>今週は3D戦争のスタートを印象づける発言が話題を呼びました。米国任天堂(任天堂オブアメリカ:NOA)は3Dメガネ方式を牽制、SCE Worldwide Studiosはこれに反撃しています。

3D立体視には大別して2つの方式があります。プレイステーション3陣営が提示する3Dメガネ方式と、「ニンテンドー3DS」が実装した裸眼3D方式で す。前者は大画面に向き、後者は携帯機に向いています。ゲーム機としては交わらないはずの両者ですが、NOAとSCEが舌戦を展開する理由はどこにあるの でしょうか?

NOAの社長兼COOであるReggie Fils-Aime氏は、3Dメガネ方式は安価なものとはならないと指摘。「部屋にいる人数分必要になる」ことがポイントとしています。

SCE Worldwide Studiosの社長である吉田修平氏は先の発言に対し「ゲームの3D効果に関して我々は同じメッセージを送っているはずですが、他の会社がやっているこ との小さな部分を叩く必要はないはずです」とコメントしました。

こうした舌戦は米国のビジネスシーンではよく見られるものですが、日本人には大きな違和感があります。

現時点ではソニーは携帯3Dゲーム機を発表していませんし、任天堂はホームシアター的な部分を考慮していないようです。両陣営とも自社が推す技術のメリッ トに関しては知り尽くしているという訳です。事実、任天堂の社長である岩田聡氏は「裸眼3DのTVが出るには何らかの発明が必要」とコメント。吉田氏は 「もしあなたが大劇場のような経験をしたいのであれば、もちろんメガネをかける必要があります。最新技術を持ってすれば、3Dメガネはかけていることを忘 れる位軽いのです」と語っています。発売当初は「大画面のソニー」「携帯機の任天堂」という図式となり、完全に同じ土俵で激突することは少ないでしょう。

では、なぜFils-Aime氏の牽制に吉田氏は反撃し、大画面における優位性を強調したのでしょうか。

「ニンテンドー3DS」のメディアプレイヤー的な側面に答えがあるようです。岩田氏は経済誌フォーブスに対し、ハリウッドのスタジオとパートナーシップを 締結し、「ニンテンドー3DS」上で3D映画を流したいと切望している…と語っています。

メディアプレイヤー的な部分はプレイステーション3の得意分野。「ニンテンドー3DS」が安価な3Dプレイヤーともなれば、プレイステーション3と真っ向 から激突することになります。

先週筆者は「「ニンテンドー3DS」は3DTVを叩き潰してしまうのでしょうか?」と書きましたが、叩き潰すことはなくとも、3DTVの普及に影響を与え ることは考えられます。

3Dメガネ方式はホームシアター的な用途に向きますが、AVマニアでない一般層にとってはホームシアターを構築する機会がなかなかありません。家族が多け れば別でしょうが、世界の7割の国では晩婚化が進んでいるといわれます。

「ニンテンドー3DS」のような携帯機は「おひとりさま」が使うのに向いていますし、日本に限れば住宅事情も厳しいところがあります。「ニンテンドー 3DS」により、「3Dメガネ方式でなければ3D映像を見られない」という大前提が崩れたのです。

先週のまとめで「「ニンテンドー3DS」ならゲームもできる3D映像プレイヤーとなるかもしれない」と書きましたが、ソニーVS任天堂の3D戦争は、ユー ザーフレンドリーな映画配信サービスを掴んだ方が勝つかもしれません