毎 日新聞より(以下一部抜粋)

サッカー・ワールドカップ(W杯)南アフリカ大会の決勝戦・スペイン対オランダを日本時間12日未明に控え、両国サポーターらが 集まる開催地・ヨハネスブルク。犯罪が多発し「世界一危険な都市」とも言われた街だが、今は祭典ムードに包まれる。住民は、W杯の成功に沸き、将来の国づ くりにも夢をはせる。

 ■高級住宅地

 企業のオフィスや駐在員の住宅が並ぶサントン地区にあるショッピングモールでは決戦前日の10日、午前中からスペインサポーターが歌や踊りで大騒ぎ。ユ ニホーム姿の女性、パウラ・ヘルナンデスさん(19)は「スペインの試合は全部観戦したわ。ビリャのゴールで優勝よ」。

 一方、オランダサポーターは比較的静かな雰囲気。スペインの盛り上がりを見ていたカルロー・フェイエンさん(46)は「彼らは前日から情熱を浪費してい るだけさ。オランダの相手だと日本が一番良い試合をしたんじゃないかな」と冷静だった。

 ■ダウンタウン

 南アの中でも「最も危険」と言われるヨハネスブルク中心部のダウンタウン。地元の黒人がW杯での変化を実感していた。洗車中のニガ・ブテレザさん (32)は「近くの競技場やパブリックビューイング会場に多くの外国客が訪れ、警察官や警備員がとても増えた」。衣服の路上販売をしていたボーポ・チャイ さん(33)も言う。「以前は拳銃強盗が多発していたけど今は収まっている。W杯の開催は成功だった。今後、五輪の開催も目指しているから、安全な状況が 続くはず」

 ■黒人居住区

 「W杯のスタンドで黒人と白人が隣り合わせに座っているのをテレビで見て、幸せな気分になったわ」と話すのは、黒人居住区「ソウェト」で日用品店を営む 女性、マグデリン・ムボウェニさん(57)。W杯が始まる1カ月前にソウェトのスタジアムでラグビーの試合があり、多くの白人が訪れた。初めてのことで 「それ以来、白人に対する印象が良くなった」という。

 決勝に進んだオランダは、因縁の国でもある。人種隔離政策を支持したのはオランダ系移民が多かった。だが、ムボウェニさんは「そんなことは考えたことも なかったわ」と笑う。決勝戦後にはソウェトでお別れパーティーが開催される。「白人も参加できる無料のお祭り。これも初めてのことです」と待ち遠しそう だった