シネマトゥデイより(以下一部抜粋)

>セントラルパークの前にある5番街の高級アパートのテラスに、巣を作って住んでいたPale Male(ペイル・メイル)という愛称がつけられた赤ノスリ(野生の鷹)を描いたドキュメンタリー作品について、監督のフレデリック・リリエンが語った。

 同作は、都会にすむことのない大型猛禽類である赤ノスリが、1990年代にニューヨークのセントラルパークの手前にある5番街の高級アパートのテラスに 巣を作ってすみ始めたことから、ニューヨーク中の人気者となったが、ある日そのアパートの管理人が巣を撤去したことから、ニューヨーク中の新聞の一面を飾 るほどの話題となってしまった大騒動が勃発してしまう。大都会にすむ動物を通して、自然愛を追求した映画。

 大型猛禽類が5番街のアパートにすむことは意外だが、セントラルパークにたくさん居るリスやハトなど考えると、それらを頻繁に餌にできる赤ノスリが、セ ントラルパーク付近にすんでいてもおかしくない気もする。この点について「これまで長い間、このように大型猛禽類がすんでいなかったのは、その大半は人間 に狩られたり、過去にDDT(有機塩素系の殺虫剤)を撒かれたりで、常に追い払われてきたからだと思う。ただ、そういった大型猛禽類も、餌を確保できると いう理由で、このペイル・メイルのように街にすもうとしたのかもしれない」と初めて赤ノスリをセントラルパークで見てから、16年以上もの長い間、この赤 ノスリを撮影してきたフレデリックが語った。

 このペイル・メイルが最初に羽を休め、巣を作ろうと目を付けたのが、あの映画監督ウディ・アレンの隣のアパートだそうだ。フレデリックは「ちょうどウ ディ・アレンが、1992年にミア・ファローの養女であったスン=イーとの交際が発覚した後で、その翌年の1993年から僕は撮影をし始めたため、よく写 真家やTVカメラマンがカメラを向けて撮影していたのは、実際にはこの珍しいペイル・メイルだったのだけれど、通行人にはウディ・アレンを追っかけている パパラッチと勘違いした人たちが随分いたみたいなんだ」と明かした後、「肝心なウディ・アレンの方は、新聞やTVを通してこのアパートの下で写真を撮って いるのは、自分ではないことは分かっていたみたいだ」と付け加えた。結局、ペイル・メイルはそこでは巣を作らず、最終的にはそのウディ・アレンが住む真横 の高級アパートで、TVスター、メアリー・タイラー・ムーアが住んでいる部屋の4階上のアパートのテラスに巣を作ることとなった。

 この高級アパートの管理人が、ペイル・メイルの巣を取り除いた具体的な理由は「もちろん、高級アパートの居住者の中には、メアリー・タイラー・ムーアの ように喜んでいた人もいるけれど、ほとんどの居住者は、あれだけ人々に注目されていたことを嫌がっていたんだと思う。考えても見てほしい。高額な金額を 払って、居心地の良いアパートを手に入れて住んでいるのに、下から望遠鏡で窓越しを覗かれたり、カメラで撮影されたりしたら良い気分はしないと思う。ある 意味、脅威を感じるくらいだ。結局、その不満が居住者の賛同を得て、管理人が代表して取り除くことになったんだよ」とフレデリックは答えた。さらに「ただ 彼ら居住者は、まさかこのペイル・メイルが、これほどまでに人々に衝撃を与えてることになるとは、全く予測できなかったんだと思う。実際にニューヨークの 人々は、この街で暮らすペイル・メイルに、ある意味シンボルのようなものを見出していたのかもしれないね」と、ニューヨークの人々の思いについても言及し た。この撤去事件は大騒動を起こして人々の反感を買ってしまい、最終的にはこのアパートの居住者たちを説得させ、再び巣を人工的に作ることとなった。

 ニューヨークの素晴らしい外観に見守られながら、街並を飛び交う赤ノスリの姿は威厳があり、美しく映し出されている。この映画は、他の動物と自然を共有して生きていかねばいけない人間にとって、貴重な作品に仕上がっている。