> 俳優・小栗旬(27)主演映画「岳―ガク―」(2011年公開予定、片山修監督)の撮影がこのほど、山梨・三ツ峠でクランクアップした。日本アルプスを 舞台に、主人公の遭難救助ボランティアと登山者との交流を描く。昨年12月から登山・救助技術を特訓し、7か月間で10の山を“制覇”。高所恐怖症も克服 し、役に挑んだ。

 日差しが照りつける標高1785メートルの三ツ峠。一本のロープを命綱に、全長150メートルの岩壁を登り終えると、小栗の表情は達成感で満ちあふれ た。昨年12月から3か月間、登山・救助技術を猛特訓。撮影はその成果を示す集大成の場となった。

 クランクアップまでの7か月間で標高3190メートルの奥穂高岳を始め、10の山を登った。2月に「一番しんどかった。雪があんなに痛いとは思わなかっ た」という八ケ岳連峰の硫黄岳に初登山。体感温度マイナス25度、風速15メートルの猛吹雪に耐えて標高2760メートルの頂上に立った。「(準備期間 が)あと1か月あれば、もっとトレーニングできたし、もっとやれたと思う」と悔しさもにじませたが、同行した山岳コーディネーターの大森義昭さん(57) は「練習回数が少ない中で形を作れるセンスを持っている」と才能を認める。

 撮影期間中は3時間以上、何十キロにも及ぶ機材を背負って同行するスタッフの姿に責任感も増していった。小栗は「キャスト、スタッフのいろいろな思いを 背負って登っているんだと感じた。みんなで同じ夜を過ごして、ほかの現場では味わえないくらいの一体感ができ上がっている。それが映像に反映していると思 う」と自信。

 原作の舞台、穂高連峰に入ってからは「ここが全部、主人公の庭だと感じた。すごく気持ちよかった」と役への思いを膨らませていった。練習のかいあって高 所恐怖症も克服。「少しでも山岳救助を知っている人の体になりたい」と苦手の筋トレも行い、できる限りの準備をした。

 シリーズ化の可能性に「プロデューサーにスタジオの1つをクライミング施設にしてくれなければ出ないって話をしている(笑い)」とちゃめっ気たっぷりの 小栗。冗談が言えるほどの一体感が、結束力の強さを物語っていた。

 ◆映画「岳―ガク―」 世界の名峰を制覇した島崎三歩(小栗)は帰国し、山岳救助ボランティアとして活動中。春を迎え、長野県警の救助隊に久美(長澤ま さみ)が配属。三歩の指導で成長していく。そんな中、猛吹雪の雪山で多重遭難が発生。久美は隊員らと救助に向かうが、最大の窮地に陥る。原作は石塚真一氏 の同名漫画。「ビッグコミックオリジナル」連載中で08年「マンガ大賞」、09年「小学館漫画賞」受賞。

 ◆初監督作来月公開 〇…小栗は、7月17日に初監督作品「シュアリー・サムデイ」が封切られる。同映画は足掛け5年、10代から温め続けていた青春群 像劇だ。スタッフ側の立場を経験し、精神的にも成長。「僕はスターではなく、みんなと何も変わらないと強く思えるようになった。セカンド、サードでやって いる、それぞれの技術パートの意見を普通に聞けるようになった」と謙虚に話した