>14日、阿佐ヶ谷のloft Aで書籍「男優・山本竜二」発売記念イベント「山本竜二 空前絶後の喋り倒しナイト!」が行われ、伝説のAV男優、山本竜二が自身の半生を語りつくした。
映画黄金期の時代劇スター、嵐寛寿郎のおい、そして遠縁に森光子がいるなど、役者として申し分のない血筋を持つ山本。しかし彼の名前を伝説にまで 高めたのは、ピンク映画、AVなどにおける男優業であろう。「女性の体から排出するものはすべて」口にするというマニアックなビデオにも多数出演し、さら に絡む相手も若い女性ばかりでなく、男性から老婆、果てはニワトリまで、来るものは拒まずの姿勢で伝説のAV男優として名を馳せていた。そんな彼の自伝 「男優・山本竜二」はそんな役者の数奇な半生がつづられており、サブカル好きが集まる本屋として知られる「ヴィレッジヴァンガード」では、平積みされたこ の本に「当店だけですが、村上春樹の『1Q84』より売れています」というポップが付くほどの売れ行きだったという。
もともと山本のキャリアは、映画会社・大映の大部屋俳優としてスタートした。大映といえば、名優・勝新太郎がスターとして活躍していたが、「勝さ んは難しい方で。俳優でも『駄目だよお前は』と言われると、次に呼ばれない人がたくさんいるわけですよ。それでもいちかばちかで現場に連れていかれたんで すが、まずは勝さんに切られて、死んだふりをするんですね。駄目かなと思っておそるおそる目を開けたら、ぼくをにらんではるんですよ。それで『おいお前、 明日からずっと来いよ』と言われたんです」と勝に認められたきっかけを話す。その後、AV、ピンク映画と活躍のフィールドを変えていった山本だったが、撮 影のリハーサル中に起きた事故で死亡者を出し、撮影が休止状態にあった映画『座頭市』(1989)でオファーがあったことを明かす。「先輩から電話があっ たんです。切られ役の俳優と息が合わないから、勝さんがぼくに来て欲しいと。でもそのころはAVで忙しくて……。完成した映画を観たあとにやはり行けば良 かったと思いましたね」と残念がっていたが、「でも勝さんは僕がAVに出ていたことも知らないんじゃないですかね」と付け加え、会場を笑わせていた。
また、イベントでは叔父の嵐とのエピソードも多数披露。1977年の映画『男はつらいよ 寅次郎と殿様』は嵐の名演もあり、シリーズ48作の中で も名作の誉れ高い一本として知られているが、「先生は映画『男はつらいよ』を知らなかったんですよ。『渥美清主演の映画(『男はつらいよ』)に出てくれと 言われたんや。でももう一本、(菅原)文太の『トラック野郎』にも出てくれと言われたんだけど、どっちに出たらいい?』と聞かれたんです。それで、絶対に 寅さんですよ。国民的映画ですからと答えたんですけど、『文太は新東宝の時代から義理があるから出てやりたいんや』というんで、何とか説得して。ようやく 『竜二が言うんだから間違いないやろ』と納得してくれました。まあ、後にちゃっかり『トラック野郎』にも出演していましたけど(笑)」と意外な裏話を明か していた。
近年では、L'Arc-en-Cielやスピッツ、ウルフルズなどのPVにも出演、果てはNHK大河ドラマ「篤姫」や、TBS時代劇「水戸黄門」 に出演を果たすなど、俳優・山本竜二に惚れ込むクリエーターは数多く、一般作にも数多く進出している。「道はちょっと外れた感じですけども、今だにこう やって活動屋を続けています。AV男優では無理やろと言われても、突破口を開いて夢を現実にしていきました。こんなことをしている山本でも出来るんやとい うところを若い人にも見てもらいたいですね。(嵐寛寿郎)先生応援してください、勝さんも応援してください! 乾杯!」と会場の観客と共にビールで乾杯。 カルトとメジャーをクロスオーバーする稀有な男優・山本竜二の快進撃はまだまだ続きそうだ。(取材・文:壬生智裕)
「男優・山本竜二」は大洋図書より発売中(税込み:1,470円)