>11月に函館先行公開の後、12月上旬より渋谷ユーロスペースにて公開される映画『海炭市叙景』で、加瀬亮が初の父 親役に挑んでいることがわかった。『海炭市叙景』は、加瀬のほか谷村美月、竹原ピストル、山中崇、三浦誠己、南果歩、小林薫らも出演し、企画からロケ協力 までを、函館市民有志による製作実行委員会、および地元ボランティアが行った市民参加型の「函館映画」。活躍を期待されながら41歳で自ら命を絶った函館 出身の作家・佐藤泰志氏が亡くなる直前の2年あまりをかけて執筆した、函館をモデルにした「海炭市」に生きる人々の生活を描いた18の連作短編小説を基に 5つの物語を描いた。
加瀬が演じるのは、子どもを虐待する妻やうまくいかない仕事に行き場のないいら立ちを募らせていく役どころ。映画『オリヲン座からの招待状』『そ れでもボクはやってない』『重力ピエロ』など、素朴で、繊細な役柄を演じてきたイメージの強い加瀬だが、最近では北野武監督の映画『アウトレイジ』で、流 ちょうな英語に、計算高さも兼ね備えたニヒルな役柄を演じ、個性豊かなキャスト陣の中でも、ひときわその魅力を光らせていた。さらに演技の幅を広げた加瀬 は、本作で妻に暴力をふるうシーンがあるなど凶暴性を露わにしつつも、息子を想う優しい父親という難しい役を見事に演じきっている。
『海炭市叙景』では、ほかに谷村美月と竹原ピストルが初日の出を見ようと山に登る貧しい兄妹を、南果歩と小林薫が現在は口も利くことなくなってし まった夫婦を演じる。また、開発地からの立ち退きを拒み続ける老女の話、仕事で帰郷し父親と再会する青年の物語が、ささやかに交錯し、温かさを感じられる ものに仕上がっている。
「市民参加型の映画づくり」をスローガンに、原作者・佐藤泰志の同級生らや地元の文学ファンが集まり、製作実行委員会を設立し、企画から監督への 交渉、資金集めなどを実行委員会のメンバーが中心となり映画化を実現させた。メインキャストにも一般市民を起用し、エキストラも含めると500人以上の函 館市民が出演したという本作は、観光都市としての美しい函館の街を描くのではなく、変わりゆく地方都市としてのありのままの姿を映し撮った映画としても注 目を集めそうだ。
映画『海炭市叙景』は11月函館先行公開の後、12月上旬より渋谷ユーロスペースにて公開予定