夕刊フジより(以下一部抜粋)
> ハルキストを驚かせた大ベストセラーの映画化で、この人の主演が発表されたとき、何かと口さがないギョーカイ内でも、ミスキャストを指摘する声はなかっ た。むしろ、「やれやれ。やっぱり松ケンか」との声すらあった。それだけ“安心”な配役ということだ。でも、あの真面目でナイーブで、それなのに結構ふら ちな主人公「ワタナベ」を見事に演じきったのは、やはり驚きだ。
「(撮影が)終わった後でも、ふとしたところでワタナベっぽくなってハッとしてますね。まだ抜けていないのかと」
11月某日、深夜の早稲田。役者にとっては日付が変わる時間なんぞ、まだまだ宵の口なのか、それとも先ほどまで行われていたジャパンプレミアの熱気がそうさせているのか、映画を、ワタナベを、余さず語り続けた。
「初めて原作を読んだときは、みなさんが共感して感動しているところ-生と死や愛するということを僕は感じることができなかった。それより、性描写の生 々しさという表面的な部分に焦点を当てていました。この原作を映像化するのは大変なんじゃないか、と単純に思ったんです」
記者も初めてこの小説を読んだときはコーフンを隠せなかったのを思い出した。「松ケンもやっぱり男だなぁ」と一瞬共感を覚えたのだが、もちろん凡人と天才肌の演技派俳優の立場は違う。「僕は原作の“アレ”をやるんだと思って相当覚悟したんです」という。
だが、映画の露出はグンと抑えてある。「僕は、あのバストアップ(だけの描写)ですごく正解だと思った。心がすごく見えやすくなった。肉体がすべて見えていたり動きが激しいだけだったりしたら、そこに焦点が当たってしまって、心が見えづらいですから」
とはいえ、セックスはこの作品の重要なファクター。その点はしっかり認識している。「セックスというカテゴリーを、海外の人は普通に話すんです。そうい う話をすることは今の日本人にとっても大事だと思うんですよ。隠しすぎることによってセックスレスが生まれてきたような気がする。セックスは生きることや 社会の根本。隠しちゃいけない」とアツいのだ。
ワタナベは人を愛して傷つくが、他人の人生にぐいぐいと踏み込むタイプではない。対女性ではあくまで受け身。「僕も、傷つきたくないんです。人に近づいてきてもらいたくないというか、ちょっと薄情なんで。今の人って、そういうところが結構あると思います」
いやいや、何をおっしゃる。レッドカーペットのイベントでは誰よりも丁寧に、多くのファンにサインしていたのに。
どんな役でもこなす芸域の広さに加え、人柄の良さもあって、世間にもギョーカイ内部にも絶大な人気を誇る。それなのに、不安はあるという。
「必死ですけどね。(芝居が)順々にできているわけじゃなく、一気に飛び跳ねてしまう仕事もあって」
「自分のギリギリで挑戦している作品がすごく多い気がする。そろそろ、身のほどを知らないといけないな。身の丈を超えてしまうような役に挑戦してしまうのは、ギャンブルですからね。破滅したら何も残らない」
いささか苦笑しながら、しかしこう付け加えた。
「この作品のように、地に足の付いた仕事もやり、挑戦もやり、と」
やっぱりすごいや、この役者。
ペン・萩原和也/カメラ・緑川真実/
■まつやま・けんいち 1985年3月5日、青森県生まれ、25歳。2001年、「New Style Audition」でグランプリを受賞してモデル デビュー。03年、「アカルイミライ」(黒沢清監督)で映画デビューし、05年、「男たちの大和/YAMATO」、06年、「デスノート」「デスノート the Last name」など相次いで映画出演。役に入り込む演技力でまたたく間に若手俳優のトップに躍り出る。「ノルウェイの森」以降にも 「GANTZ」「マイ・バック・ページ」「うさぎドロップ」「僕達急行 A列車で行こう」など主演級作品がずらりと待機中。いま、映画監督が最も一緒に仕 事をしたいと思う俳優の1人。
> ハルキストを驚かせた大ベストセラーの映画化で、この人の主演が発表されたとき、何かと口さがないギョーカイ内でも、ミスキャストを指摘する声はなかっ た。むしろ、「やれやれ。やっぱり松ケンか」との声すらあった。それだけ“安心”な配役ということだ。でも、あの真面目でナイーブで、それなのに結構ふら ちな主人公「ワタナベ」を見事に演じきったのは、やはり驚きだ。
「(撮影が)終わった後でも、ふとしたところでワタナベっぽくなってハッとしてますね。まだ抜けていないのかと」
11月某日、深夜の早稲田。役者にとっては日付が変わる時間なんぞ、まだまだ宵の口なのか、それとも先ほどまで行われていたジャパンプレミアの熱気がそうさせているのか、映画を、ワタナベを、余さず語り続けた。
「初めて原作を読んだときは、みなさんが共感して感動しているところ-生と死や愛するということを僕は感じることができなかった。それより、性描写の生 々しさという表面的な部分に焦点を当てていました。この原作を映像化するのは大変なんじゃないか、と単純に思ったんです」
記者も初めてこの小説を読んだときはコーフンを隠せなかったのを思い出した。「松ケンもやっぱり男だなぁ」と一瞬共感を覚えたのだが、もちろん凡人と天才肌の演技派俳優の立場は違う。「僕は原作の“アレ”をやるんだと思って相当覚悟したんです」という。
だが、映画の露出はグンと抑えてある。「僕は、あのバストアップ(だけの描写)ですごく正解だと思った。心がすごく見えやすくなった。肉体がすべて見えていたり動きが激しいだけだったりしたら、そこに焦点が当たってしまって、心が見えづらいですから」
とはいえ、セックスはこの作品の重要なファクター。その点はしっかり認識している。「セックスというカテゴリーを、海外の人は普通に話すんです。そうい う話をすることは今の日本人にとっても大事だと思うんですよ。隠しすぎることによってセックスレスが生まれてきたような気がする。セックスは生きることや 社会の根本。隠しちゃいけない」とアツいのだ。
ワタナベは人を愛して傷つくが、他人の人生にぐいぐいと踏み込むタイプではない。対女性ではあくまで受け身。「僕も、傷つきたくないんです。人に近づいてきてもらいたくないというか、ちょっと薄情なんで。今の人って、そういうところが結構あると思います」
いやいや、何をおっしゃる。レッドカーペットのイベントでは誰よりも丁寧に、多くのファンにサインしていたのに。
どんな役でもこなす芸域の広さに加え、人柄の良さもあって、世間にもギョーカイ内部にも絶大な人気を誇る。それなのに、不安はあるという。
「必死ですけどね。(芝居が)順々にできているわけじゃなく、一気に飛び跳ねてしまう仕事もあって」
「自分のギリギリで挑戦している作品がすごく多い気がする。そろそろ、身のほどを知らないといけないな。身の丈を超えてしまうような役に挑戦してしまうのは、ギャンブルですからね。破滅したら何も残らない」
いささか苦笑しながら、しかしこう付け加えた。
「この作品のように、地に足の付いた仕事もやり、挑戦もやり、と」
やっぱりすごいや、この役者。
ペン・萩原和也/カメラ・緑川真実/
■まつやま・けんいち 1985年3月5日、青森県生まれ、25歳。2001年、「New Style Audition」でグランプリを受賞してモデル デビュー。03年、「アカルイミライ」(黒沢清監督)で映画デビューし、05年、「男たちの大和/YAMATO」、06年、「デスノート」「デスノート the Last name」など相次いで映画出演。役に入り込む演技力でまたたく間に若手俳優のトップに躍り出る。「ノルウェイの森」以降にも 「GANTZ」「マイ・バック・ページ」「うさぎドロップ」「僕達急行 A列車で行こう」など主演級作品がずらりと待機中。いま、映画監督が最も一緒に仕 事をしたいと思う俳優の1人。