> 三省堂書店(東京都千代田区)は今秋、店頭でデジタルデータから洋書や絶版本などを印刷、製本して販売するサービス「三省堂書店オンデマンド」を、神保 町本店(同区神田神保町)で始める。国内では初の試み。大量のデータを保存し、いつでも取り出せる「電子書籍時代」だからこそ可能となった書店の新サービ スとして注目を集めそうだ。

 店頭で1冊から注文が可能で、インターネット上の「グーグルブックス」で公開されている知的財産権のない洋書約300万点が利用できる。日本の書籍についても、デジタル化されている絶版本や品切れ本などをラインアップに加えられるよう、出版社に協力を呼びかけている。

 印刷・製本には、米オンデマンドブックス社製「エスプレッソ・ブック・マシン(EBM)」を利用。従来の「オンデマンド印刷」サービスは、一定の注文数が集まらなければ印刷できず、手に届くまで時間がかかったが、EBMは1冊につき数分で自動的に製本されるのが特徴だ。

 欧米では、大学や図書館、公共施設が教育や研究目的で利用しているほか、豪州の大手書店がEBMを導入し、同様のサービスを始めている。三省堂書店の担 当者は「電子書籍に注目が集まっているが、いまだに紙の本を求めるニーズは強い。デジタルデータを活用し、書店に足を運んでもらう新たなきっかけになれ ば」と期待する。

 同社は今後、利用可能な店舗を増やすとともに、自費出版や少部数の出版についてもサービスを拡充し、将来的にはオンラインでの注文なども検討している。