スタジオジブリの最新作「借りぐらしのアリエッティ」(米林宏昌監督)が公開される17日から、同作の世界観を立体化した展覧会が、東京・江東区の東京 都現代美術館で同時に開催される。同展を手掛けるのは、映画美術の第一人者・種田陽平氏。展覧会の来場者全員がアニメに入り込み、“役者”を疑似体験でき る世界ができあがった。

 床下に住む小人の少女・アリエッティと、12歳の人間の少年・翔。体の大きさも、性格も全く違う“2人”が、お互いの存在を認め合い、成長していく姿が 描かれる「借りぐらし―」は、ジブリならではのキャラクターやストーリー展開はもちろんだが、今作の見どころの一つは「人間の世界で生きる小人」という舞 台設定。その世界を、数々のヒット映画の美術を手掛けてきた種田氏が、リアルに作り上げた。

 何よりも気を使ったのは、大きさの表現だったという。「小人の世界ということで、単にそれぞれのパーツを大きく作っても、実感がわかない。それぞれの材 質の感じをどう伝えるか、そして何よりも『入り口』の部分をどうするかを考えた」

 アニメの中では、翔とアリエッティが同じフレームに入れば大きさを認識することができるが、展覧会では比較が不可能。そこで、展示の最初と最後を小人の 視点から見た巨大な軒下と植物にすることで、来場者自身が小人と錯覚するような仕掛けを作った。

 実は、ジブリと種田氏との“関係”は、40年以上になる。宮崎駿監督(69)が初めて本格的に製作に携わったアニメ映画「太陽の王子 ホルスの大冒 険」(68年)を、当時小学生だった種田氏は劇場で何度も見た。

 「当時は背景を書き込んでいるアニメなんて見たことがなかったので、夢中になった。その時の気持ちが、今の自分に息づいていると思う」。今回の展覧会 は、ジブリ側から「こう作ってほしい」と依頼を受けたのではなく、昨秋から何度も意見交換を繰り返してきた。自らの“ルーツ”との仕事は、充実した時間 だった。

 「今回の展示は映画のセットだと思って、『―アリエッティ』の実写を撮るなら、こう作るだろうと思って完成させた。お客さんは『見る』のではなく、役者 として『入り込む』という感覚になれると思います」と話す自信作。映画と同時に体験することで、楽しみは倍増するだろう