「レポゼッション・メン」公式サイト
「サロゲート」を見た時も思ったことですが、「レポゼッション・メン」も本当によくできたSF映画でおもしろさもSFファンにとっては最高なんですが、よくできていればよくできているほど、観客は入らないものなんですよね~~~。あの、SFアクション大作は別ですよ。シュワちゃん出てるヤツとかシリーズ物になったやつとか。そういうんじゃなくて、単発で出てくる練り上げられたSF映画のことね、ここで私が言っているのは。
今世紀に入って最高におもしろくスリリングで恐怖さえ感じた傑作SF映画は「クローン」でしたけど、これなんか劇場に見にいった時観客私一人しかいなかったもんな。その後テレビ放送された時に見た人のSFファンの間では「どーしてこんな傑作を見逃してたんだ」的な感想が結構あったものだけど。主役がゲイリー・シニーズでヒロインがマデリン・ストウでちょい地味目ではあったものの、原作がフィリップ・K・ディックなんだからSFファンなら見に行くべきでしょ、とその時思っていた私でしたよ。
かたや「レポゼッション・メン」の方はオスカーウィナーのフォレスト・ウィテカーとオスカーノミニーのジュード・ロウが主演。でも実はゲイリー・シニーズも「フォレスト・ガンプ」でオスカーの助演男優賞にノミネートされてたりするのよね。だから主役級の演技力はこの二作品はそこらの映画なんぞと比べものにならないぐらいズバ抜けているのですよ。それがほとんど評価の対象にならないあたりがSF映画の悲しさなんだけど。
そう、「レポゼッション・メン」を見ながら思い出すのはかつての傑作SF映画の数々です。
それはオマージュを捧げているとかパクリとか、そういう表面的なレベルではなく作品が包含しているSFマインド、センス・オブ・ワンダーの発露なんですね。
SFアクション大作であっても傑作SF映画になり得るのは、そういうSFマインドを強く感じる作品です。同じシュワちゃんでも「トータル・リコール」は名作だけど「6デイ」が駄作なのはそういうわけ。まあ、「トータル・リコール」は原作がフィリップ・K・ディックというのもあるけれど、ディック作品が全部名作というわけでもないからやはり「トータル・リコール」がおもしろくなったのは監督のバーホーベンの力量でしょう。ここに「プレデター」をいれないのは、映画としてはおもしろいけれどSFとしてはちょっとどうなのと思ってしまうSFファンの性でございます。まあ、映画としては傑作だった事は間違いないでしょう(いや、私も好きなんです)。
「レポゼッション・メン」は系統としては完全に「トータル・リコール」とか「クローン」の路線を受け継いでいて、最初は追う側だったはずの主人公がいつの間にか追われる側に回っているというスリリングな展開を味わえます。
で、そこにクローネンバーグ的な血みどろで美しい機械仕掛けの内臓がからんでくるのね。これはその道のファンにはたまりません! ファンじゃない人にとってはグロいだけですが。
ジュード・ロウといえばクローネンバーグの「イグジステンズ」に出てたじゃないですかってぐらいで、ジュードにはこういう作品――死と隣り合わせの生というか、死に直面した時にこそ燃えあがるエロス――が似合いますね! ジュードは傑作の誉れ高き「ガタカ」にも出てましたが(で、当然この作品も人は入らなかったですが)、思い起こせばその頃からそういうタイプを演じていたわけですよ。キャスティング・ディレクターの見る目に脱帽! 私にとっては久々に見る本当にかっこいいジュード・ロウでした。「スターリングラード」では純朴だった主人公が、能力そのままにスレたらこうなる、みたいな感じでしたね。
オスカーウィナーのフォレスト・ウィテカーの方も本当に彼の演技の神髄の部分を惜しみなくさらしてました。いやもう、この演技力には脱帽です。「ハスラー2」思い出しちゃいましたよ。もちろん「ラスト・キング・オブ・スコットランド」も。この方は無邪気と無慈悲の間を自由自在に行ったり来たりできるすごい人です。
それからリーブ・シュライバー。
リーブといえば出世作(?)は「スクリーム」。「ウルヴァリン」にも出てたし「オーメン」のリメイクにも出てました。役柄としては外見は「オーメン」なんですが、中身は「ウルヴァリン」のセイバートゥースそのまんまと申しましょうか、この方、全然悪気はないんですが他人を殺すのを屁とも思ってない役が似合うのです。社会的な視野がすごく狭いというのか、自分の目と目の間しか見てないという感じの役ですね。
とにかく、希代の名優が3人、自分達の持ち味にぴったりあった役を得て嬉々として演じているんだから、おもしろくならないわけがないんです。展開は早いですが早すぎることもなく、緩急があって考えるべき時間にはじっくり考えることができるので、話についていけてなくても後から追いつくことができます。伏線が結構上手に張られているのも楽しい♪
「SF映画」と言い切るにはちょびっとばかりクローネンバーグ的エログロ(死語?)要素が強いですが、そこまでどろどろもしていないので普通の方にも少しはとっつきやすいかも。ホラーファンならむしろ大歓迎だったりして。
内容については、まあ、ちょっとあからさまにサブプライムローンのやり口の批判になってますので、それが鼻につく人もいるかもしれませんが、それを踏まえた上でもおもしろいですし、そんなの関係なく純粋にSF的なプロットとして受け入れても存分に楽しめます。
SFファンとホラーファンとジュードのファンなら是非どうぞ!(重なってる必要はないので、どれか一つのファンであれば大丈夫ですよ~)
「サロゲート」を見た時も思ったことですが、「レポゼッション・メン」も本当によくできたSF映画でおもしろさもSFファンにとっては最高なんですが、よくできていればよくできているほど、観客は入らないものなんですよね~~~。あの、SFアクション大作は別ですよ。シュワちゃん出てるヤツとかシリーズ物になったやつとか。そういうんじゃなくて、単発で出てくる練り上げられたSF映画のことね、ここで私が言っているのは。
今世紀に入って最高におもしろくスリリングで恐怖さえ感じた傑作SF映画は「クローン」でしたけど、これなんか劇場に見にいった時観客私一人しかいなかったもんな。その後テレビ放送された時に見た人のSFファンの間では「どーしてこんな傑作を見逃してたんだ」的な感想が結構あったものだけど。主役がゲイリー・シニーズでヒロインがマデリン・ストウでちょい地味目ではあったものの、原作がフィリップ・K・ディックなんだからSFファンなら見に行くべきでしょ、とその時思っていた私でしたよ。
かたや「レポゼッション・メン」の方はオスカーウィナーのフォレスト・ウィテカーとオスカーノミニーのジュード・ロウが主演。でも実はゲイリー・シニーズも「フォレスト・ガンプ」でオスカーの助演男優賞にノミネートされてたりするのよね。だから主役級の演技力はこの二作品はそこらの映画なんぞと比べものにならないぐらいズバ抜けているのですよ。それがほとんど評価の対象にならないあたりがSF映画の悲しさなんだけど。
そう、「レポゼッション・メン」を見ながら思い出すのはかつての傑作SF映画の数々です。
それはオマージュを捧げているとかパクリとか、そういう表面的なレベルではなく作品が包含しているSFマインド、センス・オブ・ワンダーの発露なんですね。
SFアクション大作であっても傑作SF映画になり得るのは、そういうSFマインドを強く感じる作品です。同じシュワちゃんでも「トータル・リコール」は名作だけど「6デイ」が駄作なのはそういうわけ。まあ、「トータル・リコール」は原作がフィリップ・K・ディックというのもあるけれど、ディック作品が全部名作というわけでもないからやはり「トータル・リコール」がおもしろくなったのは監督のバーホーベンの力量でしょう。ここに「プレデター」をいれないのは、映画としてはおもしろいけれどSFとしてはちょっとどうなのと思ってしまうSFファンの性でございます。まあ、映画としては傑作だった事は間違いないでしょう(いや、私も好きなんです)。
「レポゼッション・メン」は系統としては完全に「トータル・リコール」とか「クローン」の路線を受け継いでいて、最初は追う側だったはずの主人公がいつの間にか追われる側に回っているというスリリングな展開を味わえます。
で、そこにクローネンバーグ的な血みどろで美しい機械仕掛けの内臓がからんでくるのね。これはその道のファンにはたまりません! ファンじゃない人にとってはグロいだけですが。
ジュード・ロウといえばクローネンバーグの「イグジステンズ」に出てたじゃないですかってぐらいで、ジュードにはこういう作品――死と隣り合わせの生というか、死に直面した時にこそ燃えあがるエロス――が似合いますね! ジュードは傑作の誉れ高き「ガタカ」にも出てましたが(で、当然この作品も人は入らなかったですが)、思い起こせばその頃からそういうタイプを演じていたわけですよ。キャスティング・ディレクターの見る目に脱帽! 私にとっては久々に見る本当にかっこいいジュード・ロウでした。「スターリングラード」では純朴だった主人公が、能力そのままにスレたらこうなる、みたいな感じでしたね。
オスカーウィナーのフォレスト・ウィテカーの方も本当に彼の演技の神髄の部分を惜しみなくさらしてました。いやもう、この演技力には脱帽です。「ハスラー2」思い出しちゃいましたよ。もちろん「ラスト・キング・オブ・スコットランド」も。この方は無邪気と無慈悲の間を自由自在に行ったり来たりできるすごい人です。
それからリーブ・シュライバー。
リーブといえば出世作(?)は「スクリーム」。「ウルヴァリン」にも出てたし「オーメン」のリメイクにも出てました。役柄としては外見は「オーメン」なんですが、中身は「ウルヴァリン」のセイバートゥースそのまんまと申しましょうか、この方、全然悪気はないんですが他人を殺すのを屁とも思ってない役が似合うのです。社会的な視野がすごく狭いというのか、自分の目と目の間しか見てないという感じの役ですね。
とにかく、希代の名優が3人、自分達の持ち味にぴったりあった役を得て嬉々として演じているんだから、おもしろくならないわけがないんです。展開は早いですが早すぎることもなく、緩急があって考えるべき時間にはじっくり考えることができるので、話についていけてなくても後から追いつくことができます。伏線が結構上手に張られているのも楽しい♪
「SF映画」と言い切るにはちょびっとばかりクローネンバーグ的エログロ(死語?)要素が強いですが、そこまでどろどろもしていないので普通の方にも少しはとっつきやすいかも。ホラーファンならむしろ大歓迎だったりして。
内容については、まあ、ちょっとあからさまにサブプライムローンのやり口の批判になってますので、それが鼻につく人もいるかもしれませんが、それを踏まえた上でもおもしろいですし、そんなの関係なく純粋にSF的なプロットとして受け入れても存分に楽しめます。
SFファンとホラーファンとジュードのファンなら是非どうぞ!(重なってる必要はないので、どれか一つのファンであれば大丈夫ですよ~)