> 東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で22日、野菜や牛乳、飲料水に次いで、原発の放水口近くの海水から放射性物質が検出されたことが分かった。
福島、茨城など4県でホウレンソウなどの出荷が制限される中で新たに浮上した懸念に、漁業関係者からは「風評被害が心配」と戸惑う声が聞かれた。専門家は「現状では健康に影響するものではなく、海産物は食べても問題ない」と消費者側に冷静な行動をとるよう話している。
◆「二重の被害」◆
国の安全基準の127倍に上る放射性物質が検出されたことで、漁業関係者には困惑が広がった。
「津波で壊滅的な被害を受けても、組合員たちは漁業を続けようと必死になっている。それなのに、魚が売れなくなればどうにもならない。今後、ここで漁業を続けられるのか、不安だ」。第一原発から30キロの屋内退避圏より外に位置する福島県相馬市の相双(そうそう)漁業協同組合の遠藤和則さん(55)は困惑を隠さない。
原発から南に約70キロの茨城県北茨城市の大津港も津波で壊滅的な被害を受けた。漁師の堀江光郎さん(54)は「今は皆で一日も早く出漁できるようにと頑張っているのに、風評被害が出たら、もう最悪だ」とため息をついた。
津波で大小の漁船10隻以上が打ち上げられたり、転覆したりした、同県最南東の神栖市のはさき漁協。本来ならイワシやカレイ、ヒラメなどの漁期だが、同漁協の小林寛史総務課長は「津波の被災と原発問題で二重の被害にあったようなもの。出漁できても、茨城というだけで単価が安くなりそうだ」と声を落とした。千葉県の外房に位置する、いすみ市の大原漁港でも、夷隅東部漁協の浅野長(たけし)参事が「何とか終息してほしい」と顔を曇らせた。
◆買い控え警戒◆
東京・築地市場でも、風評被害を懸念する声があがる。仲卸会社社長の亀谷直秀さん(50)は「数字だけが独り歩きしてしまい、買い控えなどが起きると困る。毎日、同じ物ばかりを食べるわけではないし、騒ぎたてることはないのでは」と話す。
「今後、客の中にも産地を気にする人が出てくるかもしれないが、1日に大量に食べるということはない。あまり気にしすぎないように伝えたい」。買い付けに来ていた目黒区のすし店店主、中山郷二さん(73)は自らに言い聞かせるように語った。
大手スーパー各社は国の対応を注視する。イオンは「国の対応に基づき、冷静に判断したい」。イトーヨーカ堂なども「魚の取り扱いをどうするかは、国の情報を確認してから検討する」としている。
◆値下がり傾向◆
一方、放射性物質の検出を受け、福島、茨城、栃木、群馬の4県産のホウレンソウの出荷制限から一夜明けた22日朝、東京・大田市場では、生産者への同情の声が聞かれた。午前7時頃からホウレンソウの競りが行われたが、前日までに出荷されていた4県産のホウレンソウは競りの対象外で市場の隅に段ボール箱のまま山積みにされた。返品か廃棄になる見込みだ。
通常なら4県産ホウレンソウはこの時期、同市場の6割を占める。卸売業の吉永正さん(56)は「取引先のスーパーからは、別の産地のものを仕入れるよう指示されている」とし、「生産業者が気の毒。国はちゃんと対応してあげてほしい」と訴えた。大東京青果物商業協同組合常務理事の川田進さん(66)は、出荷停止ではない茨城産の別の野菜まで返品する動きがスーパーなどにあるとし「ホウレンソウに限らず茨城産野菜が全体的に値が下がっている」と嘆く。
福島、茨城など4県でホウレンソウなどの出荷が制限される中で新たに浮上した懸念に、漁業関係者からは「風評被害が心配」と戸惑う声が聞かれた。専門家は「現状では健康に影響するものではなく、海産物は食べても問題ない」と消費者側に冷静な行動をとるよう話している。
◆「二重の被害」◆
国の安全基準の127倍に上る放射性物質が検出されたことで、漁業関係者には困惑が広がった。
「津波で壊滅的な被害を受けても、組合員たちは漁業を続けようと必死になっている。それなのに、魚が売れなくなればどうにもならない。今後、ここで漁業を続けられるのか、不安だ」。第一原発から30キロの屋内退避圏より外に位置する福島県相馬市の相双(そうそう)漁業協同組合の遠藤和則さん(55)は困惑を隠さない。
原発から南に約70キロの茨城県北茨城市の大津港も津波で壊滅的な被害を受けた。漁師の堀江光郎さん(54)は「今は皆で一日も早く出漁できるようにと頑張っているのに、風評被害が出たら、もう最悪だ」とため息をついた。
津波で大小の漁船10隻以上が打ち上げられたり、転覆したりした、同県最南東の神栖市のはさき漁協。本来ならイワシやカレイ、ヒラメなどの漁期だが、同漁協の小林寛史総務課長は「津波の被災と原発問題で二重の被害にあったようなもの。出漁できても、茨城というだけで単価が安くなりそうだ」と声を落とした。千葉県の外房に位置する、いすみ市の大原漁港でも、夷隅東部漁協の浅野長(たけし)参事が「何とか終息してほしい」と顔を曇らせた。
◆買い控え警戒◆
東京・築地市場でも、風評被害を懸念する声があがる。仲卸会社社長の亀谷直秀さん(50)は「数字だけが独り歩きしてしまい、買い控えなどが起きると困る。毎日、同じ物ばかりを食べるわけではないし、騒ぎたてることはないのでは」と話す。
「今後、客の中にも産地を気にする人が出てくるかもしれないが、1日に大量に食べるということはない。あまり気にしすぎないように伝えたい」。買い付けに来ていた目黒区のすし店店主、中山郷二さん(73)は自らに言い聞かせるように語った。
大手スーパー各社は国の対応を注視する。イオンは「国の対応に基づき、冷静に判断したい」。イトーヨーカ堂なども「魚の取り扱いをどうするかは、国の情報を確認してから検討する」としている。
◆値下がり傾向◆
一方、放射性物質の検出を受け、福島、茨城、栃木、群馬の4県産のホウレンソウの出荷制限から一夜明けた22日朝、東京・大田市場では、生産者への同情の声が聞かれた。午前7時頃からホウレンソウの競りが行われたが、前日までに出荷されていた4県産のホウレンソウは競りの対象外で市場の隅に段ボール箱のまま山積みにされた。返品か廃棄になる見込みだ。
通常なら4県産ホウレンソウはこの時期、同市場の6割を占める。卸売業の吉永正さん(56)は「取引先のスーパーからは、別の産地のものを仕入れるよう指示されている」とし、「生産業者が気の毒。国はちゃんと対応してあげてほしい」と訴えた。大東京青果物商業協同組合常務理事の川田進さん(66)は、出荷停止ではない茨城産の別の野菜まで返品する動きがスーパーなどにあるとし「ホウレンソウに限らず茨城産野菜が全体的に値が下がっている」と嘆く。