>木村拓哉ら豪華声優陣を迎え、遠い未来で宇宙最速の座をかけて繰り広げられる、カーレーサーたちのルール無用な熱いバトルを描いた2Dアニメーショ ン「REDLINE」。監督を務めた小池健と原作・脚本の石井克人が“手描き”にこだわり制作期間7年、作画枚数10万枚を費やして作り上げた。そんな2 人が3D映画を超える本作の“体感”ポイントなど、見どころを語る!
■“カーレース”を題材にした物語が生まれたきっかけは?
石井「アメリカの片田舎に行った時に、映画を観るよりもみんなクルマいじりばかりをする姿を見たんですよね。そんなクルマいじりに夢中な人たちも熱中してもらえるような物語にしたかったんです」
■映画本編100分弱ですが、原作はそれを超える長い物語だったそうですね。
小池「主人公のJPの恋愛という軸はしっかり描きつつ、他のキャラクターのエピソードを削った分、物語の軸がわかりやすくなりましたね。ほんのちょっとしか登場しないサブキャラも主人公にからませることで、物語もおもしろくなりましたし見ごたえも出たと思います」
■3D全盛期時代のなか、「REDLINE」は手描きの2Dアニメーションですね。躍動感のある映像が印象的です。
石井「カチッとCGフル活用して作られたものではなく、僕らが子どものころに観たような“マンガ祭り”みたい“ザ・アニメ映画”っていう作品にしたかったんです」
小池「小学生のころに観たアニメはCGもなかったけれど、それでも絵から迫力や力強さが感じられたんですよね。だから、今回はあえてCGを使わないって最初に決めて、それでもって今の技術でやってみようということになったんです」
■カーレースのシーンなど、3Dに劣らないスピード感ある映像に仕上がっていますが、こだわった点は?
小池「石井さんからは、この作品のキーワードとして“シズル感(=臨場感)”だと聞いていたんです。それをレースシーンで表現するために重要なの は、クルマの排気やきしみ。クルマのちょっとしたきしみを出すためにも、原画を何枚も手描きして重ねたり…。その作業を積み重ねていくことで、スピード感 が表現できたんです」
石井「クルマの排気も本当に1つずつ描いていますからね。僕も出来上がった映像を観て“この画、動くんだ”って感動しました」
■“臨場感”といえば、音もものすごくこだわられていますよね。
石井「クルマの走行音は実際の音を重ねて作っているので、迫力は十分だと思いますよ」
■JP役の木村拓哉さんら豪華俳優陣によって、キャラクターにもしっかり息が吹き込まれています。
石井「木村さんがJP役を引き受けてくれるのかわからないのに、彼を想像してキャラクターを描いていたんです。キャラクターデザインができあがってから、木村さんに声優をお願いしました。見た目はワイルドだけど、ナイーブな面も表現できる。まさにハマリ役です」
小池「JPの初恋相手・ソノシーを演じる蒼井優さんも、パッと聞いただけでは彼女の声だとわからないくらいすごく役を掘り下げて演じてくれたんだなと思いますね」
■小池監督と石井さんはこれまでにも「茶の味」('04)のアニメーション部分などで、一緒にお仕事をされてきていますが、本作を通じて感じたお互いの魅力とは?
小池「石井さんは“こんなのはどうかな?”と僕にいろんな要素をふってくれて、それを自分で消化して作品に落としこめるんですよね。石井さんみたいな人がそばにいてくれるのは、すごく心強いです」
石井「小池君は天才ですから(笑)、彼の画が観られるだけでありがたいですね。『REDLINE』のために、も朝早くから夜遅くまで、ずっと画を描き続ける生活を数年間続けられるモチベーションの高さはすごいなと思いますね」
小池「当初は3年ぐらいで作る気でいたんですが、結果的に7年間かかってしまっただけで(笑)。自分としては長距離走ではなく、毎日が短距離走のダッシュという感じで夢中になって作った作品です」