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私は食衣住 派!

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「ザ・ロード」公式サイト


人間、食べる物がなければ死に直結するというのは当たり前だと思っていましたが、その自分達の「食べる物」というのは全て「他の生命」であるという事をここまで如実に見せつけられる映画は他にないと思います。


「ザ・ロード」では世界はすでに破滅しています。

この破滅ぶりが徹底していて、自然が完全に破壊されて植物も死に絶えているんですよ。
これまでにも「マッドマックス2」等に代表されるように、いわゆる「破滅後の地球」を描いた作品はたくさんあったんですが、そのほとんどで破滅しているのは人類がそれまで築いてきた文化に過ぎなくて、動植物は結構生き延びてたんですよね。たとえ放射能による汚染が進んでいたとしても、草一本生えないという地域はごく限られていて、その周辺部では残された自然の中で――たとえそれがどれだけ荒れ果てていたとしても――かろうじて誰かが生き延び、コミュニティーを形成しているというのがパターンでした。

ところが「ザ・ロード」では滅びは植物相にまで及び、当然それを食べていた草食動物も草食動物を補食していた肉食動物も絶滅状態で、そういう世界では人類の食生活の基本である「採集」がもう成り立たないんです。だって、食べられる物、生えてないし、落ちてないし、歩いてないんだから。


採集して食べられる物は過去の遺物であり文明の遺産である缶詰瓶詰め袋詰めの加工食品ばかりです。しかし残されたそれらの食物も破滅後十数年もたてば食べ尽くされてしまうわけで……そうなった時、唯一食べられる食品=他の命というのは、生き延びている他の人間という事になってしまうのですね。

だから「ザ・ロード」の世界ではゾンビでも何でもない普通の人間が当たり前のように他の人間を狩って食ってます。綺麗事を言っていてはその世界では死ぬだけですから。

「ザ・ロード」では地球の寒冷化が進んでいるらしくて、保温のための衣類も重要です。雨風夜露をしのぐための住居というのはその次ですね。身を守るための隠れ場所としての住居は、同じ知性を備えた人間が狩りに来た場合、逃げ場を失う罠になりかねません。家は捕らえた獲物(人間)を保存しておく貯蔵庫でもあり、やはりある程度「食」と「衣」が満ち足りてこその「住」なのでしょう。

私達は地球に暮らしていて、食べ物があるのが当たり前だと思っていますが、その食べ物って全て他の生命なんですよね。動物だけでなく植物も生命で、本当に命を摂取して自分達の命をつないでいるんだということが「ザ・ロード」を見ると実感できます。

地球には命が満ちていて、アラスカのような場所でも春には植物が芽吹き花が咲きます。南極や北極といった極寒の地にもそこに適応している生物はいるのですよ。

そういう生命が「ザ・ロード」の世界にはもう、ない。
その世界はもはや私達の知っている地球ではないのです。
空気と水と1Gの重力があるだけの、他の惑星も同然。
その地上で生きている人々は、いわば遭難者です。
だからそこではもう現行の法は適応されない。漂流しているボートや雪山に墜落した飛行機の中で生き延びている人々と同じで、他に食べ物がないから人間を食べる。

その世界で敢えて「人を食べない」という道を選択したものはどうなるのか。
前とか悪とか、正しいとか正しくないとか、そういうものを超越し、ただ、「人を食べない」という選択を己に課し、それを命がけで息子にも伝えた男の凄絶な人生を描いたのが「ザ・ロード」であり、その絶望的な選択に身を縛られた男をヴィゴ・モーテンセンが命がけで表現しているのですよ。

それをどう受けとめるかというのは、ひとえに観客にかかっているのでしょう。

ほとんど絶望的な話ですが、最後には僅かに希望もあります。

人間にとって食物=他の生命がどれだけ大切なのか、それを知りたければ「ザ・ロード」を見るのが一番の近道です。

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