッフに非常に厳しいと言われている中島監督だが、それは「イメージです。今回もそんなことはなかった」と明かす。しかし、37 人の13歳、生徒役の子どもたちには、「次に彼らが何かに出るときに、俳優としてちゃんとやってもらいたい」という思いから、厳しく演技指導をしたそう だ。「少なくとも彼らには次の現場で失敗しないでほしいですね」と語る中島監督からは、俳優に愛を持って接する、監督の優しさが伝わってきた。


 『嫌われ松子の一生』で、「愛されたい」という思いから、人生の歯車を壊していってしまう松子の一生を描いた中島監督が、『告白』で描いたのは 13歳の少年犯罪。『告白』に登場する少年も、「愛されたい」という思いから、犯罪に手を染めてしまったように思える。中島監督は、「誰だって、誰かに愛 されたいじゃないですか。僕も愛されたいという思いがありますから、作品にもその思いが表れているのかもしれないですね」と話したが、「人間は弱いから、 自分の負の要素に単純な理由付けをして、自分を正当化したがる。でも実際にはもっと複雑ないろんな要素があるんですよね」と、本作に描かれている少年犯罪 も、家庭環境が唯一の原因ではないことを示唆した。


 CMディレクターとして、数々のCMを制作してきた中島監督は、その商品をどうやって視聴者の心に届けるのが効果的かを考えるように、原作を大切 にする監督であり、商品の良さを引き出すように、俳優を生かす監督であるということがうかがえた。そんな中島監督の新境地ともいえる本作は、まさに 2009年本屋大賞に輝いた湊かなえの小説に命を吹き込んだといえる力作に仕上がっている。


映画『告白』は全国公開中