シネマトゥデイ
より(以下一部抜粋)
> ロバート・デ・ニーロを審査委員長に迎えて開催される、第64回カンヌ国際映画祭の開幕が5月11日に迫っているが、この10年間の受賞作品の傾向から今年のパルムドールを大胆にも予想してみた。
今年のカンヌでは世界中から集まった約1700作品の中から選ばれた作品が上映されることになっている。その中で、コンペティションに選出されたのは19作品。2度のパルムドールに輝くベルギーの兄弟監督、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌをはじめラース・フォン・トリアーとナンニ・モレッティ両監督のパルムドール受賞者、グランプリや脚本賞などをとりながら惜しくもパルムドールを逃しているペドロ・アルモドバルやアキ・カウリスマキ、ヌリ・ビルゲ・ジェイランなどカンヌ常連組の監督が目立つのが特徴だ。彼らがパルムドール候補の筆頭に挙がるのは当然だろう。
昨年までの10年間を振り返ると、ロマン・ポランスキー監督の『戦場のピアニスト』やローラン・カンテ監督の『パリ20区、僕たちのクラス』といったヒューマン・ドラマがかなり強かったよう。そこでイスラエル人監督ヨセフ・シダーが父と息子のライバル関係を描いた『フットノート(原題)/FOOTNOTE』に期待したい。初のカンヌとなるシダー監督、『ボーフォート-レバノンからの撤退-』でベルリン国際映画祭銀熊賞受賞やアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた経験をもつなど実力は十分。イスラエル作品がパルムドールを一度も受賞していない点も気になるところだ。
審査委員長の好み、独断と偏見で決まることもありうるかもしれない。女優イザベル・ユペールが審査委員長を務めた2009年は、映画『ピアニスト』でユペールとタッグを組んだミヒャエル・ハネケ監督の映画『白いリボン』にパルムドールが贈られた。昨年の審査委員長だったティム・バートン監督が「不思議な夢を見ているよう」と感激し、パルムドールを獲得した映画『ブンミおじさんの森』は、バートンが好みそうなファンタジー映画。今年の審査委員長、デ・ニーロは映画『タクシードライバー』『ミッション』で、パルムドールも受賞している。名優だけに、俳優たちの演技がポイントかもしれない。
中でも、ハリウッドの問題児からすっかり演技派になったショーン・ペンの出演作品2本に注目だ。テレンス・マリック監督、ブラッド・ピット共演の映画『ツリー・オブ・ライフ(原題)』も捨て難いが、イタリア出身のパオロ・ソレンティーノ監督の映画『ディス・マスト・ビー・ザ・プレイス(原題)/THIS MUST BE THE PLACE』を推してみたい。元ロックスターを演じるペンの演技をデ・ニーロがどう評価するか、イタリア系のデ・ニーロが気鋭のイタリア人監督を気に入るかが、勝負の分かれ目となるだろう。ただインタビュー嫌いで気難しいといわれるデ・ニーロが趣味に走るとも考えにくく、案外オーソドックスで良質な作品をセレクトしそうだ。それだけに、今回初めてカンヌに参加するオーストラリアのジュリア・リー監督やオーストリアのマルクス・シュラインツアー監督にもチャンスは大いにあるはず。フランスからの4本だって、地元の利もあってパルムドールに絡んできそうだ。
最後に、河瀬直美監督の映画『朱花の月』と唯一の3D作品でもある三池崇史監督の映画『一命』ももちろん候補作品。まったくカラーの違う2人の監督だが、どちらも「命」をテーマにした作品を披露する。きっとカンヌがわきそうな感動的なドラマのはずだ。コンペ作品の発表に伴って、カンヌのゼネラル・ディレクターであるティモシー・フレモーが「今年はエジプト、チュニジア、そして日本に特別な思いを寄せる映画祭になるでしょう」と語っている。映画を通して日本とつながりのある人たちが、こうして温かい言葉をかけてくれることに感謝するとともに、今度はカンヌから日本に吉報が届くことを期待したい。(岩永めぐみ)
映画『タクシードライバー』は5月17日午前9:40よりWOWOWにて放送。
> ロバート・デ・ニーロを審査委員長に迎えて開催される、第64回カンヌ国際映画祭の開幕が5月11日に迫っているが、この10年間の受賞作品の傾向から今年のパルムドールを大胆にも予想してみた。
今年のカンヌでは世界中から集まった約1700作品の中から選ばれた作品が上映されることになっている。その中で、コンペティションに選出されたのは19作品。2度のパルムドールに輝くベルギーの兄弟監督、ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌをはじめラース・フォン・トリアーとナンニ・モレッティ両監督のパルムドール受賞者、グランプリや脚本賞などをとりながら惜しくもパルムドールを逃しているペドロ・アルモドバルやアキ・カウリスマキ、ヌリ・ビルゲ・ジェイランなどカンヌ常連組の監督が目立つのが特徴だ。彼らがパルムドール候補の筆頭に挙がるのは当然だろう。
昨年までの10年間を振り返ると、ロマン・ポランスキー監督の『戦場のピアニスト』やローラン・カンテ監督の『パリ20区、僕たちのクラス』といったヒューマン・ドラマがかなり強かったよう。そこでイスラエル人監督ヨセフ・シダーが父と息子のライバル関係を描いた『フットノート(原題)/FOOTNOTE』に期待したい。初のカンヌとなるシダー監督、『ボーフォート-レバノンからの撤退-』でベルリン国際映画祭銀熊賞受賞やアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた経験をもつなど実力は十分。イスラエル作品がパルムドールを一度も受賞していない点も気になるところだ。
審査委員長の好み、独断と偏見で決まることもありうるかもしれない。女優イザベル・ユペールが審査委員長を務めた2009年は、映画『ピアニスト』でユペールとタッグを組んだミヒャエル・ハネケ監督の映画『白いリボン』にパルムドールが贈られた。昨年の審査委員長だったティム・バートン監督が「不思議な夢を見ているよう」と感激し、パルムドールを獲得した映画『ブンミおじさんの森』は、バートンが好みそうなファンタジー映画。今年の審査委員長、デ・ニーロは映画『タクシードライバー』『ミッション』で、パルムドールも受賞している。名優だけに、俳優たちの演技がポイントかもしれない。
中でも、ハリウッドの問題児からすっかり演技派になったショーン・ペンの出演作品2本に注目だ。テレンス・マリック監督、ブラッド・ピット共演の映画『ツリー・オブ・ライフ(原題)』も捨て難いが、イタリア出身のパオロ・ソレンティーノ監督の映画『ディス・マスト・ビー・ザ・プレイス(原題)/THIS MUST BE THE PLACE』を推してみたい。元ロックスターを演じるペンの演技をデ・ニーロがどう評価するか、イタリア系のデ・ニーロが気鋭のイタリア人監督を気に入るかが、勝負の分かれ目となるだろう。ただインタビュー嫌いで気難しいといわれるデ・ニーロが趣味に走るとも考えにくく、案外オーソドックスで良質な作品をセレクトしそうだ。それだけに、今回初めてカンヌに参加するオーストラリアのジュリア・リー監督やオーストリアのマルクス・シュラインツアー監督にもチャンスは大いにあるはず。フランスからの4本だって、地元の利もあってパルムドールに絡んできそうだ。
最後に、河瀬直美監督の映画『朱花の月』と唯一の3D作品でもある三池崇史監督の映画『一命』ももちろん候補作品。まったくカラーの違う2人の監督だが、どちらも「命」をテーマにした作品を披露する。きっとカンヌがわきそうな感動的なドラマのはずだ。コンペ作品の発表に伴って、カンヌのゼネラル・ディレクターであるティモシー・フレモーが「今年はエジプト、チュニジア、そして日本に特別な思いを寄せる映画祭になるでしょう」と語っている。映画を通して日本とつながりのある人たちが、こうして温かい言葉をかけてくれることに感謝するとともに、今度はカンヌから日本に吉報が届くことを期待したい。(岩永めぐみ)
映画『タクシードライバー』は5月17日午前9:40よりWOWOWにて放送。