> パチンコやパチスロの「必勝法を教える」とうたって資料を売りつける販売商法や、パチンコ店や台のPRと称して打ち子やサクラの募集を装う求人商法で、 現金をだまし取る手口の詐欺が急増している。全国の消費生活センターに寄せられた被害申告額は、平成16年からの累計で100億円を突破したことが24 日、国民生活センターのまとめで分かった。業界団体は注意を呼びかけている。

 《確実に1日3万円以上稼げます》

 ある男性(23)のもとに突然、こんなメールが届いた。男性が「業者」に登録すると、すぐに電話がかかってきて、「やる気のある20人限定です」といわれた。なんだか「得した気分」になり、入会金4200円を支払った。

 その後、約50万円の特別年会費を要求され、断ったが、「最新攻略法で月90万円以上回収できるから」と説得された。男性は相手のいうがままにクレジットカードでお金を借りるなど50万以上を支払ったという。

 国民生活センターでは平成16年からこうした被害の統計を取り始めたが、年々増加。当初は2659件だった相談件数は、昨年は4111件になり、今年7 月末までの累計では2万1006件、被害申告額は100億4230万円に上った。1人当たりの平均被害額は約61万円に上る。

 こうした状況をふまえ、パチンコの業界団体が昨年から独自の相談窓口を設置するとともに、出版社と共同で「攻略法詐欺撲滅キャンペーン」を展開。販売商法の広告が急減するなどの効果があった。だが、それでも被害は減らない。

 被害者が「業者」を相手取り、損害賠償などを求める民事訴訟も相次いでおり、中には「攻略法は架空」と認定する判決もあった。5月には大阪地裁が「パチンコで稼ぎたい方大募集」とする広告を掲載した雑誌社と広告代理店に77万円の賠償を命じた。

 警察も摘発に力を入れている。

 7月には千葉や高知など4県警が550人から2億円以上をだまし取ったとして「業者」の社長ら9人を逮捕。警視庁も5月、「パチプロになれる」と持ちかけ、1億円以上を詐取した3人を摘発した。

 国民生活センターの担当者は「業者と連絡が取れなくなったり、取れても開き直ったりして返金に応じないケースが多い。悪質商法のなかでも特に被害回復が困難な商法なので絶対に取引しないようにしてほしい」と呼びかけている。

 ■「取り戻したい」心理につけ込む

 パチンコをしない人からみると「なぜだまされるのか」と疑問を抱いてしまう攻略法商法。被害者の大半は20~40代で、アルバイトを含む給与生活者が全体の6割を超えるという。

 パチンコ攻略法被害対策弁護団の関川正則弁護士は「だまされるのは仕事もなく一日中パチンコをしている人ではなく、楽しみでパチンコをしているような人」と指摘。こうした人が「無料」という広告に誘われて興味本位で応募することがきっかけになる。

 その後は連日の勧誘電話で「攻略法は存在する」「安い情報は悪い情報」と信じ込まされ、結局、情報料として払った金やパチンコにつぎ込んだお金を「取り戻したいという心理」につけ込まれるという。

 パチンコをほとんどしたことのない人がターゲットになるケースもある。関川弁護士は「生活が苦しいという主婦やサラリーマンが副収入のために、という事例も多い」と話す。

 業界団体の担当者によると、だまされている意識がなく、購入した情報が役に立たないといって、別の業者の情報を購入する人もいるという。担当者は「不正な装置が取り付けられていない限り、今のパチンコの機械に攻略法は存在しない」としている